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江戸に立つ、龍の麺  作者: 八島唯
第4章 捜索の果てに

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敬忠の捜査

 盆にわく町を行く一人の武士。柳橋弾正敬忠である。いつもとは異なり、きちんとした裃をつけ駕籠に身を預ける。せわしい盆市の町中を急ぎ、走り回っていた。

 かつて年寄本役であった時の手づるを総動員して、『極喰無尽』のしっぽをつかもうと江戸の町中を西奔東走せわしなくこの数日間駆けまわる敬忠であった。駕籠の揺れる中で、書状に目を通す敬忠。これまで敬忠が調べた『極喰無尽』に関わる、幕府や藩の高官の一覧表である。

 大藩のそれなりに身分のある奉行クラスもいれば、幕府で五百石を扶持されている旗本もいた。

 しかし、それらのつながりがいっこうに結びつかなかった。

 それらの人間に何か共通の利害があるとは思えなかったし、こまめにあって密談をしている様子もなかった。あえて言えば『極喰無尽』の晩餐会ディナーに通っているという程度である。

 あの晩餐会ディナーで何か陰謀がめぐらされている様子はなかった。

 だとすれば、単にこれらの高官たちは利用されているというだけなのだろうか。『極喰無尽』の主要なメンバーというわけではなく。

 あわせてあの、『副統領』の恵美押延という人物も得体が知れなかった。特徴的な外見に反して、ほとんどその素性を知っている人物がいない。知られているのは、「接待役」としての彼の姿程度だった。

 正直、このように敬忠が動くことにはリスクがあった。敬忠が動けば、多分『極喰無尽』もそれに反応するであろう。もしかしたら、瞬の時と同じような何かしらの『行動』に出るかもしれない。

(それもまたよし......!)

 あまりに手がかりがない中で相手が動いてくれるのは、むしろ手がかりになるかもしれない。

 さしあたって瞬の周辺には、信頼できる者を配置することができた。気を付けていれば、前回のように瞬自身がやすやすとさらわれることもないだろう。

 ならば、次は自分の番だ。

 裃を脱ぎ、荷物にたたむ。

 すっと駕籠を降りる敬忠。二本を腰に差しなおし、あたりを見回す。

 場所は上野。敬忠の屋敷まではまだ距離があるものの、歩き始める。

 上野の秋の風情。虫の声が聞こえる。令和の時代よりも心なしか、その音が大きく感じられる。

 遠回りになるが、笠森稲荷にでも参ろうかと歩みを敬忠は進める。

 ススキが風になびき、左右に振れる。

「そういえば、昼餉を食べていなかったな......」

 不思議なことに、あまり腹がすかない。さすがに瞬に用意してもらった、弁当を持ち帰るのも申し訳ないので、近くの茶屋の軒先を借り弁当を開く敬忠。

 中には手の込んだ、握りと漬物が入っていた。

 このような状態でなければ、存分に瞬の手料理を味わえるはずなのだが、と思いつつ食を進める。

「うまい」

 思わず、声が出てしまう敬忠。

「すまぬ、茶をいただけぬか」

 それをごまかすように、店の者に茶を所望する。

(早く、このような面倒なことは終えて瞬殿を温泉にでも連れて行ってあげたいものだ。この世界ではいったこともないだろうし、令和の時代でも――)

 ぎゅっと茶碗を握る手に力が入る。

 敬忠の捜査はその後も数日続くこととなった――

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