表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
江戸に立つ、龍の麺  作者: 八島唯
第7章 令和への挑戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

106/117

最後の料理勝負

 三番勝負、最後の一戦は制限時間が倍と宣言される。つまり二時間の調理時間である。テーマは”牛肉”。それに先立って、恵美押延が提案を行う。

「せっかく最終戦までもつれたのだ。今回は一品料理ではなく”コース”の料理にしないだろうか。お互い全力で余すところなく戦いたくないか?」

 ペロッと舌を出しながらそう話す恵美押延。何かの企みーーと思いつつも、敬忠と瞬は視線を合わせそして頷く。ここまで来たら、もう流れに身を任せるしかない。

 そして戦いが始まるーー

「牛肉か」

 そう敬忠がもらす。令和の世では一般的な食材。もっともそれは輸入の牛肉から国産の最高級の和牛までいろいろな種類のものがあったが。

「この時代、フランス人といえどもまだ牛肉を食材として食べてはいないはずです。まあ日本と違ってそれ以外の肉食ーー羊や豚などを食べる文化は一般化しているのでその点で『極喰無尽』の得意とする『フランス料理』は、ムルソー提督の味覚に合致するものだと思います」

 瞬の説明。二回戦はムルソー准将の”故郷の味”を突き止めることによって勝利したが、今回はそうも行かない。何しろムルソー准将が食べたことのない食材をフランス人好みに仕立てろといっているのである。

「多分恵美押延は正統派のフランス料理のフルコースーーに準じたものを時間内で作ってくるでしょう。それに対抗する方法はーー」

 そっと瞬が敬忠の右手をとる。

「あなた様が美味しいと思うものを作らせてください」

 じっと瞬が敬忠の目を見つめる。

「僅かな時間ですが、瞬はこの世界で初めて安堵する時間を過ごすことができました。身に余る厚誼もかけていただきただただ感謝しています。敬忠様の希望された『ラーメン』もほぼ完成し、もう私にできることはないと思います。そして恵美押延に勝つ方法もいまいちもう思いつきません。せめて最後はーー敬忠様の好きなものをお作りして終わりを迎えたいとーー」

「そうか」

 敬忠は瞬の言葉にそう答える。

「ならばーーこの戦いは私が考えよう。私が今までこの世界で生きてきた思いを込めて。そして令和のときの思いも込めて。瞬殿は私の考えた料理を作ってくださるか?」

 はい!、と満面の笑みと少しばかりの涙を浮かべて瞬が答える。

 それが最良の解であるかはわからない。しかしそうすることが、二人にとって最も素晴らしいことであるように思えた。そしてもしかしたら、恵美押延に勝つことのできる唯一の方法であるようにもーー

 両手を握りしめ頷く二人。

 最後の調理が今、始まろうとしていたーー


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ