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江戸に立つ、龍の麺  作者: 八島唯
第7章 令和への挑戦

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『国家』とは

「俺にも一皿くれねえか」

 対馬守の要望にいやいやながら皿を差し出す恵美押延。瞬は微笑みながら差し出す。

 器用にスプーンで一口づつ食べ終わると、ため息を漏らす。

「なるほどな」

 テーブルの上にスプーンを対馬守は放り投げる。すべてを理解したように。

「もったいをつけずに......理由を教えたらどうだ!」

 恵美押延はいらだって大きな声を上げる。それには構わずに、対馬守は口を開く。

「おめえは結局”令和”の人間ってこたぁな」

「私が......?」

 自分を指さし呆然とする恵美押延。初めていわれた言葉であった。

「この世界は......例えば我が国って言った場合、どこを指す?瞬ちゃんよう?」

 瞬が名指しされる。はい、と大きな声で返事をする瞬。

「ええと......国ですか?私が住んでいるのは江戸で......関八州くらいがまあ行ったり来たりする場所で.....」

「一番偉い人は?」

「それは公方様ですけど。でも御門という方もおられるとか」

「外国について知っている国は」

「唐天竺ですかね?」

 二人の掛け合い。まるで示し合わせたかのような会話である。

「わかったかね?『極喰無尽』の大将さんよぉ」

 対馬守がそう告げるも、腑に落ちない恵美押延。はぁと大きなため息をついて、口を開く。

「この国はあんたが考えいるような”日本国”じゃぁねえってことよ」

「日本ではない......ならば何なのだ!」

「何でもない。ただ、多くの殿様が領地が寄せ集まった藩の寄せ集めってとこだな。恭之信に聞いたぜ。令和の世では一つのまつりごとが全国を治めていると。最初はおどれーたが、なるほど合理的だ。それだったら外国の侵略に対抗できるかもしれんな」

「それがいったい......」

「わからんか。この時代”フランス”も似たようなことってことよ。こちらさんよりははるかに進んでいるだろうがな」

 恵美押延ははっと気づく。自分が作ったのは令和のイメージの『フランス料理』であるということを。国民国家化が進み、言葉も文化も均一化されていく時代が近代だとするならば、このころのフランスはようやくそれを本格的に始めた頃合いである。『ナポレオン』という怪物の手によって。

「むるそー、だったか。この大将は生まれはどこだ」

 ムルソー准将を指さす対馬守。瞬が瞬時にそれを翻訳する。

「北フランスのブルターニュ出身だそうです」

「北ふらんす......よくはわからんが陸奥の国のものが薩摩のめしを食って美味しいと思うかね?まして、しばらく祖国のものを食べていないとなれば」

 うつむく恵美押延。大体のことが飲み込めたらしい。

(そういうことか......!)

 敬忠もそのことを理解する。

 瞬がすっと、前に出る。自分の料理を説明するために――


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