166 天譴ノ章 幕間 三
「正直に言おう。まさか、おまえたちが真のことを言っておるとは夢にも思わなかった」
緋知基は霞惟正と貝元康の牢の前に立つと、いきなりそう言った。
「え・・・・!?」
元康が目を丸くする。
「そ、そうであろう!?わしが、この霞惟正が命惜しさに嘘などつくはずがなかろう!」
胸を張る惟正。その頬を汗が伝う。
「・・・・また、そういうことを・・・・」
そう言いかける元康を睨みつける惟正。
「余計なことを言うでない!お主は黙っておれ!」
「・・・・で、だ」
「・・・・で?真のことを教えたらここを出してくれるのではないのか?」
「待て。そう急くな」
急に眉をひそめて鋭い目つきになる知基。
「・・・・・・」
「こちらも、お前だけに誰も知らぬことを教えてやろう。決して誰にも言うなよ」
「・・・・どうして、そんなことを?」
「それが武士なりの義というものだ」
惟正と元康は顔を見合わせる。
「いや、わしらはただここから逃がしてくれればよいのだが・・・・」
「ここを出てどうするつもりだ?手ぶらで宗影のところへ行くつもりか?」
「・・・・」
「宗影は葦野原で我らに敗れ、今は上皇にも見捨てられて零落の一途だ。そんなところへ戻ってどうするつもりだ?」
「殿、敵の言うことに心を惑わされては・・・・」
元康が言いかけると、それを惟正が手で制した。
「ならば、聞こう。そのうえでわしが決める」
「・・・・殿!」
不安そうに見上げる元康。
「ならば言うぞ、一度しか言わん」
知基は目を一層鋭くした。
「三種の神器は、ここ、吹原にはない。西国のどこかへ隠した」
「・・・・・・なんと!?」
「東国の霞家が大軍をもってここを攻めにくい理由は、ここに帝と三種の神器があると思っているからだ。奴らは帝と神器を無傷で取り戻したいと思っているはずだ。だからここを攻めるにも、火を放つこともできず、むやみに矢を射ることもできん。だが、その三種の神器はここにはない。理由はいくつかあるが、われらとて吹原に火をつけられた時に神器をお守りできる余裕があるかわからんのでな。隠させてもらった」
「・・・・なぜ、そんなことをわれらに話すのです!?」
元康が知基を怪しいものを見る目つきで睨む。
「理由は言わん。信じるも信じないもおまえたち次第だ」
◇
惟正と元康は吹原が遠くに見える峠の上で放り出された。
「この街道を東へ行け。京に出る。二度と来るな」
役人はそう言うと、二人を置いて吹原へ馬で引き返していった。
「・・・・本当に外へ出された」
「これからどうします、殿?」
・・・・・・。
・・・・・・。
「なにか、とんでもないことを聞いた気がするしのう」
「嘘ですよ、きっと」
「じゃが、嘘をいう者の目ではなかったが・・・・」
「嘘を見抜く目が殿にあれば、の話ですが」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「お前は本当に余計なことばかり言うのう」
「本当のことの間違いでしょう?」
「・・・・ともかく、東へ向かおう。伊豆へ行くぞ!ついて来い、元康!」
「・・・・はぁ。今度は伊豆ですか・・・・」




