↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦ぎの淡い影 ― 平安戦御体戦記  作者: ひろくま
天譴 (てんけん)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

241/436

167 天譴ノ章 幕間 四

知基が是基の部屋へ来た時、是基は経を写していた。

「兄者、腕はどうだ?」

「知基か。幸い右腕が無事なのでな。筆を持つには支障がない」

「・・・・そうか」


「すまんな、知基」

「うん?何がだ?」

「おれのやるべきことを全てお前に押し付けてしまった」

「・・・・いや、そんなことない。兄者のためならおれは何でもやってみせる」

「・・・・おれの腕のこと、気にしているのか?」

「当たり前だろう?おれのせいで・・・・」

「違うぞ、知基」

是基が強い目で知基を見る。

「おれは運が良い。あの状態で命が助かったのだ。普通なら死んでいる。その証拠に、羅刹はもう直らないらしい」

「・・・・だが、あの時おれが油断しなければ」

「お前らしくないな。おれを征夷大将軍にしてくれるのだろう?期待しているぞ」

「・・・・兄者・・・・」


知基は一礼して是基の部屋を出ようとした。


やはり、この兄は偉大だ。

こんな風に埋もれていい男ではない。

もっと、大舞台で公家や貴族たちを相手に大きくふるまえる器のある男だ。


「知基!」

不意に是基が呼び止める。

「・・・・どうした?」

「木曽宗影から父上のところに文が来たらしい。父上に聞いてみてくれ」


「・・・・わかった」




◇





「宗影から?和議の申し立てだ。こんなものに応じる気はない」

孝基は書状を投げてよこした。

知基はそれを拾い上げてみると、確かに和議について話し合いたいと書かれていた。

「・・・・昭基は・・・・」

「仕方あるまい」

孝基は驚くほどさっくりと答えた。その言葉には、何の感情も見えない。


・・・・だが、そうだな。仕方ない。


すまない、昭基。


おれの読みが甘かった。

いや、宗影の策が、おれの考えのずっと遠いところにあった。


坂東の武者の戦は、我ら都育ちの武者と違う。

名と尊厳を重んじる我らに対し、奴等は結果がすべてだ。卑怯であろうが、何と言われようが勝てばいいのだ。


「知基」

「はい」

「これより先、戦の総大将はお前に任せる」


・・・・・・?


いま、何と!?


「はい?・・・・兄者は!?」


「是基が望んだことだ。片腕では刀を思うように振れない。戦に出ることはならないと言ってな」



・・・・そんな!



「だが・・・・おれは、兄者を・・・・・・」

「知基、お前が総大将、是基を副将とする。よいな」


有無を言わせない強い言い方だった。



◇



「知基様、奴らを逃がしてまいりました」

使いに出した兵が戻ってきた。

奴ら、というのは霞惟正と貝元康のことだ。

苦し紛れであろうが「堺に木曽の水軍がいる」という話を持ってきた。おかげで、この吹原を守ることが出来たのは間違いない。

そのお返しとして、「吹原に三種の神器がない」という話をつかませて伊豆へ追い払った。

嘘だ。


「でも、よろしいのですか?三種の神器がないとなれば、敵は吹原に火を放つのでは?」

「正しい話というのは、正しい者から聞いてこそはじめて信じられるものだ」

「?」

「どこの誰かわからん者たちが突然現れて、敵の将から聞いた話を突然する。しかも、そいつらは敵に捕まっていて、わざと逃がされた者たちだ。そんな奴らの言うことを信じるほど、宗近という男も愚かではないだろう」

「・・・・??」

「だが、呪いのようなものだ。信じがたいからこそ、調べねばならん。それだけ、こちらは時を稼げる」

「・・・・????」


「まあ、奴らが伊豆まで辿りつければの話だ」


・・・・伊豆が動き出すまでに、こちらも・・・・。

そうだな。

総大将はおれなのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。