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戦ぎの淡い影 ― 平安戦御体戦記  作者: ひろくま
四章 花舞 はなまい

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128 花舞ノ章 三十一

康佑(やすすけ)瑞奈(はな)を抱えて、中庭を抜けて離れの一室に駆け込んだ。

「・・・見た目の割に重いな・・・」

やっとの思いで、あらかじめ用意した床の上に瑞奈を寝かせ、灯台に明かりをつける。

「・・・・くぅ・・・・・・くぅ・・・・・・・」

瑞奈はまだ、幸せそうな顔で寝息をたてている。

・・・やはりこの娘は別格だ。他の娘たちとは、美しさも品の良さも段違い。

「これほどの娘なら、わたしの横に並んでも見劣りするまい!美しさは美しさの元に集まるのだ!」

そんなことをつぶやきながら、躊躇(とまど)うことなく瑞奈の帯に手をかける。

「この娘も、あの時は興味がないとか言っておったが、結局ここへ来たということは、やはりわたしに惚れているのだ。となれば、わたしと(しとね)を共にすることを望んでいるのだから・・・期待に応えてあげようではないか」

自らも帯をほどき、着物を脱ぎ捨てる。

「さあ、床に励もうぞ・・・・」






「本当にここか!?国府の屋敷というのは?」

惟正(これまさ)元康(もとやす)は、ずっと矢萩の渡しの船着き場で瑞奈たちが来るのを待っていた。

だが、いつまで待っても瑞奈が現れない。

そこで思い出したのが、惟正が助けた(?)女が持っていた紙に書かれていた国府の屋敷での宴のこと。

「ここに瑞奈殿がいるかもしれない!いや、いるに違いない!」

「ですが、勝手に入ってよいのですか?」

元康はおそるおそる辺りを窺う。

と言いながらも、すでにここは屋敷の中庭。女たちが集められていると聞いて、居ても立ってもいられずに侵入してしまった。

「何を言う、恋心に遠慮は不要じゃ!」

「まったく意味がわかりません。でも、どこも真っ暗ではないですか」

「向こうじゃ。向こうに明かりが見えるぞ」

惟正が進む先に、離れの庵があり、そこの障子の向こうにぼんやりと明かりがついている。


さささっ。

木の陰に隠れる。

さささっ。

壁の裏に隠れる。


「あと少し・・・」

ふたりは庵の障子の横にたどり着く。

惟正と元康は顔を合わせて頷くと、障子に指で穴をあけて様子を窺おうとした、その瞬間。


がっしゃーーん!!


「ひいつ!?」

跳び上がって、思わず物陰に隠れる二人。


庵の障子を突き破って、飛び出してきたのは(ふんどし)姿の男。

地面に裸のまま放り出され、蛙のように手足を広げ仰向けで倒れている。


・・・・康佑?




「参河国府、小幡康佑!この愚か者が!!」

・・・瑞奈だ。

「な、何をする!?おまえも、他の女たちのようにおれに身を捧げに来たのであろう!?」

「思い上がるな!何度も言うが、わたしはお前などに何の興味もない!!」

「では、あの舞は・・・・!?」

「今頃、他の女たちも逃げている!お前の家臣の手によって!」

「はぁ!?なんだと!?」

「能見と言う男がわたしに教えてくれたのだ!今宵の料理には薬が入っていると!」

「能見・・・!!あいつ・・・・・!!」

悔しさに歯を食いしばる康佑。すでに爽やかさは微塵もない。

「思い違いするな!悪いのは能見ではない!民を食い物としか思わぬお前の方だ!」

「何を言う!わたしは民を大切に思い、女たちにわたしと交わる恩恵を与えているのだ!」

「それが思い上がりだというのだ!薬を盛って眠らせて交わることが、何の恩恵かっ!!」


「・・・怒っている瑞奈殿も美しいな」

「そんなこと言ってる場合ですか?」

物陰から覗きながら、惟正と元康は出ていく機会を失った。

「どうします?逃げます?」

「ううむ・・・・・」


バリバリバリバリ!!


突如、惟正と元康の目の前の壁が轟音と共に内側へ崩れた。

「ひいいっ!!」

「今度はなんですかっ!?」


そこには紫色の戦御体。その巨体が屋敷の壁を突き破って入ってきた。

「瑞奈様、ご無事ですか!?」

蓮華の声。

「蓮華殿!こいつをつまみ出して海にでも捨ててくれ!」

瑞奈が指さす先に、褌姿の康佑。

「きゃああああ!!」

顔を隠す紫雲。

「うわぁぁぁぁ!?」

驚く康佑。

「・・・・なんか、筋肉坊主たちよりも恥ずかしいのですが・・・」

紫雲の身をくねらせながら蓮華が言う。

「こ、こうなれば!お前たちなど退治してくれる!!」

そう言って康佑は屋敷の方へ走って行った。



「殿、今のうちに逃げましょう」

「し、しかし目の前に瑞奈殿がおるのに、何もせずに逃げるとは・・・・」

「そんなこと言ってると見つかっちゃいますよっ!」

「いや、待てよ!ここは落ち着いて・・・・・・


颯爽と現れる惟正。

瑞奈:「惟正様!?何故このようなところにあなた様がっ!?」

惟正:「あなたのおられるところ、どこへでもわしは参上するのじゃ。あなたのことを救うためならば!」

瑞奈:「ああっ!素敵な惟正様っ!」

惟正:「ふふっ、着物が乱れておる。直してしんぜよう」

瑞奈:「そんな!恥ずかしいです!でも、すてき!!」

惟正:「ああ、また罪なことをしてしまった・・・・」

瑞奈:「そんな罪作りな惟正様にこの身を捧げとうございますっ!!」

そして、ふたりは・・・・・・。


あんなことにっ!!」

「なるわけないでしょ。もう誰もいませんよ」

元康が呆れ顔で言った。

「え!?」

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