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第28話 質の変化



 モニターに戦闘ログが流れる。


 ネメシの直近戦闘。


 再生。


 停止。


 巻き戻し。


 マアトは無言でそれを繰り返していた。


「……ここ」


 小さく呟く。


 指が止まる。


 戦闘開始から数手。


 わずかな時間。


 だが、


 明確に“違う”。


「また何か見つけた?」


 背後から声。


「うん」


 マアトは頷く。


 再生する。


 ネメシの一手目。


 踏み込み。


 ――振らない。


「……あれ?」


 オペレーターが首を傾げる。


「今までと違うな」


「うん」


 マアトの目は画面に固定されたまま。


「ここ、重要」


 次の動き。


 ズラす。


 当たらない。


 だが、


 止まらない。


 繋がる。


「……これ」


 オペレーターが息を呑む。


「流れてる?」


「うん」


 マアトは静かに答える。


「“流れ”ができてる」


 その一言で、


 空気が変わる。


「いや、でもまだ不安定だろ?」


「そう」


 即答。


「完成してない」


 だが、


 問題はそこじゃない。


「“できてる”ことが問題」


 マアトは言う。


 視線は鋭い。


「この段階で?」


「普通は無理」


 断言。


 迷いはない。


 データを切り替える。


 他プレイヤー。


 同ランク帯。


 比較。


「このレベルの“流れ”は」


 グラフを指す。


「もっと後」


 明らかに段階が違う。


「ネメシは飛ばしてる」


「……段階を?」


「うん」


 マアトは頷く。


「順番を無視してる」


 その言葉に、


 全員が黙る。


 順番。


 成長のプロセス。


 本来なら、


 一つずつ積み上げるもの。


 だが、


 ネメシは違う。


「点→流れの移行が早すぎる」


 マアトはログを拡大する。


 最初のズレ。


 あの瞬間。


 そして、


 今の戦闘。


「……似てる」


 ぽつりと漏れる。


「え?」


「“飛び方”が」


 指先で二つのログをなぞる。


 最初のズレ。


 現在の変化。


「連続してないのに、繋がってる」


 矛盾した状態。


 だが、


 同じ構造。


「……それって」


 誰かが言いかけて、


 止まる。


 マアトが続ける。


「“補完されてる”」


 静かな声。


 だが、


 重い。


「足りないはずの工程が」


 画面を見つめる。


「埋まってる」


 誰もすぐには理解できない。


 だが、


 違和感だけは共有される。


「そんなの、システム側でやってないよな?」


「やってない」


 即答。


「そんな処理はない」


 マアトは言い切る。


 だからこそ、


 問題だ。


「じゃあ、なんだよこれ」


 誰かの声が震える。


 マアトは答えない。


 だが、


 視線は動かない。


 ネメシのログ。


 その変化。


 その“飛び方”。


「……これ」


 ゆっくりと口を開く。


「学習じゃない」


 空気が凍る。


「え?」


「少なくとも、普通の意味では」


 マアトは続ける。


「経験を積んで伸びてるんじゃない」


 画面を指す。


「“埋められてる”」


 その一言で、


 全員が息を呑む。


 誰も触れていないのに、


 足りないものが埋まる。


 あり得ない現象。


 だが、


 ログはそれを示している。


 マアトは小さく息を吐く。


 思考が繋がる。


 最初のズレ。


 時間の歪み。


 そして、


 この補完。


「……内部で、何かが動いてる」


 誰にも聞こえないくらいの声。


 だが、


 確信に近い。


 マアトはモニターを見つめる。


 ネメシはまだ未完成。


 だが、


 その成長は、


 “普通ではない形”で進んでいる。


 そしてそれは――


「まだ途中」


 ぽつりと呟く。


 この現象は、


 終わっていない。


 むしろ、


 これからが本番だ。

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