第27話 流れの入口
アリーナ。
フィールドに立つ。
ネメシは静かに構えた。
呼吸は落ち着いている。
思考も、澄んでいる。
だが、
今までとは違う。
“最初の一手”。
それだけを考えている。
開始の合図。
ネメシは踏み込む。
速い。
だが、
振らない。
距離を詰める。
相手が反応する。
迎撃。
その瞬間。
ネメシは半歩ズラす。
振る。
――当たらない。
だが、
問題ない。
ネメシは次へ行く。
迷わない。
相手の剣が来る。
流す。
外す。
位置がズレる。
ネメシの目が細くなる。
“ここ”。
振る。
――当たる。
ネメシの呼吸が一瞬止まる。
浅い。
だが、
繋がっている。
すぐに次。
選ぶ。
さっきまでと違う。
“当てたから次”じゃない。
“次を通すための今”。
振る。
――通る。
連続。
ネメシの中で、
初めて“流れ”が生まれる。
だが――
相手の動きが変わる。
早い。
ネメシは反応する。
だが、
読みが一段浅い。
崩される。
体勢が流れる。
ネメシは即座に立て直す。
まだ切れていない。
だが、
繋がりきっていない。
相手が踏み込む。
ネメシは迎える。
ズラす。
流す。
――通る。
カウンター。
深くはない。
だが、
“意味がある”。
ネメシの目が鋭くなる。
次。
そのための一手。
選ぶ。
振る。
――外れる。
ネメシの眉が動く。
今のは、
悪くない。
だが、
“足りない”。
相手は止まらない。
すぐに圧が来る。
ネメシは防ぐ。
流す。
だが、
流れが奪われる。
さっきまでの主導権が、
消える。
ネメシは一歩下がる。
呼吸を整える。
分かっている。
“入口には立った”。
だが、
中には入れていない。
相手が来る。
速い。
ネメシは動く。
ズラす。
振る。
――通る。
だが、
続かない。
流れが伸びない。
相手が崩す。
ネメシは耐える。
だが、
押される。
最後の局面。
ネメシは踏み込む。
考えはある。
だが、
まだ甘い。
振る。
――外れる。
その瞬間。
来る。
斬撃。
間に合わない。
システム表示。
敗北。
ネメシは動かない。
呼吸だけが静かに続く。
負けた。
だが、
違う。
今までとは。
ネメシはゆっくりと目を上げる。
さっきの感覚。
最初の数手。
繋がった。
確かに。
「……見えたな」
小さく呟く。
完全ではない。
だが、
入口は越えた。
ネメシは剣を握る。
次だ。
この流れを、
“伸ばす”ために。




