第29話 記憶の引っかかり
モニターに流れるログ。
ネメシの戦闘。
再生。
停止。
巻き戻し。
マアトはそれを何度も繰り返していた。
数値は正常。
エラーもない。
それでも、
違和感だけが残る。
「……おかしい」
小さく呟く。
指が止まる。
ネメシの一手目。
踏み込み。
振らない。
間を作る。
そして、
次へ繋ぐ。
その流れ。
その“置き方”。
「……似てる」
ぽつりと漏れる。
「え?」
背後のオペレーターが反応する。
マアトは答えない。
画面を見たまま。
目を細める。
もう一度再生。
同じ場面。
同じ動き。
だが、
違う。
完全ではない。
それでも、
確かに。
「……こんなはず、ない」
今度ははっきりとした声。
だが、
自分に向けたもの。
「何が?」
「いや……」
言葉が続かない。
説明できない。
データとしては、
どこにも異常はない。
だが、
“知っている”。
この違和感を。
この“飛び方”を。
マアトはゆっくりと息を吐く。
画面を切り替える。
別ログ。
古い形式。
アーカイブ。
通常業務では触れない領域。
「ちょっと、それ」
オペレーターが声を上げる。
「権限外じゃ――」
「確認だけ」
短く返す。
操作を続ける。
読み込み。
表示。
古いインターフェース。
今とは違う構造。
だが、
見覚えがある。
マアトの指が止まる。
「……これ」
小さく呟く。
再生。
古い戦闘ログ。
粗い。
不完全。
だが、
流れがある。
そして――
「……同じだ」
声が震える。
完全に一致しているわけじゃない。
だが、
“構造”が同じ。
点の繋ぎ方。
流れの作り方。
そして、
“飛び方”。
「……なんで」
理解が追いつかない。
これは、
ただのプレイじゃない。
もっと根本的なもの。
「そんなはずない……」
マアトの視線が揺れる。
頭の奥。
引っかかる記憶。
研究室。
画面。
誰かの声。
――最適化できないものはない。
その言葉が、
浮かびかけて、
止まる。
「……違う」
マアトは首を振る。
否定する。
「関係ない」
そう言い聞かせる。
だが、
指は止まらない。
ネメシのログと、
古いログを並べる。
比較。
重ねる。
「……繋がってる」
ぽつりと漏れる。
時間も、
システムも、
違うはずなのに。
それでも、
繋がっている。
「……あり得ない」
マアトは画面から目を離す。
ほんの一瞬。
だが、
その表情には、
初めての色が浮かぶ。
困惑ではない。
恐れ。
それに近い何か。
再び画面を見る。
ネメシの動き。
その変化。
その“補完”。
「……これ」
声がかすれる。
「ただの最適化じゃない」
誰にも聞こえないほど小さく。
だが、
確かに言った。
マアトはゆっくりと息を吐く。
考えが繋がりかけている。
だが、
まだ足りない。
断片が。
足りない。
「……何が起きてるの」
問いかけ。
答えはない。
だが、
確実に一歩踏み込んだ。
これはもう、
ただの異常じゃない。
過去と現在が、
繋がり始めている。




