第23話 掴みかけた距離
再び、アリーナ。
視界が開ける。
フィールド。
観客のざわめき。
そして、
対面に立つ相手。
ネメシは静かに構えた。
呼吸は安定している。
思考も、整理されている。
――“合わせるな”。
――“ズラせ”。
頭の中で反芻する。
だが、
それに縛られない。
開始の合図。
ネメシは動く。
踏み込み。
速い。
だが、
前よりも“軽い”。
相手の動きに対して、
合わせにいかない。
あえて、
半歩ズラす。
振る。
――当たる。
ネメシの目が細くなる。
浅い。
だが、
確実に通っている。
すぐに次へ。
繋ぐ。
選ぶ。
――迷わない。
振る。
――当たる。
連続。
ネメシの中で、
何かが噛み合う。
だが――
相手の動きが変わる。
わずかに。
だが、
明確に。
ズレが生まれる。
ネメシの三手目。
――外れる。
剣が空を切る。
ネメシの眉が動く。
今のは、
悪くなかった。
だが、
“読まれた”。
相手は崩れない。
むしろ、
一歩先にいる。
ネメシは距離を取る。
呼吸は乱れていない。
だが、
分かっている。
“届きかけた”。
だが、
まだ足りない。
相手が踏み込む。
速い。
ネメシは反応する。
ズラす。
流す。
返す。
――通る。
カウンター。
今度は少し深い。
ネメシの目が開く。
いける。
そう思った瞬間。
相手が動く。
想定外の角度。
崩される。
体勢が流れる。
ネメシは即座に立て直す。
だが、
遅い。
追撃。
一撃。
入る。
ネメシは耐える。
まだ終わらない。
構える。
踏み込む。
ズラす。
振る。
――当たる。
また通る。
だが、
続かない。
流れが繋がらない。
ネメシの中で、
理解と現実が噛み合わない。
分かっているのに、
届かない。
相手は崩れない。
ネメシは攻める。
繋ぐ。
ズラす。
通る。
外れる。
崩れる。
立て直す。
その繰り返し。
少しずつ、
確実に。
だが、
決定打にはならない。
ネメシは一瞬、止まる。
呼吸。
視界。
距離。
すべてが見えている。
だが、
足りない。
何かが。
相手が動く。
ネメシは迎える。
ズラす。
流す。
――間に合わない。
半歩、
遅い。
その差が、
決定的になる。
斬撃。
衝撃。
HPが削れる。
ネメシは膝をつきかける。
だが、
倒れない。
まだ、
終わらない。
最後の一手。
ネメシは踏み込む。
考えない。
ただ、
“今”を見る。
振る。
――当たる。
深い。
今日一番の手応え。
だが、
その瞬間。
視界が揺れる。
次の一手が来る。
間に合わない。
斬撃。
システム表示。
敗北。
ネメシはその場に立ち尽くす。
息を吐く。
ゆっくりと。
確実に変わっている。
通じている。
だが、
勝てない。
ネメシは目を閉じる。
一瞬だけ。
そして、
開く。
――届きかけている。
それは間違いない。
だが、
まだ足りない。
ネメシは静かに剣を下ろす。
次だ。
この距離を、
越えるために。




