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第12話 その先の場所

 剣を下ろしたまま、

 ネメシは小さく息を吐いた。


 距離は開いている。


 追えば、

 まだ戦える距離だ。


 だが――


 踏み込む理由がなかった。


 差は、もう分かっている。


 目の前の相手は、

 同じ土俵にいない。


 それだけのことだ。


「いい動きだったな」


 軽い声。


 先ほどと変わらない調子。


 ネメシは視線を上げる。


 相手はもう剣を収めていた。


 戦う気はない。


 最初から、

 試すつもりだったのかもしれない。


「この辺でやる動きじゃない」


 続けてそう言う。


 評価。


 それ以上でも以下でもない。


 ネメシは何も返さない。


 言葉にすることはない。


 ただ、

 視線だけを向ける。


「……来るか?」


 短い問い。


 意味は分かる。


 だが、

 確認するようにネメシは口を開いた。


「どこに」


 相手は少しだけ笑う。


「決まってるだろ」


 振り返りざまに、

 軽く手を振る。


「上で待ってる」


 それだけ言い残し、

 そのまま去っていく。


 追うことはできる。


 だが、

 足は動かなかった。


 “上”。


 言葉の意味は単純だ。


 ここではない場所。


 同じような相手が、

 当たり前にいる場所。


 ネメシはしばらくその場に立ち尽くす。


 周囲の視線が、

 わずかに集まっているのが分かる。


 だが、

 気にするほどではない。


 いつも通りに戻るだけだ。


 剣を軽く振る。


 感触は変わらない。


 動きも同じ。


 それでも――


 足りない。


 はっきりと、

 そう感じている。


 ネメシは視線を落とし、

 そしてゆっくりと前を向いた。


 行くべき場所は、

 もう決まっている。


 考える必要はない。


 ただ、


 そこに行くだけだ。

第12話までお読みいただきありがとうございます。


ネメシは一度、明確な差を知ることになりました。

同時に、その先に進むためのきっかけも得ています。


一方で、同じ戦闘は別の場所でも記録されています。


プレイヤー同士の戦闘ログとしては成立しているはずのものが、

どこか噛み合っていない。


処理としては正しい。

しかし、過程に違和感がある。


その小さなズレに、

気づいてしまった側の視点も、次で触れる予定です。


引き続きよろしくお願いします。

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