第10話 同じ狩場で
狩場は、いつもと変わらなかった。
同じ地形。
同じ敵。
違うのは、
プレイヤーの数だけだ。
「人、多いな……」
ネメシは小さく呟く。
視界の端で、
他のプレイヤーが戦闘をしている。
特別な光景ではない。
このレベル帯では、
よくあることだ。
ただ――
動きが、重い。
敵の攻撃を受け、
後退する。
回復を挟み、
仕切り直す。
慎重な立ち回り。
それ自体は間違っていない。
むしろ、正しい。
ネメシはその様子を一瞬だけ見て、
すぐに視線を外した。
自分の敵へと向き直る。
踏み込む。
迷いはない。
敵の動きが見える。
その前に、
身体が動く。
剣が届く。
一撃。
それだけで、
戦闘は終わる。
「……早いな」
自分で言って、
少しだけ違和感を覚える。
だが、
止まる理由にはならない。
次。
また一体。
同じように、
処理する。
横目に、
別のプレイヤーが映る。
まだ戦っている。
同じ敵。
同じはずなのに、
時間が違う。
ネメシは何も言わず、
さらにもう一体を倒す。
「……え?」
小さな声が聞こえた。
別のプレイヤーだ。
視線が合う。
だが、
ネメシはすぐに逸らす。
特に気にすることではない。
いつも通りだ。
そう思っていた。
だが――
本当に、
いつも通りなのか。
わずかな違和感だけが残る。
ネメシは剣を軽く振り、
次の敵へと向かった。
考えるより先に、
身体が動く。
それだけで、
十分だった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ネメシ視点に戻り、「いつも通り」の戦闘を書きました。
ただ、周囲と比べると少しだけ違って見える、そんな状態です。
本人は特別なことをしているつもりはありませんが、
少しずつズレが出始めています。
次は、そのズレが通用しない相手が出てくる予定です。
引き続きよろしくお願いします。




