他校の女子生徒
ギターバッグを背負い階段を下りると、ローファーを履く木乃香の後ろ姿があった。
隣には聡子さんがいる。
俺は靴棚の上に置かれた弁当を仕舞い、木乃香の準備を待つ。二人並んで履くと少し窮屈になるのだ。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
木乃香はそう言い残して玄関を出ていった。
俺も黒いスニーカーを履く。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
俺も聡子さんに見送られ扉を開くと外は快晴だった。絶好の始業式日和かもしれん。
視線をゆっくり下げると門の外に、見慣れた他校の制服を着た女子高生が俺を見ていた。
「何してるの、早くいくわよ」
「はいはい」
木乃香の隣に並ぶ。
「なんか、一緒に登校するのも久々だな」
「そうね」
駅までは十分程度だが向かう途中、無言の時間が続いた。
東西連絡通路を東側に抜けたら、木乃香は左の一高へ、俺は真っすぐ坂を上り二高に行く。一高と二高の生徒にその場だけを切り取られると変な誤解を受けてしまうんじゃないかと俺は思ったりする。今日はたまたま同じ時間帯に家を出ただけだが、そこんところを木乃香はどう思っているのだろうか。
「なに?」
木乃香の横顔を見ていたら、訝しげられた。
「いや、二高は赤いネクタイだけど、一高は青いリボンだよなーって」
「そうね、真一は赤と青どっちが好き?」
「青かな」
「そう」
この質問に何の意図があるのかはよく分からない。けれど、前を向いた木乃香の口元が、ほんの少しだけ緩んだ気がした。
「あんたの事だから紫とでもいうかと思ったわ」
「別にそんなに捻くれてねーよ」
まあ、紫が一番好きだが。
東西連絡通路、通称ギャラリーロードに入った。
抜けた先に紺のブレザーに青いチェックスカートの女子高生が歩いているのがちらほらと見える。紺のスラックスの男子高生もだ。つまり一高生。だから俺は木乃香に気を遣って展示品の方を見て立ち止まった。
「展示品見てからいく」
「そう、あんたはそういうの好きよね」
「人の想いが籠っているからな」
少しだけ間が空き返答が返ってきた。
「……じゃあね」
「ああ」
離れていく木乃香の背中を少しだけ見送った。
ギャラリーロードの掲示板には、新入生歓迎のポスターや美術部の作品が並んでいる。
少しして俺も出口に向かって歩き出した。
巣作りしている燕の下を通り抜ける。差し込んだ朝の日差しが眩しかった。




