208.『ブラックノア』試運転
オダワールの謀反から『ハコネゼル領』の連鎖暴走へと続いたあの激動の日から、五日経った。
「これはすごい! 『天船』の技術よりもかなり高度じゃの」
『天船』の船長で、『トブシマー』一族の族長のシーアさんは、箱船『ブラックノア』の機能を見て感嘆の声を上げた。
俺たちは、『加護ガチャ』で手に入れた【ビルドブロックシリーズ】の箱船『ブラックノア』に乗船し、空を飛んでいる。
合体機能のテストも兼ねて、キャッスルブロック『ホワイトキャッスル』を『ブラックノア』の背の部分に合体させているが、全く問題ない。
そして『ブラックノア』の背の前方、クジラの頭の上に当たる部分には『天船』が載っている。
その部分には着艦スペースがあって、規格が全く違うはずの『天船』を着艦させることができたのだ。
どうも元々そういう作りになっているようだ。
様々な規格の船を着艦させて、交流などができるようになっているのだろう。
着艦に合わせて、固定用のパーツが現れるのだが、それは船体部分を覆い隠す構造になっているので、通常の場合外気にさらされることなく船から出て、『ブラックノア』の内部に入ることができるようになっている。
空を飛んでいる状態でも、行き来ができるというわけである。
『ブラックノア』はかなりの高度を飛んでいるので、人に見られる事はないが、もし見られたらかなり異様な光景だろう。
巨大な黒いクジラ型の船の背の部分には、巨大な亀に乗り、その上には白亜の城があるのだ。
おまけに頭の上には、空飛ぶ帆船が乗っている。
この異様さだけで、見る者を圧倒するだろう。
移動要塞とも言える『ブラックノア』存在のおかげで、周辺国に責められても全く脅威を感じない気分だ。
だが、俺たちの敵は周辺国ではない。
新たな魔王なのか悪魔なのかわからないが、いずれにしろ強大な存在と戦うことになる可能性が高い。
そこで俺たちは、この『ブラックノア』の存在をしばらく秘匿することにした。
いわゆる秘密兵器である。
切り札と言っても良い。
いざと言うときの切り札にするためには、秘密の存在でなければならないのだ。
それに移動するだけなら、『天船』があるから問題ないし。
ただ『セーフハウスブロック』『バトルハウスブロック』『ファクトリーハウスブロック』『コンテナハウスブロック』は、見た目が馬車の形状ということもあり、普通に活用しようということになった。
『ブラックノア』を秘匿すると言っても、いざと言う時しっかり活用できるように、密かに操船の修練を積んでおくことにした。
それにあたって、ある程度の役割を決めた。
と言っても、『天船』の操船メンバーをそのままこの『ブラックノア』の操船クルーにしただけだ。
それ故に、艦長は『天船』同様、『トブシマー』一族のシーア族長にお願いすることになった。
操船クルーは、『天船』でもサポートを担当してくれている元第二位の勇者候補パーティのサポートメンバーだった十人だ。
隊長のダルカスさんには、副艦長もお願いすることにした。
『天船』も、今の時代にはないような優れた技術を搭載した船だ。
操船には、基本的に人手を要しないのだが、人が担当することでできることの種類が広がる。
ボローンの操縦などがそうだ。
その担当も含め、サポート部隊の十人は、乗組員としてもかなり成長しているのである。
また使えずにいた武装なども、俺の『献身』スキルで修復しているので、『天船』本来の武装はほぼ使える状態になっている。
ちなみに、このサポート部隊のメンバーは、今後も状況に応じで俺たちのサポートもしてもらうことになっている。
『サポーターズ』という部隊名になっている。
実は、俺たちはただ試運転で飛行しているわけではない。
目的地があるのだ。
それは『カントール王国』に侵略を仕掛けてきた『キュウシュ連合国』の盟主国である『フク王国』だ。
明確な侵略行為に対し、何の制裁もしないというのでは、国としてなめられてしまうということで、制裁に向かっているのだ。
本当は、人族同士争っている場合ではないから相手になんかしたくない。
だが、国として何の報復もせずにいれば、甘く見られ他の国が侵略してくるかもしれない。
逆に、今回のことを利用して『カントール王国』に手を出せば大変なことになるという風潮を作ったらいいんじゃないかという話になったのだ。
ただ、まともに攻めたのでは、国力もかなり消費するし、人的な損害も出る。
そこで、『天船』を使って、少数精鋭で王都というか、王城を急襲することにしたのだ。
捕虜にした者たちの尋問の結果、今回の侵略は『キュウシュ連合国』の総意ではなく、盟主国である『フク王国』の単独行為であって、一種の暴走であることはわかっている。
だが盟主国というだけに、一番力を持っているわけで、考え方によっては『キュウシュ連合国』の総意とみなしてしまうこともできる。
領土的野心を持っているならば、このことを利用して、一気に『キュウシュ連合国』全体に攻撃をかけるという考え方もあるだろう。
だが、俺にそんなつもりはない。
再三になるが、人族同士で争っている場合ではないのだ。
もっとも、連合国に所属する他の国の指導者がどういう考え方なのかは、実際のところわからない。
もしかしたら『フク王国』と同じように野心を持っているかもしれない。
それに対する牽制という意味でも、やはり報復は必要という結論になっている。
それに、今回の侵略を誘導したと思われる『青の賢人会』の青賢人がまだいるかもしれないので、王城にいるようなら捕まえてしまいたいという思いもある。
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