209.混乱する『フク王国』
『カントール王国』のある『東宮島』から南西方向にある『南宮島』の『キュウシュ連合国』、その北側に位置する盟主国『フク王国』にかなり近づいてきた。
ここからは人目に触れることになるので、『ブラックノア』を上空に停止させ、『天船』を発進させることにする。
『ブラックノア』は、魔法AIに指示して自動操縦にすることもできるし、回収して収納することもできる。
今回は、自動操縦で待機させることにした。
海上だし、この高度なら誰にも見つからないだろう。
ちなみに、専用の亜空間から召喚するときに使う『召喚キー』は通信装置にもなっていて、魔法AIで自動操縦にしている『ブラックノア』に指示を出して、呼び寄せたりすることができる。
今回『天船』に乗り込むのは、俺といつものメンバー、そしてシーア艦長と『サポーターズ』のみんなだ。
いざ出陣だ!
◇
『フク王国』王城の大会議室
「なぜだ! なぜ一人も戻らない!
本当に我が艦隊は全滅したのか?」
声を荒らげたのは、国王だ。
「はい、捜索隊を出しましたが、海上には一隻の船もなく、浮き上がってきた遺体を何体か発見したのみです。
『カントール王国』の『ハコネゼル領』の近海にも船影はありませんでした。
全て沈没したのかと……」
脂汗を流しながら、宰相が報告を上げる。
「そんなことが、起きるわけなかろう!」
「はい、普通の艦隊戦ではありえないことです。ですが、もしかしたら魔物に襲われたのかもしれません」
「もしや……『カントール王国』に仕向けたはずの海の魔物たちが、こちら側を襲ってきたのか?」
「分かりませんが……その可能性もあるかと。いえ、その可能性を考えねば、このような事態の説明がつきません」
「……ぐっ、そう考えざるを得ないのか。
なんということだ!
青賢人をすぐに呼べ!」
「はい、それが……忽然と姿を消し、現在捜索中です」
「なに! ……もしや、はめられたのか?
『カントール王国』を侵略する作戦を立てさせておきながら、本当の狙いはこちらだったとでも言うのか!?」
「どうでしょうか……それはわかりかねます。
ただ普通に考えれば、そんな面倒なことをせずに、直接この国を攻めれば済むことです。
なにせ操ることが不可能と言われている魔物を、限定的とは言え操って連鎖暴走を起こせるのですから」
「むぅ……確かにそれもそうか……」
「陛下、問題は我が国の主力と言える戦力を失っただけではありません。
今回の単独侵攻に対して、他の連合国の駐在大使からは、矢のような問い合わせが来ております。
また我が艦隊が侵略戦争を仕掛け、その挙句に返り討ちに合い全滅したという噂が王都中に広がっています」
「なに! 誰がそんな噂を流すのだ!?
そのことを知る者は多くないはずだろ?」
「はい、噂の出所は今のところ分かっていません。
問題なのは出所ではなく、現在の状況です。
王都中の民が、王家に不満を募らせています。
ただでさえ不満を持っていた民たちが、暴動を起こすかもしれません」
「なんだと! 下賎な民共め、我に楯突こうというのか!」
「すでに小競り合いが起きている場所もあります」
「おのれ! 我に楯突いたことを後悔させてやる!
王都に残っている兵士たち全てを動員し、反意ある民を徹底的に制圧しろ! 殺してしまってもかまわん!」
「しかし、陛下それでは……」
「ええい、うるさい! 余の命令が聞けぬのか!?
暴動を起こそうとする者を全て殺してしまえ!
主力を失った今の国軍では、暴徒の数が多くなれば抑えきれなくなるぞ!
そうならないためには、暴徒の芽を早めに摘むべきだ!」
「しかし……」
「しかしもカカシもない! 大規模な暴動になったら、先に死ぬのはお前だぞ!
宰相だけではない、ここにいる大臣たち、お前たちもだぞ!」
その言葉に、もはや異議を唱える者はいなくなった。
◇
『フク王国』の王都は、港に面している港湾都市でもある。
海上からすぐだった。
『カントール王国』が持っている範囲での『フク王国』の情報は、事前に入手済みである。
ここからは、逆に目立つ方がいいので、『天船』の飛行高度を下げて、市井の人々にも見れるように航行する。
だが、俺たちはここで異様な光景を目にした。
王都中が騒然としているのだ。
王都各所で、小競り合いが起きている。
兵士たちと人々がもめている。
もめていると言っても、戦力差が圧倒的なので、一方的に人々がやられているところが多い。
兵士に打ち付けられたり、切り殺されていた人もいるようだ。
全く動かない遺体と思われる人影がある場所もある。
「ヤマトくん、これってもしかしたら……暴動が起きているのかもしれない」
クラウディアさんが状況を確認し、そんな声を上げた。
それにしても、武器も持っていない人々を一方的に傷つけるなんて……なんて兵士たちだ。
「先輩、助けないと」
ラッシュが、いてもたってもいられないといった感じで、悲痛な声を上げた。
「そうだな。状況はよくわからないが、一方的な蹂躙に近い。
応戦している人々もいるようだが、たいした武器も持っていないからな。
よし、しょうがない、一旦予定変更だ。
人々の救助に当たる」
俺がそう言うと、みんな大きく頷いた。
「シーア艦長は、王都を巡回航行してください。
『サポーターズ』のみんなは、『天船』からボローンを操作して、王都全域の調査と、状況によってはボローンでの救援を頼む。
強化したボローンなら、様々な局面に対応可能なはずだ」
俺はそう指示を出して、仲間たちとともに超低空飛行した『天船』から飛び降りた。
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