206.新機能発現
「『大剣者』、今言った事は、データとして残っているのか?」
「はい、不完全ですがアクセスできるデータの中にありました。
もっともデータというよりは伝承のようなもので、どこまで正確かはわかりません。
ただ試す価値はあるかと」
「なるほど。
いずれにしろ、『封印具』だけでなくそこに封じられている魔物に対しても、個別に『光の洗礼』は浴びせた方がいいわけだな」
「はい、そう思います。
今までの考察を整理するならば、『封印具』に対して『光の洗礼』を浴びせることで『聖印具』に変質させ、顕現させた魔物に対しても改めて『光の洗礼』を浴びせ、その存在を昇華させるということになります」
「そうだな。
じゃあまずは『ハーミットクラーケン』に対して、『光の洗礼』を浴びせ、思考をクリアにさせてやろう。
その後は、『スクイードクラーケン』の『封印具 槍威加』に『光の洗礼』を浴びせ『聖印具』へと変質させよう。
それから、キュウビと土蜘蛛の『封印具』を変質させて、顕現させた二体に『光の洗礼』を浴びせるという手順で行くか」
「はい、それがいいと思います」
「よし、早速やろう!」
……予定通りにまずは、『ハーミットクラーケン』に『光の洗礼』を浴びせ、『スクイードクラーケン』の『封印具』に『光の洗礼』を浴びせ、『聖印具』に変質させた。
そして、改めて二体を顕現させた。
「ご主人様の光により以前よりも思考がクリアになったようです。ありがとうございます」
そう感謝の言葉を述べてくれた『ハーミットクラーケン』だが、前よりも話し方が流暢になっている。
やはり『光の洗礼』は効果があったようだ。
「ご主人様、私の方はお聞きしていた通り『聖印具』に変わったことで、強制隷属の機能が消失したようです。
そして、もう一つわかったことがあります」
「もう一つわかったこと?」
「はい、強制隷属の機能喪失、武器の機能を維持したままの顕現に次ぐ、もう一つの機能が発生しています」
「もう一つの機能? それはどんな?」
俺は、思わず驚きの声を上げてしまった。
『聖印具』へも変質の効果は、まだあったのか……?
ちなみに、武器の機能を維持したままの顕現というのは、もともと封印されていた武器を使いながらも、そこに封じ込められているはずの魔物を顕現させることができるという驚きの機能である。
『封印具』だったときには、なかった機能だ。
『封印具』だったときには、顕現させると武器は一時的に消える状態になっていたのだ。
「『開放顕現』とは別に、『限定顕現』という機能が発生しています。
おそらくですが……『封印具』が『聖印具』に変質したことと、封じられている我ら魔物がご主人様の光により昇華したことが原因と推察します」
「なるほど……『聖印具』にしただけでなく、封じられている魔物も変質したから現れた機能と言うわけか……」
「はい。そう思われます」
「それはどんなものなのかわかるのか?」
俺が『聖印具』に対して改めて『アナライズ』を使って詳細を確認すれば、おそらく見ることができると思うが、話の流れ的に『スクイードクラーケン』に確認してみた。
冷静に考えると自分が封じられているアイテムの能力がわかるというのは不思議な話だが、一体となっているようなものだから、ある意味自分自身とも言える。
そう考えれば、セルフステータスのようにわかっても不思議ではない。
「はい、『限定顕現』は、かなり特殊な顕現状態になるようです。
小動物のようなサイズになるらしく、明瞭な会話もできなくなるようです。
ただ本体と言える『聖印具』からかなり離れても活動できるようですし、攻撃面でもある程度のサポートができるようです。
常時顕現状態にすると使用者の魔力を消費し続けますが、『限定顕現』の場合は、非常に少ない魔力消費で済むようです」
なんと、驚きの報告だ。
そんな機能があるのか……。
サイズ的にかなり小さくなるが、最小限の魔力消費で常時顕現させられるということだな。
そして『開放顕現』の時ほど強力ではないが、ある程度攻撃面でも活躍できるということか。
「マスター、おそらく『スクイードクラーケン』の報告の通り、『聖印具』化と封じられている魔物の昇華の二つの効果で、新たに発現した能力でしょう。
クラーケンなどの大型魔物を常時『開放顕現』する事は、大きさからも魔力消費の点からも困難ですが、小動物のように小さくなるのであれば、大きさ的な問題は解消されますし、魔力消費も最小限で済むならば、かなりのメリットがあると思います。
『限定顕現』で常時顕現させておくことを、お勧めします」
「……そうだな。それに何より、面白そうだ」
俺は、早速『スクイードクラーケン』に対し、その機能を発動させることにした。
『限定顕現』と発動真言を唱えると、海上にいた巨体が光の魂となってどんどん凝縮して、小さくなった。
そして、消えてしまった。
と思ったのだが、単に小さくなって見えなくなっただけのようで、水面をすごい勢いでこちらに向かってくる塊がある。
あっという間に近づいてきたそれは、手のひらサイズになった『スクイードクラーケン』だった。
しかも、何か可愛らしい。
『スクイードクラーケン』は、イカが巨大になった姿だったのだが、今は、そのまま小さくなったのではなく、ずんぐりむっくりの感じになって、可愛くなっているのだ。
「なんと! 小さくなるだけでなくデフォルメ化して可愛くなっちゃうんですね! まるでぬいぐるみです! 最高です!」
傍で見ていたメイド型ゴーレムのメイが歓喜の声を上げた。
デフォルメというのはよくわからないが、ぬいぐるみはわかる。
布で作った人形のことだ。
確かに、そんな感じかもしれない。
他の女性陣からも、可愛いという歓声が上がっている。
そして至近距離まで来た『スクイードクラーケン』は、水面をぴょんと跳ねると俺の肩に飛び乗った。
手のひらサイズだから、肩に乗っちゃえるんだな。
「すごいな、こんな小さくなったんだな」
俺がそんな声をかけると、『スクイードクラーケン』は体を少し前にかがめ、頷くような仕草をした。
「やはり会話はできなくなってしまうようだな」
『スクイードクラーケン』は、またコクコクと頷くような仕草をした。
「話は通じているけど、そっちからは話しかけられないってことだな?」
するとまたコクコクと頷いた。
うーん、直接話ができないのは残念だが、これはこれで可愛い。
話は通じるわけだし、見た目も可愛いし、問題ないか。
仲間たちも大喜びだしな。
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