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王子は逃げ出した  作者: 相川イナホ
三人のおっさんと俺と奴隷と
19/19

王子 ごろつき相手に無双する

 「どうですおやびん。なかなかの上玉でしょ。

こいつを有閑なマダームに売りつければ…くっうらやましすぎる!」


 ちょっと待て、そのイベントは普通可憐な女の子向けのイベントじゃないか?


 てか、おやびんて、おやびん。




 …ヤラレキャラくせぇ呼ばれ方。


 プックスクスクス


 プギャーまで言って大笑いしそうになるのを必死に押し殺す。


 「けっ!こいつ震えてやがるぜ」

 「『色男、金と力は…』って言うからな!」


 ごろつき共は好き放題な事を言っている。


 「ね。ここまでおびき出したんだからさぁ。お手当をおくれよ」


 俺をハメた女の子が『おやびん』と呼ばれた男にしなだれかかって甘えた声をあげる。

 おやびんは懐からなんか茶色っぽい粉が透けて視える紙包みを出して娘に渡した。


 「あまりキメすぎるなよ」


 そう言いながら渡しているのを見れば、それは病気がよくなる薬ではなく、人生オワタに繋がっている方のお薬なのだろう。


 薬代って自分がキメる分かよ。病気のお母さんがいるって言うのも嘘なんだろうな。


 あー、まったく、この世界はもう。


 涎を垂らしそうな表情で娘はそれを受け取って、「これだけかい?足りないよ」

と『おやびん』に縋りつく。


 「お前、渡した分だけ使っちまうじゃねーか。一袋ずつ渡すからそうしとけ」


 優しいのか優しくないのか『おやびん』に提案されて、娘は不承不承承知すると部下に付き添われて去っていく。

 嫌、優しい訳じゃない。逃げ出さないように部下に見張らせているだけなのだろう。


 「おやびん、あいつもう使いものにならんようになってると違いますか? 」


 「面が綺麗だから売り飛ばすつもりだったが、薬が効き過ぎだな。

あれじゃオークの餌にもなりゃしねぇぜ。

ま、こっちの色男を手に入れられたからいいがな」




  ふん。糞虫共が。



 こちとら腐っても攻略対象だ。甘く見られたとあってはやってられないぜ。


 甘いのは俺のマスクとボイスで充分だぜっ!


 俺は攻略対象。つまり高スペック人間なのだ。

 そこらの色男と一緒くたにしてもらっては困るぜ。



 「天知る、地知る、我知る。世の暗闇に跋扈する者よ、覚悟はよいか? 」


 「何だこいつ? 」


 「恐怖で変になったか? 」



 俺の纏う空気が変ったのを感じて、ジリっとならず者達の集団は後ずさる。


 「貴様達の悪行三昧、この耳にしかと聞いたぞ」


 「おい、何を言っている? 囲まれてるのが見えねぇのか? 大人しくしろ」


 『おやびん』が、それでも口角に泡を立てて脅してくる。


 俺の威圧下でも他の手下共のように怯まないのは褒めてやろう。



 「『大人しくしろ』と言われて従う魔物はいるかな?」


 俺はリュートに仕込んだ剣を取り出す。

 それは護身用で刃も短いが、立派な剣である。



 「綺麗な音を奏でるのが本来の役目なのだが、趣向を変えて今日は貴様達の悲鳴を奏でてやろう。特別サービスだ。 喜べよ」


 「大口を叩きやがって!ほえ面かくなよ!!」


 俺の安い挑発に、面白いほどごろつき共がいきり立つ。



 「まずは氷でも食らって頭冷やせ」


 手を身体の前に突き出すと詠唱なしで氷の塊をいくつも出現させ、風に乗せてぶつけていく。

 横殴りで雹が降ってくるのと同じ状態に、ごろつき共は顔をや頭を腕でかばって手許がお留守になる。


 そこを剣で斬り捨てていく。もちろん死なない程度に手加減はするけどね。

 この程度の腕の奴らなら加減は自由自在、とりあえずの戦闘不能状態まで持っていく。



 長い年月を魔力の多い者同士を婚姻させていった結果、王族、貴族には魔力の多い者も多い。

 俺も王族のはしくれ、魔力は一般より多めだし魔法技術も基本中の基本位は履修済である。

 まだ護身用位の魔法しか学んでないが、まだ伸びしろもあるようだ。

 いずれ魔法も使って俺TUEEEEしてみたいものだ。




 魔法技術は国の中でも秘密扱いである。

しかし戦争などでは一般市民から徴収された兵士で魔力のある者にはその技術は公開され、運用される。結果として市民にもある程度は情報は洩れている。

 なので、一般市民であっても魔法が使えてもおかしくはない。

 これを使った時点で俺が貴族に連なる者だとはバレないだろう。

 それに今使っているのは初歩中の初歩の技術だ。


 これだけでは俺が王族だと特定できまい。

 そんな事を考えつつ剣を振っていたのだが、奴らは想像以上に弱かった。


 「くっ!魔法を使いやがるか! てってめぇら、ずらかるぞ」

 

 『おやびん』はすぐ傍に倒れていた手下に肩を貸すと逃げ出した。


 仲間には優しいんだな。

 ま、倒れた仲間をそのまま残しておいて、そっからイモ蔓で自分も捕まりたくなってのが本当なんだろうけど。


 ふと周囲を見ると、目立たないように、矢をつがえた「俺専属の草の者」が建物の影や屋根の上にいる。


 まぁそうだよな。

 不利な状況になったら射かけようとしていたのだろう。

 俺の腕なら大丈夫だと踏んでいただろうが、彼らからしたら一応は護衛対象で主人だものな。


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