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埴輪と旅する女①【会津若松編】  作者: Mikiko


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54/108

第054回

 『Mikiko's Room(https://mikikosroom.com/)』で連載した、会津若松への旅行記(原題は「単独旅行記Ⅶ」)です。

 この回のオリジナルは、↓のページに掲載しています。

https://mikikosroom.com/archives/49630607.html


 なお、「小説を読もう!」では、写真を2分の1サイズに縮小して投稿しています。

 フルサイズの写真は、上記オリジナルページをご覧下さい。

 特に断りのない写真は、わたしが撮影したものですので、ご自由にお使いください。


 なお、本文のみをまとめた総集編(後書きはありません)は、↓のページからご覧いただけます。

https://mikikosroom.com/archives/24257587.html




挿絵(By みてみん)

み「『槍の間』?」

ハ「『玄関番が常時二~三名詰めており、緊急事態に備えていた部屋』とあるな」

み「鎧、着てか?」

ハ「あれは、飾ったあるだけやろ。

 あんなん着とったら、敵が来る前にへたばってまうがな」

み「『通り畳』って何?」

ハ「書いたあるやないか。

 老眼か?」

み「遠くて見えないの!

 近眼だろ」

ハ「『中央の畳の敷き方を通り畳といいます。

 玄関番が敵の侵入など緊急の際に、畳の縁に足がつまづいたりしないようにとの配慮です』」

み「てことは、この部屋を横に突っ切るわけか」

ハ「左っ側が、式台玄関やけど……。

 どうやって突っ切るんや。

 右側は壁やないか」

み「壁と見せかけて、実は張りぼてなんじゃないの。

 そこを突き破って現れるのよ」

ハ「コントやがな」


挿絵(By みてみん)

み「ここが、壁の向こう側か。

 こりゃ気持ちのいい部屋だね。

 しかし、みごとな逆光で、説明書きがぜんぜん読めん」

ハ「『役人所やくにんどころ』て書いたる」

み「よく読めるな。

 サンコンか」

ハ「古いたとえや。

 今の人やと、わからんで」

み「いいから読んで」

ハ「『屋敷に関わる事務を執っていた部屋』やて。

 執務室やな」

み「なんか優遇されてるよね。

 壁の向こうに飛びだして行かなくていいわけだし……。

 窓から飛び出して逃げられるじゃない」

ハ「会津の武士が、そないなことせんわい」


挿絵(By みてみん)

み「殺風景な中庭じゃ。

 バーベキューでもしたのかな」

ハ「するかいな。

 こういう中庭は、明かり取りの役目があったんやろ」

み「確かに、こんな広い家じゃ……。

 真ん中あたりは真っ暗だわな。

 電気もないんだし」


挿絵(By みてみん)

み「おー、美しい。

 ま、こんなにお天気が良ければ……。

 どんな庭でも綺麗に見えるけどね」

ハ「ここは移築やからな。

 元の場所の庭がこうやったとは限らんやろ」

み「イングリッシュガーデンだったりして」

ハ「案外、畑やったかも知れんで」

み「なるほど。

 それは考えられるか」


挿絵(By みてみん)

み「『お成りの間』か。

 ここは説明書きが近くてよく見える。

 奥の人形は、松平容保かもね。

 ここは、屋敷のどのあたりなんだ?」

ハ「あんたやと、屋敷内で迷子になりそやな。

 ↓さっきの間取図でいうと、向かって左側にあった黄色いエリアやな」

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

み「あ、黒い鯉だ。

 錦鯉を泳がせないのは……。

 質素な家風ということかね」

ハ「そもそも錦鯉が生まれたのは……。

 幕末近くのようやで。

 あんたの住んどる新潟県の、小千谷のあたりやないか」

み「なるほど。

 生まれてたとしても、全国的に広がるのは維新後だろうしね。

 それに、こういう屋敷で鯉を飼うのは……。

 いざというときの食料にもなるからじゃない。

 綺麗な錦鯉じゃ、食べにくいよね。

 もったいないし」

ハ「そういうたら、つげ義春の漫画に……。

 錦鯉を盗んで食う話があったな」

み「あったあった。

 確か、『ほんやら洞のべんさん』だ。

 あれも雪深い越後の話だったね」


挿絵(By みてみん)

み「緑が目に染むるわい。

 雪国の人間にとって……。

 この季節は、ほんとに格別なんだよ」

ハ「せやろな」

み「ここで、バーベキューがしてみたい」

ハ「そればっかしや」


挿絵(By みてみん)

み「さっきの部屋の横だ。

 あっ、やっぱりあの人形、松平容保だったんじゃない。

 大当たりだ」

ハ「幕末の藩主なんやから、誰でも当たるがな」

み「でも、何しに来たんだ?

 業務報告とかなら……。

 お城に呼びつけて聞けばいいだけだろ」

ハ「華美に暮らしてないかとか……。

 チェックの意味もあったんやないか?」

み「でも、抜き打ちで来るわけないでしょ。

 いくらでも繕えるよ。

 やっぱ、殿様もたまには出歩きたかったんじゃないの。

 で、お昼に池の鯉を食う」

ハ「なんでやねん」


挿絵(By みてみん)

み「ほら、鯉こくが出た」

ハ「お茶やて」


■南向き

 日本のたいがいの住宅では、敷地の南側に庭があり……。

 そこに面して、リビングがあるという間取りじゃないでしょうか。

 でもこれ、実は貧乏人の家の間取りなんです。

 南向きのリビングから、前の庭を見た場合……。

 向う側から陽があたります。

 つまり、見てる側に影が出来るんです。

 早い話、逆光です。

 すなわち、庭の裏側を見てるようなものです。

 樹木も、日の差す向う側に枝を伸ばしますしね。

 それじゃ、金持ちの庭はどうだったか。

 北向きです。

 それくらいなら、貧乏人だってできそうですよね。

 でも、ダメです。

 貧乏人の家は敷地が狭いので……。

 どうしても、2階建てになります。

 北向きの庭では、2階の陰になって日があたりません。

 樹木は育たないというわけです。

 でも、お金持ちのお屋敷には……。

 無粋な2階などありません。

 平屋です。

 庭には、1階の屋根の上から、さんさんとお日さまが降り注ぎます。

 樹木や庭石に、影はできません。

 樹木も、見る方に向かって伸びて来ます。

 北向きの座敷には、日も差しこまないので……。

 縁側に座って、お酒を楽しみながら庭を眺められます。


 話は変わって、マンションの間取り。

 マンションの場合、庭はありません。

 でもリビングは、よほどの立地じゃない限り……。

 ほとんど、南向きに造られます。

 東京などの太平洋側なら、わかるんですよ。

 冬場、低い太陽が、部屋の奥まで陽を通してくれますから。

 暖房費の節約になりますね。

 気分的にもポカポカしますし。

 でも夏は、それがデメリットになり……。

 冷房を入れないわけにはいきません。

 しかし、何で新潟のマンションも、リビングが南向きなんでしょうか?

 冬場、新潟で陽が差すのは、10日に1日くらいですよ。

 そのためにリビングを南向きにするのは、あまりにもバカバカしいです。

 夏場のデメリットは、そのままなのにです。

 新潟では、北向きリビングの方が……。

 光熱費的には、ずっとお得だと思います。

 ちなみに、欧米の古いお屋敷では、リビングは北向きがあたりまえだそうです。

 向こうでは、先祖代々伝わる古い家具やカーペットを使ってる場合が多いです。

 部屋にお日さまが差しこむと、それらが日焼けしてしまうんですね。

 だから、大事な調度がある部屋は、北向きに作るわけです。

 その点、日本では、家具もカーペットも、自分の代で使い捨てですからね。

 子孫に伝えていこうという意識は持ってないですから……。

 南向きリビングが選ばれるのでしょう。


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