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氷の奇公子 ~変人王子の生存術~  作者: 岸田減税
最終章 第二次ルイーナエ大戦
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第53話 史上最恐の魔法使い

俺たちが第一防壁へ到着した時には、すでに戦闘が始まっていた。


 城壁上ではアイティクイランド軍のカタパルトとバリスタが絶え間なく動き、帝国軍の攻城兵器へ向けて投射物を放っている。その一方で、帝国軍からもカタパルトやオナガーによる射撃が続き、城壁の上空を巨大な投射物が行き交っていた。さらに、両軍の弓兵と弩兵も射撃を続けており、敵味方の遠距離攻撃で弓兵や弩兵だけでなく歩兵も撃ち抜かれている。城壁の外では帝国軍の歩兵が盾を構えながら損害を出しながらも少しずつ前進している。


「陛下!」


 第一防壁の指揮官が駆け寄ってきた。


「敵の攻城塔は?」


「すでに二基を破壊しています!」


 指揮官が前方を指す。


「残りは三基です。破城槌も一基、まだ健在です」


 俺は城壁の外へ目を向けた。


 確かに、帝国軍の攻城塔は三基まで減っている。元々攻城塔は五基あったそうだが、破壊できたようだ。破壊された二基らしき残骸が赤い水たまりと共に目に入った。帝国軍の攻城塔の残り三基の内、一基は中央から、もう一基はやや左側から、そして最後の一基は右側から、それぞれ歩兵に守られながら前進していた。さらに、その間を縫うようにして破城槌が一基、ゆっくりとこちらへ向かっている。


 それでも、残った攻城塔三基と破城槌一基が城壁へ到達すれば状況は一気に変わる。


「射撃を継続!」


 指揮官が命令する。


 バリスタから大型の矢が放たれ、残った攻城塔の一基へ向かう。別の場所ではカタパルトが投射物を放ち、帝国軍の歩兵の列を牽制する。弓兵と弩兵も攻城兵器を守る帝国兵を狙い続けていた。


 しかし、帝国軍の歩兵は盾を前へ構え、その隙間を埋めるように密集しながら前進している。帝国軍の一般兵は軽装なので弓で打ち抜けば確実に負傷又は戦死を狙える。しかし、帝国軍の数は計り知れない。その物量を生かした帝国兵は攻城塔と破城槌を守るために、撃ち抜かれた兵士の穴を埋めるために次々と前へ出ていた。


「まだ距離があります!」


「バリスタ、中央の攻城塔へ集中!」


 城壁上で命令が飛び交う。


 俺はその光景を見つめながら、ティアへ視線を向けた。


「俺が攻城塔を狙う」


「じゃあ、私は破城槌を狙う」


 ティアが頷く。


 俺は城壁の外へ右手を向けた。


 俺の周囲に碧色の魔力が集まっていく。通常の氷属性魔術ではない。身体や武具を強化するものでもない。約三百年に一度しか現れない魔法使いとして、自然現象そのものへ干渉するための力だった。


 足元に魔法陣が浮かび上がる。


「アエテリアの大地に祝福をもたらす氷雪の女神よ」


 魔力がさらに高まっていく。


「哀れにも神の御力に縋る我に神の祝福を与えたまえ」


 冷気が城壁の上まで広がった。


「我が願うは『氷結』の祝福」


 詠唱とともに、帝国軍の中央を進む攻城塔の足元へ魔力が集中する。


「我が祈りを聞き届け、御身が祝福を与えたまえ」


 瞬間、地面が凍った。俺の居た地面から氷が走り、帝国兵を凍らしながら攻城塔へ向かう


 攻城塔の車輪の周囲へ氷が広がり、氷が攻城塔を貫いた為、攻城塔は停止し、、押していた帝国兵は自分の周囲で何が起こったかも理解できず、地面から生えた氷の剣に身体を貫かれた。


「今だ!」


 城壁上のバリスタが一斉に放たれた。


 大型の矢が攻城塔へ集中し、防護設備へ次々と突き刺さる。


既に帝国兵は全滅している。もはや守りようがないだろう。


 俺はそのまま、もう一度詠唱へ入った。


「アエテリアの大地に祝福をもたらす氷雪の女神よ。哀れにも神の御力に縋る我に神の祝福を与えたまえ」


 魔法陣が再び浮かび上がる。


「我が願うは『氷槍』の祝福」


 空中に氷が集まり、鋭い槍の形を取った。


「我が祈りを聞き届け、御身が祝福を与えたまえ」


 氷槍が放たれる。


 攻城塔の側面へ突き刺さり、ただでさえ弱まっていた耐久力に限界が来たようで、攻城塔の崩壊が始まっていた。もはや使い物にならないだろう。


「攻城塔、破壊確認!」


 城壁上から歓声が上がる。


 その声に呼応するように、弓兵と弩兵も射撃を強める。


 残る攻城塔は二基。


 俺はすぐに次の攻城塔へ狙いを移した。


 ティアが一歩前へ出た。


 彼女の視線の先にあるのは、帝国軍の破城槌だった。


 厚い防護設備に覆われ、その周囲には多数の帝国兵が群がっている。カタパルトやバリスタの射撃を受けながらも、破城槌はゆっくりと前進を続けていた。


「次は私ね」


 ティアが静かに言う。


 俺は一歩だけ横へ下がった。


 ティアが両手を前へ向ける。


 すると、彼女の足元へ紅色の魔法陣が浮かび上がった。通常の炎属性魔術で現れるオレンジ色とは違う。魔法使いであるティアだけが持つ、紅色の魔力だった。


「アエテリアの大地を支配する灼熱竜アルデーンスよ」


 詠唱が始まる。


「哀れにも其の御力に縋る我に竜の御力を与えたまえ」


 魔法陣から紅色の光が広がり、ティアの周囲の空気が熱を帯びていく。


「我が願うは『竜の鼻息』の力」


 集まった魔力が破城槌へ向けて一気に集中する。


「我が祈りを聞き届け、御身が御力を与えたまえ」


 詠唱が完成した。


 次の瞬間、破城槌の進路上へ巨大な炎が生まれた。


 炎は破城槌の周囲を包み込み、その前後にいた帝国兵を巻き込むように広がっていく。破城槌を守って


いた兵士たちは一斉に炎へ呑み込まれた。地獄の底から響くような絶叫が戦場に異常なほど響く。


焼死とは口では表現することが難しいほど最も苦しい死に方だ。

人は体内の60%がでできていると言われている。その為、燃えきるのに相当な時間を必要とする。

つまり、苦痛を受ける時間も計り知れない。煙の吸引により一酸化炭素中毒にでもなって意識を失えるこ

とができれば幸運だ。もし、意識を失えなければじわじわと体の表面から焼けると同時に絶叫によって吸った炎が気道を通り肺を焼き、叫ぶほど体内から燃えていく。

そしてその苦痛は身体の臓器などが機能不全に陥るまでの長い時間灼熱の炎に苦しめられる。

そして、魔法では煙が生まれない。つまり、一酸化炭素中毒になって意識を失うことは不可能で最も苦しい死に方を味わうことになる。

炎熱魔法は恐らく、氷結魔法よりも恐ろしい魔法であろう。


炎に包まれた帝国兵の絶叫を聞いた周囲の帝国軍部隊も恐れたように大きく乱れた。


 炎に包まれた破城槌がまだあまり燃えていない。帝国兵の体内の水分が威力を落させたのだろう。


 しかし、ティアはそんな破城槌を静かに見つめた。


 そして、再び魔法陣が浮かび上がる。


「アエテリアの大地を支配する灼熱竜アルデーンスよ」


「哀れにも其の御力に縋る我に竜の御力を与えたまえ」


「我が願うは『炎槍』の力」


 紅色の魔力が一点へ収束し、鋭い炎の槍へ変わっていく。


「我が祈りを聞き届け、御身が御力を与えたまえ」


 炎槍が放たれた。


 一直線に飛んだ炎の槍が破城槌の防護設備へ突き刺さり、火が一気に広がった。


 防護設備が崩れ、破城槌の周囲に残っていた帝国兵たちが散らばる。


 その瞬間、城壁上からバリスタが一斉に放たれた。


 大型の矢が破城槌へ集中して突き刺さる。


 防護設備がさらに崩れ、破城槌そのものが大きく傾いた。


 ティアは最後にもう一度、炎を破城槌へ集中させた。


 炎が内部へ回り込み、構造材を包み込む。


 やがて破城槌を支えていた部分が耐えられなくなり、巨大な兵器が大きく崩れた。


「破城槌、破壊確認!」


 城壁上から報告が響いた。双方の軍が何も言えずに口をつぐんでいる。


 戦場とは思えないほどの静けさだ。


 そんな事態を引き起こした金の髪と紅色の瞳を持つ美しい少女、ティアはゆっくりと息を吐いた。


 今まで戦乱の時代に炎熱魔法使いが生まれたことは一度もなかった。


 ましてや、大陸中の国が争う戦乱の時代に生まれる者など。


 しかし、ティアは戦乱の時代に生を受けたのだ。


 彼女はアイティクィランドでは天使として、帝国では悪魔として、


 そして_

  

 大陸史上最恐の魔法使いとして語り継がれることになるだろう。

AI使いまくっていたのですが、戦闘描写がAIの規制のようなものに引っかかりまして。

今後は内容重視で行きます!

投稿数は減りますが。

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