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氷の奇公子 ~変人王子の生存術~  作者: 岸田減税
最終章 第二次ルイーナエ大戦
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第44話 反撃計画

王となったその日の夜。


 王宮では即位を祝う宴も開かれず、王都の鐘が長く鳴らされることもなかった。東から帝国軍が迫り、北ではプラエシディウスとガイウシアが危機にさらされ、中央ではウィムーヌが防衛線として機能し続け、南では王領の東端まで帝国軍が進出している。そんな状況で、俺が最初にやるべきことは王冠を戴いたことを喜ぶことではなく、この国をどう生き残らせるかを決めることだった。


 王宮の軍事会議室には、父上――アウレリウスと、軍務卿アトラシート伯爵、財務卿ペクーニア伯爵、内務卿、外務卿、法務卿、それに各軍団長が集まっていた。ティアも俺の隣に座っている。つい先ほどまで俺は王太子だった。それが今では、全員が俺へ視線を向け、最終的な判断を求めている。


 長机の中央には、アンティクイランド王国全土の地図が広げられていた。東側には帝国軍を示す赤い駒が並び、その先端は王領東端のすぐ近くまで来ている。北ではプラエシディウス伯爵領へ向かう敵部隊が増え、その先にはエクィトゥムとの連絡路となるガイウシア子爵領がある。中央ではウィムーヌ子爵領が中部軍の集結地点となっているが、その東側では帝国軍がすでに攻撃準備を進めている。南の王領には、帝国軍先鋒が二日程度で到達できる位置まで来ている。


「まず、防衛について確認する」


 俺が口を開くと、アトラシート伯爵が立ち上がった。


「はい。北部はエクウス伯爵が率いる部隊が防衛線を維持しておりますが、プラエシディウス伯爵領東部への敵進出が確認されています。プラエシディウスそのものが直ちに陥落する状況ではありませんが、その南に位置するガイウシアまで敵が進出すれば、エクィトゥム王国との陸路連絡が断たれる可能性があります」


「中部は?」


「ウィムーヌ子爵領へ後退した部隊の再編はほぼ完了しています。セパラーティオ川沿いのような長い防衛線を維持するのではなく、街道と要所を中心とした短い防衛線を構築しています。ただし、帝国軍も東側へ兵力を集めているため、そう遠くない時期に攻撃を受ける可能性があります」


「南部は?」


「帝国軍先鋒が王領東端まで二日程度の距離です。現時点で王領東端へ集められる兵力は、少なくとも一万五千人程度。ただし、これには各地から退いてきた部隊が混在しており、十分に再編された軍とは言えません」


 俺は地図へ目を落とした。


 北も危ない。


 中央も危ない。


 南も危ない。


 どこか一ヶ所に兵力を集中すれば、別の場所が崩れる。


 父上が王であり続けた頃から、この問題はずっと変わっていない。むしろ俺が王になった今、逃げ場がなくなっただけだった。


「エクィトゥムからの援軍は?」


「まだ大規模な増援はありません」


 外務卿が答える。


「セプテントリア方面、カヴィーレスターン砂漠方面、シルウィア周辺など、帝国軍と接触している戦線が多いためです。エクィトゥム王国も自軍を簡単に引き抜ける状況ではありません」


「つまり、俺たちだけでしばらく耐える必要がある」


「はい」


 俺は黙った。


 帝国軍を正面から倒すことは難しい。


 なら、こちらから戦争の形を変えるしかない。


「籠城する」


 その一言で、何人かが顔を上げた。


「王都レクィエリアを防衛の中心にする。前線をこれ以上広げず、王都へ通じる街道と王領西側の要所を守る。帝国軍がどこを攻撃しても、最後には王都の防衛線で止める」


「王都へ下がれば、王領東側と中部の領地を失うことになります」


 軍団長の一人が言った。


「分かっている」


 俺は答えた。


「でも、今の兵力で全部守るのは無理だ。全部を守ろうとして全部を失うより、守る場所を決めた方がいい」


 俺は地図の上へ指を置く。


「プラエシディウスはエクィトゥムとの連絡路を確保するため、可能な限り維持する。ウィムーヌは中部軍の集結地点として維持する。王領東側については、敵の進出を遅らせることを優先する。そして、王都へ通じる最後の防衛線を厚くする」


 アトラシート伯爵が頷いた。


「合理的です」


「ただし」


 俺は続ける。


「それだけでは勝てない」


 全員が黙ってこちらを見る。


 俺は机の上に、別に用意していた資料を置いた。


「反撃策について話す」


 そこで、今度は空気が変わった。


「最初にやることは、帝国軍最高中央司令部への襲撃だ」


 アトラシート伯爵が資料を見る。


「正面から、ですか?」


「違う」


 俺は首を横に振る。


「ノルマデース部族連合と、アエテリア帝国亡命政府の潜伏部隊を使う」


 ノルマデースは帝国東方の広大な平原に勢力を持ち、そこには帝国軍へ編入された旧ノルマデース弓騎兵も存在している。アエテリア帝国亡命政府には帝国内部へ潜伏させている部隊があり、帝国軍の制度、補給、司令部の位置に関する情報も持っている。


「成功する保証は?」


 軍団長が尋ねる。


「ない」


 俺は即答した。


「だから決死隊だ。生きて帰れることを前提にしない」


 室内が静まり返る。


「ただし、最高中央司令部を壊せれば、それだけで帝国が崩壊するわけじゃない。そこは勘違いしないでほしい」


「では、何のために?」


 アトラシート伯爵が聞く。


「帝国の中央を揺らすためだ」


 俺は資料の上に手を置いた。


「今の帝国は、皇帝ホスティスが作った中央集権国家だ。元老院を解散し、皇帝選出制度を廃止し、構成国軍を帝国軍へ編入して、地方には中央政府の代官を置いている。だからこそ、中央の指揮系統が混乱すれば、以前の帝国より大きな影響が出る」


「最高中央司令部を襲撃し、帝国軍の指揮・通信・命令伝達を一時的に混乱させる」


「その直後に、ノルマデース部族連合軍が帝国領へ侵攻する」


 ここで、軍団長の一人が口を挟んだ。


「しかし、ノルマデースだけでは帝国軍に勝てません」


「その通りだ」


 俺は頷く。


「だから、そこからが本番だ」


 俺は帝国軍の資料を別の紙へ広げた。


「帝国の軍隊は一つになったように見える。でも、兵士まで全員が帝国のためだけに戦っているわけじゃない」


 ホスティスによる改革で、各構成国は軍事権を奪われた。これまで自分たちの領主や政府が保有していた軍隊は、帝国軍へ編入された。


 しかし、その中身を見ると状況は複雑だった。


「現地司令官の多くは、旧構成国軍の司令官だ」


「兵士のほとんども、旧構成国の兵士だ」


「帝国中央から派遣された兵士もいるが、少数派だ」


 つまり帝国軍という統一された軍服と制度の下に、元々はそれぞれの国に属していた軍人たちが大量に存在している。


「その者たちを反乱させる」


 誰かが息を呑んだ。


「可能なのですか?」


 俺は資料を見つめた。


「普通なら、ほぼ無理だ」


 帝国軍に対して反乱すれば、自分の家族や故郷まで危険にさらされる。周囲の部隊に制圧されるかもしれないし、反乱に失敗すればその地方そのものが処罰される可能性がある。だから、平時なら勝率は限りなくゼロに近い。


「でも、今は大戦だ」


 俺は続けた。


「帝国軍は、複数の戦線へ大軍を送り込んでいる。軍の多くがセプテントリア方面、カヴィーレスターン砂漠方面、そして帝領へ集中している」


 そして、その三つの地域には旧構成国が比較的多く残っている。


「帝国は改革によって構成国の領土をかなり併合した。でも、全部を併合したわけじゃない」


「今も帝国全体の約三分の一は構成国領だ」


 そこで父上が口を開いた。


「つまり、そこには自分たちの国家を取り戻したいと思っている者がまだいる」


「ああ」


 俺は答えた。


「しかも、彼らが望んでいるのは帝国そのものの消滅じゃない」


 俺は帝国の旧制度を示す資料へ指を置く。


「旧体制への復帰だ」


「構成国軍を取り戻す」


「中央政府に奪われた軍事権を取り戻す」


「地方が自分たちの政治と行政を決める」


「元老院を復活させる」


「皇帝選出制度も戻す」


 そして最後に、


「ホスティス皇帝を処刑する」


 部屋の空気が止まった。


「皇帝そのものをなくすわけじゃない」


 俺は続ける。


「ホスティスを、新しい中央集権体制の象徴として処刑する。その上で、旧来の制度へ戻す」


「つまり、皇帝という地位は残す」


「そうだ」


「元老院も復活させる」


「そうだ」


「構成国も軍を持つ」


「ああ」


「ただ、ホスティスと、その中央集権体制だけを終わらせる」


 アトラシート伯爵がゆっくり頷いた。


「それなら、反乱する構成国軍側にも、戦う理由が生まれます」


「そういうことだ」


 俺は、セプテントリア方面の地図を広げた。


「まず、セプテントリア諸国方面」


 ここでは帝国軍が、現地のゲリラ戦に苦しめられている。


「ここで旧構成国軍が反乱した場合、単純に後方から帝国軍を襲うだけじゃない」


「退路を塞ぐ」


 指を街道へ移動させる。


「帝国軍は前方のゲリラと戦っている。その背後で、旧構成国軍が帝国軍の補給路と撤退路を押さえる」


「そうなれば、帝国軍は前へも下がれない」


「そこで別方向からも反乱が起きれば、軍そのものを分裂させられる」


「少なくとも一旦は、帝国軍を後退させられるだろう」


 次にカヴィーレスターン砂漠方面へ移る。


「同じことを砂漠でもやる」


 砂漠では補給路と街道が限られる。


「帝国軍が砂漠奥地へ進んでいる時に構成国軍が反乱し、後方の拠点と退路を押さえる」


「帝国軍を分断する」


「少なくとも一度は撤退させる」


 さらに東方へ指を移す。


「そして、ノルマデース平原」


 ここには東部方面の構成国軍が残されている。


「この軍は、セプテントリア方面とカヴィーレスターン砂漠方面への後詰として置かれている」


「だから、ここまで反乱すれば大きい」


「カヴィーレスターン方面の反乱勢力と合流できる」


「ノルマデース部族連合軍もそこへ合流する」


「そのまま帝領へ攻め込める」


 アトラシート伯爵が地図を見る。


「つまり、三方向の反乱を連鎖させる」


「ああ」


「帝国軍を外から削るのではなく、帝国軍そのものを内部から分裂させる」


「その通りだ」


 俺は頷いた。


「帝都まで攻め込めなくてもいい」


 ここは重要だった。


「帝国軍が複数方面で撤退を強いられ、帝領まで戦線が押し戻されれば、それだけで帝国は戦争を続ける余裕を失っていく」


「そこで停戦交渉へ持ち込む」


「そうだ」


「そして、その停戦交渉の中で、ホスティス体制の終焉を条件とする」


「ただし、ホスティスを倒した後に帝国そのものを消すわけではない」


 俺は続けた。


「旧体制へ戻す。元老院を復活させる。皇帝選出制度を復活させる。構成国の軍事権を戻す」


「そのための反乱だ」


 誰も、すぐには口を開かなかった。


 だが、さっきまでの「無茶な作戦」から、少しずつ意味が変わっていくのが俺にも分かった。


 帝国軍が巨大だから勝てない。


 なら、その巨大な軍の中身を利用する。


 九十万人の帝国軍を、九十万人の敵として一つに考えない。


 その中には、自分たちの国を取り戻したい人間がいる。


 それを今の大戦という異常な状況で動かす。


「もちろん、成功する保証はない」


 俺は最後にそう言った。


「それどころか、失敗すれば帝国軍に全部潰される可能性もある」


 それでも、他に手がない。


「だから、今のうちから根回しを始める」


「ノルマデース部族連合へ連絡を取る」


「アエテリア帝国亡命政府にも協力を要請する」


「そして、帝国内部の旧構成国軍へ接触する方法を探す」


 父上がしばらく黙っていた。


 やがて、その口から言葉が出る。


「……やるしかないだろう。我々にはそれしか選択肢が残されていない」


 それが、この作戦の開始決定だった。


 反撃策が決まった後、今度は王都レクィエリアの籠城について話し合うことになった。


「王都の人口は?」


 俺が尋ねる。


 内務卿が答えた。


「約十五万人です」


 十五万人。


 その数字を聞いて、俺は地図を見る。


「帝国軍に包囲された場合、この人数をそのまま王都へ抱え込むのは危険だ」


「食料備蓄だけで何か月持ちます?」


「現在の備蓄を維持したままでも、十五万人全てを長期間支えるのは困難です」


「なら、避難させる」


 俺が言うと、会議室にすぐ反対の声が上がった。


「危険すぎます!」


「帝国軍の目前へ民間人を出すことになります」


「避難路そのものを敵に狙われる可能性があります」


「その通りだ」


 俺は全ての意見を聞いた上で、静かに続けた。


「だからこそ、ただ『逃がす』んじゃない」


 王都には、王家だけではなく商工組合連合会がある。


 商人たちは街道を知っている。


 輸送手段も持っている。


 倉庫を持っている。


 さらに、王都周辺の宿場や市場とも繋がっている。


「王家と商工組合連合会が共同で避難を行う」


「避難先を事前に用意する」


「食料も移動させる」


「輸送手段も確保する」


「一度に全員を出すのではなく、地域ごとに順番を決めて移動させる」


「そして、帝国軍には明確に『民間人の避難である』ことを伝える」


 外務卿が眉を寄せた。


「外交交渉をするのですか?」


「直接交渉する必要はない」


 俺は答えた。


「ただ、帝国軍に選択肢を突きつける」


 帝国軍が民間人の避難を妨害すれば、王都から避難しようとしている民間人を攻撃したことになる。


 その結果、帝国軍には「王都から逃げようとする民間人を攻撃した軍」という記録が残る。


 さらに、商工組合連合会は各地の商人と繋がっている。商人の情報網は軍のような命令系統とは違うが、街から街へ情報を広げる力がある。


「帝国軍が民間人を攻撃したという評判は、商人を通じてすぐに広がる」


「帝国がそれを望むとは思わない」


「つまり、民間人虐殺という汚名を帝国に背負わせる」


 アトラシート伯爵が言った。


「その意図を暗に伝えるわけですね」


「そうだ」


 俺は頷いた。


「こっちから帝国を脅迫するわけじゃない。避難する。民間人を安全な場所へ移す。その行動そのものを見せる」


「その上で、帝国軍がそれを攻撃すれば、責任は帝国側にある」


「そういう構図にする」


 当然ながら、危険がなくなるわけではない。


 避難の途中で戦闘になる可能性もある。


 敵が約束を破る可能性もある。


 それでも、十五万人を王都の中へ閉じ込めたまま帝国軍を待つよりはましだった。


「反対意見はありますか?」


 俺が尋ねる。


 何人かの軍団長が互いの顔を見る。


「危険ではあります」


「しかし、王都に十五万人を残したまま長期籠城するのも現実的ではない」


「避難先と輸送手段を事前に確保できるのであれば……」


「他に案がない」


 最後の言葉で、会議は静かになった。


「では、避難計画を進める」


 俺は命じた。


「ただし、軍事計画と同じくらい慎重にやる。民間人を戦場へ出すためじゃない。戦場から離すためだ」


 こうして、王都レクィエリアでは二つの準備が同時に始まることになった。


 一つは籠城。


 王都へ通じる街道を整理し、城壁と防衛施設を修復し、食料と水を備蓄し、王国軍を再編する。プラエシディウス、ウィムーヌ、王領東端の各防衛線では、帝国軍の進撃を少しでも遅らせるための準備が進められる。


 もう一つは、反撃の根回しだった。


 ノルマデース部族連合への接触。


 アエテリア帝国亡命政府への協力要請。


 帝国内部の旧構成国軍への接触。


 セプテントリア諸国方面での反乱準備。


 カヴィーレスターン砂漠方面での反乱準備。


 ノルマデース平原方面の構成国軍との連携。


 そして、最終的には帝領へ戦線を押し込む。


 帝都へ到達する必要はない。


 帝国軍が戦争を継続できないところまで追い込み、停戦を受け入れさせる。


 その後、ホスティス皇帝を新体制の象徴として処刑し、帝国そのものは残す。


 元老院を復活させる。


 皇帝選出制度を復活させる。


 構成国軍を再建する。


 奪われた軍事権を戻す。


 旧来の帝国体制へ戻す。


 俺は、その構想を頭の中で何度も組み直していた。


 成功する確率が高い作戦ではない。


 むしろ、正面から見れば無謀に近い。


 それでも、今は大戦だった。


 帝国軍の全てが同じ場所に集まっているわけではない。


 その兵士の全てが、同じ考えで戦っているわけでもない。


 そして帝国が中央集権化したからこそ、中央の指揮系統が崩れれば、その影響は大きくなる。


 だから、そこを狙う。


 王都を守る。


 住民を避難させる。


 時間を稼ぐ。


 そして、帝国軍の内側で眠っている旧構成国の意思を動かす。


 だが、ここまで決めても、俺には一つだけ気になることが残っていた。


 いくら作戦を考えても、兵士が戦ってくれなければ意味がない。


 王都へ残す兵。


 プラエシディウスを守る兵。


 ウィムーヌを守る兵。


 王領東端で時間を稼ぐ兵。


 その全てが、今すぐ自分たちより遥かに大きな帝国軍と戦わなければならない。


 しかも彼らの多くは、シルウァニア戦争を経験した兵士だった。


 前線で大軍同士がぶつかり、仲間が次々と失われる戦場を知っている。


 帝国軍の規模がどれほど大きいのかも知っている。


 勝てる保証がない戦争へ、もう一度向かわなければならない。


 王として命令するだけなら簡単だ。


 だが、恐怖を抱えた兵士が、その命令を最後まで実行してくれるとは限らない。


「……問題は、兵士たちの士気か」


 俺が呟くと、アトラシート伯爵が顔を上げた。


「はい」


 伯爵の返事は短かった。


「軍備も、補給も、作戦も必要です。しかし、兵士たちが『戦っても無駄だ』と思ってしまえば、どれほど立派な計画を作っても意味がありません」


 俺は地図を見る。


 帝国軍は東から来る。


 こちらは西へ退きながら戦う。


 戦力差は大きい。


 なら、まず必要なのは兵士たちに「何のために戦うのか」を理解してもらうことだ。


 王都を守るため。


 家族を守るため。


 自分の領地を守るため。


 そして、ただ帝国軍に踏み潰されるのではなく、この戦争を終わらせるための時間を作るため。


 反撃策が成功するまで、兵士たちには戦線を維持してもらわなければならない。


「なら、次に決めることがある」


 俺は顔を上げた。


「兵士たちへ、何を伝えるのかを決めよう」


 会議室にいた全員が、こちらを見る。


 作戦そのものは決まった。


 避難計画も決まった。


 各地の防衛線も決まった。


 しかし、それらを実際に支えるのは、一人一人の兵士だった。


 19歳で王になった俺にとって、最初に向き合わなければならないのは、地図の上の敵軍だけではなかった。


次の軍議では反撃計画の根回しが議題となったのだった。

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