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異世界転移した、そして  作者: 汐琉


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8/8

狭間の章という名の蛇足

これにて一応の完結となります。


こちらもサブタイトル通りの話となります。

「あ……れ?」



 人生の最期を泣きそうなイケメンに看取ってもらうという稀有な体験をした俺は、目覚めたという事実に驚いて声を洩らしながら目を開ける。


 目を開けた先には知らない真っ白な天井……というか空?


 やけに痛みとかリアルだったが、あれは緊張が見せた悪夢だったんだろうか。

 それとも異世界だからとんでもなくファンタジーな回復手段で助かったのか?

 そんな事を考えながら傷のあった辺りを触りながら体を起こす。


 そこへ、


「どちらでもない。おぬしはきちんと死んでおるのじゃ」


と重々しく告げる声がする。


 声だけは口調にそぐわない可愛らしい幼女のものだったが。


 視線をそちらへ向けると、改めて室内……というか周囲の風景も目に入る。

 病院も真っ青な真っ白い空間。そこにベッドだけがポツンとあって、俺は寝かされていたらしい。

 そんな真っ白い空間に、声から想像した通りの年頃の幼女が一人。


 ただし、気配とかわからない俺でもわかるぐらいに『普通』の幼女ではないとわかる雰囲気を醸し出している。


 その雰囲気はともかく、見た目は黒髪に黒目という親近感を覚える色彩をまとい、真っ白なワンピースを着たとても愛らしいだけの普通の幼女にしか見えない。


 そんな色々不審な幼女が先ほどの声の主で合っているのだろう、どう考えても。

 

「俺が間違いなく死んでいるなら、ここはあの世というやつでしょうか?」


 ベッドから足を下ろして腰かけ、謎の幼女へ問いかけをしてみる。


「少し違うが、大きく間違いではない。ちなみに美しさからもわかるじゃろうが、我はこの世界の最高神じゃ」


 ここでわからないですとか突っ込むと神罰を食らうんだろうなぁと突っ込むのを堪えて黙っておく。


 あの王とは違って、この幼女からは悪意を感じないし。


「むぅ! 我の美しさがわからぬとは無粋な男じゃ!」


 黙って自称神な幼女の言葉を待っていたはずなのに、ぷんぷんという擬音が似合う可愛らしい怒り方をされてしまった。


「え? 俺、何も言ってないんですが……」


「我は神じゃと言った! おぬしの心の内など手に取るようにわかるのじゃ!」


「えぇと…………だとしたら、すみません。可愛いとは思ってるんで(一応)」


「一応とはなんじゃ、一応とは!」


 どうやら本当に心の中を読まれてしまうらしいと、ぷんぷんしている幼女へ頭を下げて謝罪しておく。


「う、うむ、我は寛大じゃ、許してやろう」


「それで、ここがあの世のような場所だとして、俺は何故ここに? 地獄へ落とされる前に罪状の読み上げでも?」


 ふふんと可愛らしく鼻の穴を膨らませている幼女を微笑ましく眺めながら、疑問に感じていた事を訊ねる。


「違うのじゃ! 我はおぬしに頼みがあるのじゃ。そのためにここへ呼んだのじゃ」


「俺に?」


 予想外過ぎる言葉に、俺は目を見張って自身の胸元を指差す。

 そういえばここに穴が空いて死んだはずだが、穴は綺麗に塞がっていて血の跡もない。


「そうじゃ。ちなみにじゃが、ここにいるおぬしは魂だけの存在じゃ。肉体はきちんと下の世界で弔われておる」


「あ、そうなんですね。で、俺に頼みとは? 死んでいる俺に出来る事でしょうか?」


 また心の中を読まれたらしく、間髪入れず疑問に答えてくれた幼女へ曖昧に笑って返し、頼みについて掘り下げる。


「うむ。正確には死んでいては出来ないのじゃ。だから、あの世界へ転生してもらうために、ここへおぬしを呼んだのじゃ」


「異世界転移の次は、異世界転生ですか? 拒否権は?」


 正直なところ、一回死んだ身としては、もう一度死ぬのはキツい。一度死んだんだから、二度も一緒じゃないかとか言う奴は一度死んでみろと伝えたい。


「……おぬし、見た目によらず口が悪いのう」


 俺の心の声を聞いた幼女がちょっと引き気味だが、慣れている反応なので気にしない。


「わざわざ呼びつけたという事は、記憶を持ったまま転生させてくれる気なんでしょうが、本当に必要なんですか?」


「必要じゃ。おぬしには、勇者として呼ばれたおぬしのお仲間と、それと敵対する組織の戦いを止めて欲しいのじゃ」


 キリッとした顔で告げられた『頼み』の内容に、俺は首を傾げて素朴な疑問を口にする。

 俺が関わる必要性が感じられなかったからだ。


「…………えぇと、あなたが神託でもして『争うな』と言えば良いのでは?」


「それが出来るのなら、おぬしに頼まぬのじゃ。なんだったら、そもそも召喚だって止めたかったのじゃ!」


 余裕溢れる顔をくしゃりと崩して今にも泣きそうな表情で声を荒げた幼女に、俺は失言をしたと悟る。

 謝らなければと口を開きかけた俺を制して、幼女はゆるく首を横に振ってみせる。


「神は下界にほとんど干渉出来ぬ。タイミング良く……と言ってしまうとおぬしには悪いが、我にとっては渡りに船だったのじゃ」


「そうなんですね……ですが、正直俺は転生してまで……」


「おぬしの仲間はほぼ全員が非業の死を迎え、おぬしが仲良くしておった我の世界の人間は狂って世界を滅ぼすような事になってもかの?」


「は?」


 クラスメイト達が非業の死で、アレクが狂って世界を滅ぼす未来って、何がどうしてそうなった?


 俺が死んだ後、何が起きた?


 初めて、死んでしまった事を後悔する。


 いくらなんでもそれを聞いて何も感じない程クールにはなりきれない。


「我にはそんな未来が視えてしもうたのじゃ。それを止めるためにはおぬしの助力が必要なのじゃ」


 心が読める相手に駆け引きは無駄なので、俺は情けない本音という名の反論を口にする。


「ですが、俺が今から転生したとしても出来る事なんて……」


 正直、心はほぼ決まっていたのだが、力なく呟いたこれも本音だ。


 転生という事はたぶん赤ん坊からのスタートで、しかも俺には特筆すべきチートはない。


 どちら側に生まれ落ちたとしても止められる気がしない。


「そこは我が頑張るのじゃ! 世界へ直接は難しいのじゃが、おぬし経由なら何とかなると思うのじゃ!」


 ドヤ顔をした幼女が胸を反らし、


「頑張る、とは具体的にどのように?」


「それはじゃな──」



 そう言って具体的な『頑張る』を聞いて……。



 こうして俺は幼女な女神──オムニア様から乞われ、一度去った異世界へ新たな生を受けて降り立つ事となった。









 ──俺達が勇者として召喚される三年前に。





 コレってタイムパラドックスとかどうなるんだろうなぁとも思ったが、こちらの世界の神であるオムニア様が色々やってくれたのだからと飲み込む。

 深く考えると怖くなりそうなのもあるし。


 ただ少し不安になったのは……。


「召喚されたおぬしに会おうとしてはならぬのじゃ。出会った瞬間、ついしょつめつするのじゃ!」


という一部ひらがな発音な注意事項だ。


 確かに死ぬ前の『俺』と会って、死を避けるように説得出来れば話は早いが、その手は使えないと言われてしまった。



 異世界から来た『俺』の死はこの世界にとって確定事項になってしまい、それを覆す事はどちらにしろ叶わないそうだ。


 召喚キャンセルも、地球の神との兼ね合いで無理と言われてしまった。


 神にも色々あるらしい。



 とりあえず異世界転移で貰ったスキルはそのまま使えるそうだし、育てていなかった空間魔法なども習得しやすくしてくれてある……という説明だった。

 経験値獲得アップじゃ! とドヤ顔する幼女は可愛かった。

 俺の心の声を聞いて、さらにドヤ顔をしていて、ちょろすぎて心配になったが、まぁ大丈夫なんだろう。


 同じ空間で過ごす数日の間に見た側仕えはかなりしっかりしている面々だったから。



 最後に『俺』達が召喚される日付と──死ぬ日を教えてもらって、



「名前に関しては、オマケなのじゃ!」



 そんな一言と共に送り出されたのだけど……。





 俺にどれだけ出来るかわからないが、せめてアレクが狂って世界を滅ぼすという未来は止めたい。



 ついでで申し訳ないが、クラスメイト達を地球へ帰す方法も見つけたい。



 そうすればほぼ全てのクラスメイト達が迎えるという非業の死は避けられる。




 そんな真面目な事を考えている俺がどうなっているかというと……。




「あうあうあう」


「まあまあ、アーカリアはおしゃべりが上手ねぇ」



 全力で無垢な赤ん坊のフリをして、母と呼ばれる存在である美女と過ごしております。





 ここからどうなっていくかはわからないが、とりあえずとても家族仲の良い家族に生まれ落ち、愛されて育っている。


 夢枕に幼女女神なオムニア様が立って、


「名前、上手く伝わらなかったのじゃ……」


としょぼんとしていたのを慰めた事を何となく覚えている。


 どうやら『オマケ』として俺の名前をアカリにしようとしてくれたと知って、目が覚めた時に笑ってしまった。

 それを目撃した父と思われる男性が、自分を見て笑ったととても喜んでいたので、否定はしないでおいた。





 俺だってたまには空気を読む。





 異世界転移をあんなカタチで終わらせてしまった俺の異世界転生は、とりあえず平和なスタートを迎える事が出来たようだ。





 きっとこれは、主人公じゃない俺の、悪足掻きの物語となるだろう。

いつもありがとうございますm(_ _)m


タイムパラドックス? ナニソレ? となる結末となりました。


これからアカリはアカリなりに色々しでかし、3歳でアレクセイと再会して……、あれ? となると思います←


書ききれませんでしたが、風花と晴夜も3歳過ぎてからの合流となります。


何せ3歳までは『アカリ』生きてる事になりますので。


書きたいとこだけで書いた(ひねた独白シーンと死亡シーン)自己満足な作品にお付き合いありがとうございました!


実はこれは数年前にとあるたくさん所属してる系アイドルさんの曲を聞いてて思いついた作品です。そこから数年かけてちまちま書いてて、最近ガッと最後まで書き切りました。

なので途中の作風も何か怪しいし、キャラの名前も忘れて大変でした(笑)

ちなみにその曲は…………まぁ恥ずかしいので語らないでおきます(*ノω・*)テヘ


即バレそうではありますけど(笑)

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