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来週も、君に会いたい

作者:reika1021
最終エピソード掲載日:2026/10/16
毎週金曜日になると、会う約束をした覚えもないのに、いつの間にか同じ人と食事をするようになっていた。

水瀬紬、二十七歳。Webメディア企業で働く彼女には、友達と呼ぶには近すぎて、恋人と呼ぶには何かが足りない男がいる。青木律、二十八歳。かつて同じ会社で働いていた元同僚で、今では職場も違えば会い続けなければならない理由もない。

それでも仕事帰りには恵比寿で食事をし、休日には代官山を歩き、眠れない夜にはどちらからともなく電話をする。互いの好きなものも苦手なものも、疲れた日の声も知っている。相手の部屋で飲み物の場所を探す必要さえないほど近いのに、手をつないだことは一度もなかった。

紬には、自分がいつ律を好きになったのか分からない。ただ、いなくなるところだけが想像できなかった。律はもっと早くから紬を好きだったし、彼女も同じなのだとどこかで信じていた。

だから、言わなかった。言わなくても、来週は会えると思っていたから。

そんな金曜日の帰り道、律が何気なく口にする。

「来週の金曜、俺、無理だから」

それだけだった。誰と会うのか、どこへ行くのか、仕事なのか、それとも自分の知らない誰かなのか。紬の中にはいくつもの質問が浮かぶのに、ひとつも声にならない。

恋人ではない自分には聞く理由がない、そう思った瞬間、今まで当たり前だった距離が急に頼りなく見えた。

好きだと認めれば、今までの関係には戻れない。それでも何も言わないままなら、もっと遠くへ行ってしまうかもしれない。近くにいることを選び続けてきたはずなのに、気づけば互いに一番大切なことだけを避け続けていた。

東京の夜を何度も並んで歩きながら、それでも越えなかったわずかな距離。友達という名前に隠してきた恋が、いつもの金曜日を失ったところから静かに動き始める。これは恋に落ちる瞬間を描く物語ではなく、気づいた時にはすでにそこにあった恋を認めていく物語だ。

何年も「また会けたら」で済ませてきた紬が、いつか自分の意思で次の約束を口にできるまで、その言葉を聞いた律が曖昧な優しさではなく自分の気持ちを返せるようになるまで、互いが守ってきた名前のない関係にようやく本当の名前を与えるまでを描いていく。

来週も、君に会いたい。
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