6/6
カルテ06
朝まで、わたしは何度も彼の病室を訪れた。脈を取る以外は、もう彼に触れなかった。朝一番に彼の母が来た。
最期は彼の母親に看取ってもらいたい。
最期のキスから2日後。涙を溢す母に手を握られ反応はなくても、きっと最後の最後まで母の呼び掛けは聞こえていたはずだ。わたしは、彼の最期のとき、ドクターの傍にたちモニターを見詰めていた。寝ているのかと思うほど、穏やかな最期だった。
「サチュレーション振れません」
彼の耳に届いたわたしの最期の言葉は、なんとも味気ないものだった。別れの挨拶は、あの夜に済ませてあったから。彼が応援してくれた看護師として、彼の最期に向き合った。彼と母親を見送り最後のカルテを記入した。そして彼の名前を、そっと指でなぞっていた。
初めてのチャレンジ「悲恋」でした。
拙い作品と思いますが、完結まで書き上げることができました。
長岡更紗さま、素敵な企画に参加させてくださりありがとうございました。