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暁の芽吹 -レスティン・フェレスⅠ  作者: Ruri Lesewolf
Episode21「雨の日の病室」
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㉑-4 夜汽車②

 予想通りの彼女の回答に、アルベルトは頭を抱えるしかなかった。

 罪悪感の次には、あらぬ妄想が込み上げてくる。

 目の前にいるティニアは、相変わらず何が起きているのか全く分からない様子だ。


(こいつ、マジで何もわかってない……)


「どしたの?」


 首を傾げたティニアは、再び不用意に開かれた胸元をちらつかせる。アルベルトは感情の高鳴りから慌てて布団を押し付ける。


「服! 脱げてるから……」

「ん、あれ。どうしたんだろう、これ」

「ああー、レオンが苦しいだろうからって、ボタンを緩めていたんだった……! あの野郎……」

「大胆なことするじゃん」


(こいつ、マジでわかってないのか……?)


 大胆という言葉に、違和感を覚える。わかっていてやっているのなら、とんでもない奴である。


「まあワンピースだし、いっそ脱がせればいいのに。中途半端なことするね」

「それはさすがにレオンを〆る」

「なんでだよ!」


 声を出して笑うティニアはいつも通りであり、変わったところは見受けられない。

 彼女の真の名は、レンであると聞いている。

 

 あのまま全てを聞いていたとしたら、ティニアを傷つけてしまったかもしれない。

 マリアが話を止めたのは、正解だったと言える。

 ティニアにも、何か理由があるのだろう。


 それに、彼女はまだアルベルトの名を呼ぼうともしない。

 呼ばれたのはたった一度きりだ。そして、そのまま口喧嘩をしてしまった。


 俯いたまま考え込んでしまったアルベルトに対し、ティニアは苦笑いを浮かべた。


「君、雨に打たれたの?」

「あ、ああ。椅子を置いてきてしまったからな、ゲオルク修道院前に」

「ゲオルク、修道院……。なんでそんな所に」

「覚えてないのか」

「え?」


(だから、ボタン……!)


 慌ててボタンを閉めようと、彼女の胸へ手を伸ばした時、病室の扉が開いた。途端に硬直したレオン医師は眼鏡を正すと、恐る恐る振り返ったアルベルト、そして見上げたティニアへ一言告げる。


「ここで何をやっているのですか!」

「いや、これには深い訳があって……」

「ティニアさんまで、一体何をしているんだ!」

「何ってなに? なんかボタンが開いてて、中途半端だから脱いだらいいじゃんとは言ってたけど」

「お前! そういう誤解されるようなことを!」

「二人とも、元気ならすぐにここを出てください。ここは診療所ですよ!」


 レオンの荒げる声に、ティニアは納得いっていない様子だ。


「アルベルトは風邪を引いたみたいだから、診療所で入院したいって」

「なんでそうなる! 俺は帰って寝るぞ」

「寝るのかよ。また僕を抱き枕にしたいの?」

「君たちは何をしているんだ! 何度も言わせないでください。早く出ていきなさい。他の患者に迷惑ですよ!」


 怒るレオンの後ろから扉が開き、アルビノの少女が顔をひょっこりと出した。口元に手を当て、衝撃的な現場を見たかのように目を大きく見開いた。


「きみ! 起きたんだね!」


 ティニアは顔を乗り出し、嬉しそうに笑みを浮かべた。

 対してアルベルトは何が起こったのかわからず、狼狽える。


「おねえちゃん、だれ……?」


 透き通るような、幼い声がした。

 少女は虚ろいだ瞳に、煌めきの蒼を宿した美しいアルビノであり、その長い白髪を揺らした。

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