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2943  作者: 平野むら
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1-1-2

ついて来てはみたものの…人里だというのにこれはどういうことだ…

「あれ、下りて来たんけ。」

「…飯をありがとう。」

「あんれ~、むぞらし!」

「…その、むぞらしって何。」

「可愛いなぁて意味だで。」

「またか…」

「え?」

「いや…ここはどうしてこんな事になっているの。」

「ここらの者は皆、病に侵されてね。」

「だからって、なんで家々が燃えてしまったの…」

「病気で畑仕事もできず、年貢を収めきれなくて…皆焼けうちにあったんだ。」

「そんな…」

「私らは山暮らしのお陰で不自由でもあるけど、病も(まぬが)れられてね。」

「…」

「焼うちにあってからは病もなくなった。」

「え?」

「あの人をご覧。病になって床に伏してたんだけど、焼けうちにあってもなんとか生き延びてね。焼けた家が煙で(いぶ)されて虫もつかなくなったのと同じ様に、病も燻されて(おさ)まってしまったんだと。」

「お里さん、よう来んさったね。」

「火傷はどうね、薬草の塗り薬は効いてるかしら。」

「えぇ、膿も治まったし調子えぇよ。」

「よかった。今朝のご飯の残りだけど、よかったら。」

「いつも悪ぃねぇ…。今日は喋り方も上品になって、どげんしたつ?」

「あぁ、この子が居るからついね。えっと、名前は…」

「染一。」

「染一!むぞらしかこつ!」

「ほんに、むぞらしいねぇ。」

「なんで病は治ったの。」

「あぁ、咳こんでばかりいたし、熱も下がらず、赤い発疹が身体中にあった。でも何ものうなった。」

「やっぱり、煙で燻されたのが効いたのかねぇ。」

「わからねぇけど、煙も不思議と煙たくなくてな。身体中に煙がまとわりついて、守られている心地だった。」

「煙…その煙はどんな色していたんだ。」

「それがさ、きらきら輝いてて、陽の光の中に居る様な心地でよ。みぃんな同じこと言うてたな。」

「…なるほど。」

恐らく龍王様のお力だ。ということはこの土地は龍王様の島ということだな。確か…宮崎の高千穂辺り…

「神のご加護があったのよ。お夏さん、生きていてくれて本当によかった。」

「そうね、高千穂神社には暇さえあればお参りしていたからね。高千穂峡も涼しいから、この暑い日なんかは本当に有り難い場所になるのよね。」

あぁ、間違いない。高千穂峡、あの渓谷に住まわれているんだった。龍王様も仕事熱心だな。

「それじゃ、また来るからね。」

「…ここに残る。」

「え?どうして…」

「世話になった。それで、神社へはどうやったら行ける。」

「そこの坂下って右に見えてくる。」


確かこの神社には…

「染一でございます。ニニギノミコト様どうか御声(みこえ)をお聞かせください。」

『染一と申す者よ、(われ)にて何を得る。』

「ニニギノミコト様のお力は存じ上げております。叶うのであれば、この土地の五穀豊穣を願っております。」

『そうか。その願い、聞き入れよう。』

「…一つ伺いますが、アマテラスオオミカミ様は今どちらへ…」

『そなた、この世の者ではなかろう。』

「いえ、どうやらこの世が初めてなようで、右も左もわからず…皆様のお力を賜りたく。」

天岩戸(あまのいわと)にて(さぐ)るがよい』

「ありがとうございます。皆様のますますの御多幸(ごたこう)をお祈り申し上げます。」


危なかった…さすがニニギノミコト様、私が青龍であったこと…いずれ神々に知られる時がくるだろう。

天岩戸…以前、アマテラス様がお隠れになったことがあったな。


天岩戸神社ーこの神社が(まつ)っているのだな…。

随分(ずいぶん)と遠いな。ここからでは岩戸には近づけん。

岩戸の右手にも神社が…あちらへ行ってみるか…。

「そこの小童(こわっぱ)、どこへ行く。」

この者達からは、何やら良くない気を感じられる…。

「声も出ぬか。」

「参拝へ行くのです。」

「参拝?それが為、俺に頭も下げず横切ろうと言うのか。」

難癖(なんくせ)か…この者、殺気立っている。

「今すぐ土下座するべきだろう!(ひざまず)け!!」

ここまでか…

「ちぃぇぇえい!」

ザシュ…ッ

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