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「畑さん行っき来る。」
「気をつけて行ってきないよ。」
「今日もがまだせ~。」
「えらいあちーわ。」
「…」
「がんたれ!うちんげで何しちょる!」
「…グゥ~…」
「腹減っちょるとか。」
「…」
「おらん家来んね。」
「…」
「あら~もじょか!」
「…」
「うちん嫁じょ。おい、飯。」
「いっちゃが。」
「わい、名は?」
「…」
「知っちょる子?」
「だいや。」
「はぶてるのかね?」
「うんにゃ、そうじゃねえ。」
「…」
「うめぇか?」
「…コクッ。」
「そら~いかったいかった!」
私は…人として生きているようだ。しかし…手も足も小さいな。これはまだ子供ということか。
腹が鳴っている…人間とはこうも腹が減るものなのか。
口も乾いてきている…そこの川で満たそう。ゴクッ…ゴクッ。腹は満たせんようだな。
さて…赤子の頃の記憶はないが、朝から記憶が蘇ってきた。どうやらこの山に置いて行かれたようだ。
ここまで育って捨てられてしまうとはな…やはり人間とは勝手なものだ。
産みの親は記憶にない…昨晩からこの山に居るのはわかっているが…そんなことはもうどうでもいい。
この人生は、彼女に会えないような人生なんだろうか…現状を見ても困難な事は確かだな。
まずば腹を満たさねばどうにもならん…足というのは動かしにくいものだな…だがどうだ、この長い腕はなかなかに役に立ちそうだ。
人間の動き方は目にしている、しばらくすれば様になるだろう。
それにしても草木だけでは腹を満たせんな…人間の歯では木の枝をしゃぶることしかできない。
味覚というのも、ここまで過敏になるものなのか。さっきから口する物すべて、渋いの苦いのなんの…もっと美味いものはないのか。
なんだ、土が盛り上がって草が均等に生えている…人間の仕業か。ということは、これを育てているのだな?どれ、口にしてみるか…
「がんたれ!うちんげで何しちょる!」
おぉ、人間に会えたぞ。なにやら三叉の武器を抱えているな…ここは様子を見ながらいくとするか。
「…グゥ~…」
この状況でも腹は鳴るのだな…さて、どう動くか。
「腹減っちょるとか。」
どうもこの人間には浾湧と同じものを感じるな…
「おらん家来んね。」
…おらんげこんね、とは呪文か何かか。まぁいい、敵意は消えたようだ。ついて行くとしよう。
「あら~もじょか!」
今度の呪文はさっぱりわからんな。
「うちん嫁じょ。おい、飯。」
ほぅ、嫁が居たのか。おまけに何か食べさせてくれるようだな。
「いっちゃが。」
「わい、名は?」
名…私に名などあるのだろうか。あの生みの親に名を呼ばれた記憶も残っていない。
「知っちょる子?」
「だいや。」
「はぶてるのかね?」
「うんにゃ、そうじゃねえ。」
腹も満たした…ここからどう動くべきか…
「うめぇか?」
あぁ、うまかった。世話になったな。
「そら~いかったいかった!」
「うち、山ん下りてくる。」
「ほーか、頼んじゃい。」
山を下りる…その方が良さそうだな。ついて行ってみるか。
「おい、清厳。」
「…!」
「案ずるなかれ、わしじゃ。」
「…龍王様!」
「うむ。」
「なぜこの様なことが…」
「わし位になると、人の身体を介して念でなんとでもできるのじゃ。」
「そうでしたか…」
「して、お主もとんでもない始まりを強いられておるな。」
「予想外と言いますか、その、記憶が今朝あたりから蘇っていましてね。」
「ふむ。実はな、お主が産み落とされた辺りから様子を伺っておった。」
「過保護ですね…」
「龍界から初の人生じゃからな。どう転ぶか見ておったわい。」
「こんなところに転がり込みました。」
「まぁ、まずまずと言ったところか。」
「産みの親の記憶がないのですが、問題ないでしょうか。」
「問題とは?」
「その…親が彼女だったりとかしなかっただろうかと…」
「ないな。」
「即答ですか。彼女を知りもしないのに…」
「フォッフォッ、そう焦るな清厳。」
「あと、私は名を付けられたのでしょうか。」
「おぉ、そうであったな。清厳とは青龍だったころの名。今生の名は染一じゃ。」
「染一…」
「して、これからどうする気じゃ。」
「わかりません…先程の嫁について山を下りようと思っていたのですが…」
「山を下りるか…それもいいかもしれんな。」
「…何かあるので?」
「行けばわかるじゃろう。」
「わかりました。」
「わい、なした。」
「…山を下りてくる。」
「お~、喋れんのけ!行って来い!」




