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2943  作者: 平野むら
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37/40

1-3-16

2943イメージソング

https://youtu.be/yrc1oGmkcak

熊本での大きな地震があってから数日、余震はまだ続いていた。

実際、余震の影響で俺たちの乗る飛行機も、飛ぶかどうか直前まで分からなかった。

「やっと乗れましたね…飛んでくれてよかった。」

「本当に、飛ばないんじゃないかって思ったから、新幹線の時刻表見てたりしたよ。」

「私も、バスとか、なんならタクシーだって考えちゃいました。」

「これで行きは何とかなったから、助かった。帰りはどうとでもなる…って、咲ちゃん仕事大丈夫?」

「はい、有給たくさん残ってたので、思い切って一週間お休みもらっちゃいました!」

「それは思い切ったね…でも、御実家が熊本なら、ゆっくり帰省できるかな。」

「少しだけ実家に顔出して、あとは彰さんと共に行動する予定ですよ?」

「そうなの?俺はてっきりライブだけ一緒で、後は別行動かと…」

「冷たいですね、彰さん…」

「いや、そういう訳じゃなくて…付き合ってくれると嬉しい。」

「え…?」

「え?」

「付き合って…って、あ…熊本観光ですか?どこか行きたい場所ありますか?」

「うん、恵さんが子供の頃に行っていたっていう神社。池があるんだったよね?」

「あ、はい…その、咲さん達にもお話してたのですが、子供の頃に姉とよく行ってた神社なんです。」

「うん、咲ちゃんが興奮気味に話してくれたよ。恵さんのお姉さんが、池の傍で歌ってたんだ、って。」

「はい…」

「正直、俺の探している女性とは違うと思ってる。多分、時代が違うから…」

「そうなんですか?」

「うん。」

「じゃあ、なぜ神社に…」

「俺が…住んでた神社かなって…」

「え…?」

「あー…俺のばぁちゃんが住んでた近くの神社かなって。そしたら、子供の頃に会っていたかもしれないしね。」

「あぁ、おばあ様の、そうですね、同じ神社だといいなぁ…」

「いろいろ楽しみだな。」

「…RUMIについて、詳しくお調べになりましたか?」

「いや、特に調べたりはしてないかな。とにかく歌声に惹かれてて、何度も同じ曲を繰り返し聴いてるよ。もうファンみたいなもんだね。」

「そうですか…繰り返し聴いているのは、あの時流れてた曲ですか?」

「うん、いろどりって曲。他にも曲はあるみたいだけど、今はこの曲がとても心地よくてね。」

「私はあまりRUMIの曲、予習してこなかったです…」

「ファンって訳じゃないんだから、当然だよ。俺自身、ライブに行くのは初めてだし、少し緊張してる。」

「今回のライブは簡易的なものらしいので、そんなに意気込む必要はないと思います。」

「震災後にすぐ現地でライブするなんて、すごいな。しかも、お金はとらないんでしょう?」

「はい。震災に合われた方向けのライブなので、宣伝もほとんどしていないみたいですから。」

「よくそんなライブの情報を知ってたね、恵さん。」

「えっと…偶然知れたといいますか…なんと言いますか…」

「恵さんのお陰で、こんな機会を得られたんだ、感謝でいっぱいだよ。」

「そんな、私は何も…」

「いつも、謙遜してばかりだな、恵さんは。」

「そうでしょうか…」

「そうだよ。いいことだけど、もったいないな。」

「…姉と同じこと言いますね、彰さん。」

「お姉さんからも言われてるの?」

「はい、私はいつも遠慮ばかりして損してるって。もっと、自分に素直に生きなさいって…」

「恵さんは素直に生きれてるよ。ただ…そうだね、遠慮しなくていい時も遠慮していては恵さん自身が可哀そうだなとは思うよ。」

「私自身が…」

「うん。周りを大事にするのと同じくらい、自分自身も大事にしてあげなきゃね。」

「自分を大事に…」

「恵さんが周りの人の幸せを願うのと同じく、周りの人も恵さんの幸せを願っているんだから。」

「私の幸せ…ですか。」

「俺も、その一人だよ。」

「彰さん…」

「そろそろ着陸態勢に入るみたいだ、シートベルトしなくちゃね。」

「…はい。」


「熊本上陸…っと、着いて早々悪いけどトイレ行ってもいいかな。」

「あ、ここで荷物見てますね。」

「ありがとう。」


「彼女の事、どう思ってるんだ清厳。」

「なんだよいきなり…」

「念願の彼女に会えるというのに、隣の彼女にまで気があるとはな。」

「俺の心の内は複雑なんだよ。」

「想い続けてきたお前の心はそんなにも心変わりしやすい想いだったのかと、少々呆れているんだ。」

「…人間ってのはな、そういう生き物なんだよ。」

「知ったような口をきくようになったじゃないか。」

「そんなことより、だ。俺が龍だった頃の住処は熊本の神社の池だ。そこに行けるかもしれない。」

「…お前が居た頃とは様子が違っていると思うがな。なんせ、別の龍がお前の代わりをしているという話だったしなぁ。」

「あぁ、俺の居た池に新たな龍が住まうとも限らんしな。まぁ、行ってみる価値はあるだろう。」

「龍王様の地起こしも、なぜ熊本だったのか分からんしな…考えつく場所はその池くらいなもんか…」

「そうだ。宮崎だったなら、龍王様の居た高千穂神社一択だったが…熊本となるとな。」

「以前のままだろうか、清厳神社だったか?」

「大体の神社仏閣は昔から変わらないだろうが…恵さんは、池に川が繋がっている神社だと言っていたし、違うのかもしれないが…」

「川が…」

「あぁ、珍しいと俺も思って調べてみたが…清厳神社なんて検索しても何も出てこなかった。」

「行く意味はあるのか?」

「分からない。池と川があるなら、別の龍が居たっておかしくない。話を聞いてみることくらいはできるかもな。」

「ふむ。」

「ま、着いてからのお楽しみってことで…」

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