1-3-9
2943イメージソング
https://youtu.be/yrc1oGmkcak
残り二日、彼女に出会う為の策はない。
「この懐中時計、もう時間がずれてる…こまめに回せってか。」
チッチッチッ…真ん中の赤い石は、あれからずっと輝き続けている。
気が入った石…あいつ、火を噴くだけの脳しかないんじゃなかったか…
「エドワルドのやつ、案外可愛いとこあんだな…」
こいつをどう活かせばいいのか分からんが、何か使いようがあるんだろう。
『何をぼんやりしている清厳、一刻も早く動かねばならんだろう。』
「今考えてんだよ、俺のペースでやらせろっての。」
行き詰ったな…あいつらに頼るか。
「もしもし、俺だ。ちょっと考えが行き詰っているんだ、知恵を貸してくれないか。」
「人を呼び出しておいて遅刻とは、いい度胸だな彰。」
「いつものことだろ、慣れろよ。」
「そうだよ、彰くんには沖縄の血が流れてるんだから、沖縄時間なのっ!ねーっ彰くん。」
「ほんと、驚きだよな。なんで今まで黙ってたんだよ。」
「話す機会がなかっただけで、黙っていたつもりはないよ。」
「方言とか出ないよね、あ、沖縄で暮らしていたわけではないんだもんね。」
「あぁ、俺は訛りはない。ばぁちゃんは死ぬまで訛ってて何言ってるか分かんなかったなぁ…」
「ふぅん。」
「なに拗ねてんのよ、彰くんの知らない一面が見れて嬉しいじゃない。」
「そんなこたどーでもいいよ、それよりどんな知恵が必要なんだ?」
「…ある女性を探している。名前も顔も知らない…記憶にあるのは歌声だけだ。」
「探す手がかりが声だけって…いくらなんでも無謀だろ。」
「しょうくん!ちゃんと真剣に聞いてよ、彰くんが珍しく女性の話をしてるんだよ!」
「…」
「彰くん、その女性のことが好きなの?」
「…そう、なるのかな。」
「なんだよハッキリしねぇな、好きでもなければ探さねぇだろ。」
「しょうくん!」
「昔の彼女の記憶しかないんだ…上手く説明できないけど、好意は持っている。でも、今彼女がどんな顔をしてどこに生きているのかも分からない。」
「彰くん…」
「…辛気臭ぇ顔すんなよ、ちゃんと考えてやるから。」
「任せて、私もしょうくんも彰くんの力になりたい!それに、恋愛の話なら張り切っちゃう!」
「ありがとう。」
「昔、どこで彼女と出会ったの?」
「…神社の池で。」
「場所は?神奈川で?」
「…熊本。」
「お前、いつ熊本行ってたんだよ。」
「…まだ若かった頃だよ。」
「あははっ、まだ私達二十代、若い方でしょ?」
「…子供の頃ってことだよ。」
「ふぅん…俺の知らないところで熊本の神社に行って何してたんだよ。」
「…ただの家族旅行だよ。うちの親、信心深いから旅行先で必ず神社参拝してるんだ。」
「そうなんだぁ、私と話しが合いそう!」
「それで?」
「…池で彼女が歌ってたんだ。」
「かわいいねー、どんな歌だった?」
「…誰かへの愛を歌っていた、と思う。」
「曖昧な記憶だなぁ、おい。」
「しょうくん!…それで、彼女が歌っていたのを近くで聴いていたの?」
「…少し離れたところで聴いていた。」
「声は、かけなかったんだね。」
「あぁ…」
「そんで?可愛かったんだろ?」
「あぁ…」
「じゃあ、一目惚れだ!きゃーっ!」
「咲、あんま大声出すなって…」
「あ、すいません、同じアイスコーヒーおかわりで。」
「彰くんが一目惚れするなんて、よっぽど可愛くて歌声も…可愛かったの?」
「…可愛いというか、美しかった。」
「えーっ!子供の歌声が美しいだなんて、賛美歌を歌う聖歌隊みたいな感じかなぁ?」
「いや、そんなんじゃないけど…俺にとっては美しいという表現がしっくりくるっていうか…」
「その可愛子ちゃんが、誰かへの愛を歌ってたってんなら見込みなしじゃねぇの?」
「…そうかもな。」
「しょうくんってば、デリカシーの欠片もないんだから…」
「それでも、会いたいんだ。」
「そうなんだね!うんうん、子供の頃の想い人なんて今も想ってるかどうか分からないじゃない!女心は秋の空とか言うし!」
「秋の空か、今台風がいくつか接近中だって言ってたし、この台風たちが過ぎ去ったら秋だな。」
「もー、しょうくん関係ない話しないで真剣に話聞いてよねっ!それに、まだ七月なんだから過ぎ去っても八月が残ってるわよ!」
「…台風か、いつ来るんだって?」
「今朝の予報では、明日明後日辺りには関東も暴風域に入るってさ。」
「明日明後日…どうするかな。」
「え?」
「…何か用事があったとか?風が強いみたいだから、あんまり外出はおすすめしないよー?」
「ちょっと海の様子を見たかったんだよ。」
「海に行くの?!ダメだよ!危ない!」
「海バカはこれだから…別に台風過ぎ去った後でもいいだろ。」
「…」
『行くのだな、清厳。』
「お仕事熱心なのは分かるけど…海の素晴らしさを知っているのなら、怖さも知っているでしょう?」
『あの女性が、彼女かどうか確かめたいのだな。』
「…」
「ダメだ、こいつ行くよ。」
「彰くん…」
「…」
「分かった、俺も行く。」
「…二人でなんて、何かあったらどうするの?」
「お前も来るんだよ、咲。」
「…」
「ただし、当日の海の様子を見て判断するぞ。俺がダメだといったら海に入るのは無しだ、分かったな。」
「…分かった。」
「んもう…しょうがないんだから…」




