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2943  作者: 平野むら
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1-3-7

2943イメージソング

https://youtu.be/yrc1oGmkcak

ここは人間の間でも有名な神社だったな。

「参拝客は女ばかりか…」

女好きの潢彩としては、居心地のいいことだろうよ。

『よく居場所が分かったな。』

「こんなに近いのに、今まで一度も来たことなかったな。」

『なんて信仰心のない奴になったんだ、清厳。記憶が戻って改心したか?』

「どうだかな…そんなことより、どうしてこの懐中時計に宿ったんだ。」

『お前が目覚めたとき、私の力が必要になると思ってね。それに、そいつはただの飾りじゃないぞ。』

「飾り?この赤い石のことか。お前の声がしてから、ずっと光り輝いて見えるんだ。」

『その石にはあいつの気が入っている。』

「気?…あいつってどいつだよ。」

『ふふ…もう忘れたのか?』

「…」

裏蓋(うらぶた)を開くと文字が書かれている…William(ウィリアム)Thomas(トーマス)…人の名前か。

「アメリカ…イギリス…赤…っ!エドワルドかっ!」

『ご名答。』

「あいつの気が入っているなんて…でも、なんで俺の手に渡ると分かったんだ?奇跡に等しいだろう…」

『これもご縁だ。』

「…なんてこった…しかし、この輝きはさっきからだ。こんな風にずっと輝いていたわけじゃない。」

清厳(おまえ)の気配に反応したんだろう。今まではただの人間だったわけだからな。』

「今だってただの人間だよ…」

『あいつ、お前の不在にひどく落ち込んでな。事情を話したら興奮していた。』

「だからって、こんな石に気を入れてどうするんだよ。」

『お前に力をくれるだろう。離れていても、共に在らんとしているんだ。』

「…あいつはあいつのまま、元気にしていればそれでいい。」

『あいつもお前と同じ気持ちで居るだろうな。会えば自慢ばかりしているが…』

「変わらないな。そういえば、ひとつ前の人生で湠渓に会ったぞ。」

『何?この僕を差し置いて…協力してやれんぞ清厳。』

「待て待て、会っただけで嫌味言われて終わりだったよ。」

以前呟いていた言葉の意味もようやく分かった。あいつ、ストーカーだのマザコンだのと…言いたい放題言ってくれたな…

『なんだ…いつも通りか。それで?その人生では彼女に会えたのか?』

「いや…その前に死んだよ。」

『なるほどな…あの泊渼でも、お前たちの縁を繋ぐことは出来なかったわけだ。でも、僕ならできる。』

「何を根拠に…あぁ、縁結びの神ってやつか?お前も随分持ち上げられたもんだな。」

『実際、縁を繋いでいる。全てではないが、繋ぐべき縁は繋いで(しか)るべきだろう。』

「その判断基準は何なんだよ。」

『縁とは、初めから決まっている。それは、産まれ死に、再度転生してからも…だ。』

「しかし、アマテラス様が言うには、人間の御霊が寄り集まる場所が天界にあって、そこで次に送る人生のあらすじは大体決めてしまうと…俺も次に生まれ変わる時にはその場所へ行っていいと許しを得たのに…行けたのか?行けていたとして、人生のあらすじの内容を思い出せないが…」

『それは当然のことだ。人間は、転生したら全ての記憶を忘れてしまう。人間には記憶の限界があるのだろう。』

「…人間になりたての頃、俺が自力で記憶を蘇らせていたのは龍だった頃の記憶のみ…その後の人生では、皆の力で全ての記憶を取り戻していた。」

『普通の人間ではそうはいかないぞ。お前が龍だったということ自体が重要なんだろう。』

「そうか…」

『だが、次に転生できたとして、またそう上手く思い出すことができるかどうかは分からないだろう。』

「あぁ…その通りだな。」

『だからこそ、今回の人生でお前の念願を果たすべく僕の力が必要だろうって話だよ。』

「力を貸してくれるか、潢彩。」

『任せろ、君達は繋がる運命だ。』

「本当か…っ!」

『出会った時のことを思い出してみろ、それは運命の始まりにすぎない。』

「運命の始まり…」

『彼女がお前の住まう池で歌っていたことも、お前が彼女に魅せられてしまったことも、全ては決まっていたのだ。』

「…俺がこうして人間になることも、決まっていたのかもな。」

『違いない。それも全ては神の思し召し(おぼ め)なんだ。感謝を忘れるな、清厳。』

「あぁ、感謝は人間の大事な仕事だと思う。」

『仕事…か、そうなると感謝せずに人間は生きれないな。』

「そうだ。非力な人間に出来ることなど限られている、それを人間は思い知るべきなんだ。」

『…』

「そうすることで、限られた力を十二分に発揮できるはずだ。」

『それもそうかもしれないな。』

「そう、湠渓にしつこく言われていた。」

『流石だな…』

「それで?俺がお前に参拝すればいいんだな?」

『そうだなぁ…それも必要だが、神水を飲んでいけ。』

「御神水ねぇ…」

『なんだ、疑っているのか?』

「人間ってのは皆が皆、信仰心を持っていると思ったら大間違いだぞ、潢彩。」

『分かっている。だが、僕を前にして言うべきではないだろう、失礼な奴だな。』

「悪い悪い…人間になって、性格が一層(ひね)くれてしまったみたいだ…二拝二拍手…っと。」

『様になっているじゃないか。』

「…そんで、一拝っと。次は御神水を飲むんだな。」

『まぁグイっと一杯やってけ。』

「酒じゃねぇんだから…ゴクッ…」

『どうだ、染みわたるだろう。』

「ただの(ぬる)い水だよ…これでいいんだな?」

『あぁ、これでいい。後はお前次第だぞ、清厳。』

「分かってるよ…動き出せばいいんだろ。…必ず見つけ出して見せる。」

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