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前世オタクの私が魔法少女は解釈違い!  作者: 天氷岐 久音
それでも世界の危機というならば

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第67話 後輩たち 友人たち

研究所でのヒアリングは二時間ほどで終わった。というか、長くなりそうだったので、質疑応答はヒアリング内容を整理してから後日に、ということで、キリのいいところで切り上げることになった。


これまでの夢でも、研究の内容のようなものはチラホラあったのだけど、今回見た夢では、それらがまとまった研究発表として出てきただけに、研究者の人もだいぶオカシい……じゃなくて興奮した様子だった。

同席した久我原さんは久我原さんで、難しい顔をしていたよ。

この夢が、もし境界層の向こう側のことだとすると、色々と考えるところがあるのだと思う。難しそうなことは、お任せだ。


次の予定であるトワイライトパレスの事務所へは、特災庁の車で送ってもらえることに。さっき、駅まで迎えにきてくれていた車だ。

運転手さんともすっかり顔馴染みになっている。スーツに身体がみっしり詰まってる感じの人で、動きがとてもキビキビとしていて格好いい。

どう見ても警護の人だよね!


ローテーション制度が軌道にのってから、円卓メンバーにはそれぞれ、専属の警護チームが常時つくようになったんだよね。

といっても、身近にずっと張り付いているわけじゃないけど、魔法少女として公的に移動する時とかは、扉がとても分厚い公用車が用意されるし、前後に警備チームの車が何台もつく。どこの要人だよ、て感じだ。

魔法がある程度体系化されて分類されたことと、チーム制度がうまくいってることで、一部の換えが効かない魔法少女の重要度が改めて認識され、その上で様々な事情を考慮してのことだと、新崎局長から説明された。

本当は電車移動もあまり望ましくないらしいのだけど、使う人が少ない今のうちだけなら、と普段はあまり目立ちたくない私の希望を汲んでもらっている。万が一何かあったとしても、私だけならなんとでも切り抜けられると思うのだけど、そういうことではないらしい。

むぅ。


地下駐車場から上がって事務所に入ると、入り口奥の打ち合わせスペースにいた、小ぶりなツインテールの中学生がこちらを振り向いた。


「黒塗りの高級車が二台も地下に入っていって何事かと思ったら、チェネステ先輩でしたか。重役出勤、て感じでなんか所長より偉そうですね」

「今度一緒に乗る? ふかふかのシート、めちゃ眠くなるよ」

「私を殺す気ですか?! セラ様かヴァイセ様と乗っていやがれくださいです」


キャンキャンと吠える子犬を連想してしまうこの後輩は、魔法少女サエッタ・カヴァリエーレ。一年ちょっと前にトワイライトパレスへ加わった。歯に衣着せぬ感じのキレのあるツッコミを放ってくる面白い子だよ。

今も、先輩は自分の人気を自覚しやがれです、とか言いながら、配信ブースに入っていった。

魔法への探究心がすごいので、後輩の中では会話する回数が一番多いかも。


そんなサエッタの他に後輩があと五人、今やトワイライトパレスは魔法少女八人が所属する中堅規模の事務所だね。メイル姐さんも、まだ現役。

最近は遠方、海のある区域への遠征が増えているため、文字通りに水を得た活躍ぶりだ。海ならシャイニースター以上という評は、誇張でもなんでもなかったよ。ヤバい。

今日も境界層内遠征で留守の模様。


予定表をチェックしたら、他の後輩たちはみんな研修に行っていて留守みたい。今事務所にいるのは、サエッタと私だけか。


さっき配信ブースに入ったサエッタは、公認登録から半年かからずにローテーション入りし、初ローテでポーン級二体駆除、ルーク級駆除アシストで初陣を飾るという、鮮烈なローテーションデビューを果たした。

最近、ローテーション制度実施以降に公認登録された魔法少女は紅組と呼ばれているらしいのだけど、今や紅組トップファイブの一人と言われている。


なんだけど、ちょっと舌鋒鋭すぎるところがあるんだよね。

研修所でマウント取ってきた大手事務所のやつがムカついたので、最速で研修終わらせて、鼻で笑ってやりました、ザマァ。とか研修修了直後の配信で言って炎上したのはどうかと思う。

あと、そのすぐ後の鮮烈なデビュー戦で、「これはチェネステ以上では?」みたいなコメントに、あっちはデビュー前のスタホワ時代、変身せずにポーン級を狩ってたバケモノなんで言い過ぎです――って返しは、すごくどうかと思う。

思うけど、サエッタに言うと、十倍くらい言い返されるんだよなぁ。口が立つって強い。


「あら、早かったですね。ヒアリング、もう少しかかるかと。メッセージは見ました。灰月さんについては、もうしばらくは様子見ですね」

「ですか」


執務室に入ったら、間宮所長がいた。あ、ノックは忘れてないよ。

研究所でのヒアリング、いつも、まぁまぁ遅い時間までやってるからね……。


「この件については、近々、動きがありますので、変に考えて余計なことしないように」

「あ、はい」

「お願いしますよ」


おおう、なんかぶっとい釘を刺されてしまった。はい。何もしません、静観します。

それからちょろっと、グッズ展開の話とか、夏のイベントに向けた色々な予定とかをざっと確認して帰寮することに。


学園の敷地内までは車で。寮にも車寄せはあるけど、さすがに目立ち過ぎるので、少し離れたところで降りる。門内に入ってしまえば警備は厳重だし、寮は学園敷地内だからね。

寮の門限は過ぎてるけれど、公認魔法少女は例外。ちょうど研修帰りの子たちが居たので、それに紛れるように寮内へ。いや、別に疚しいことは何もないけど、独り離れて入ると目立つじゃん?

集団にまぎれつつも、話し掛けられたりはしないように、ほんのり気配を消しておくのがコツだよ。


夕食は車内で済ませたので、皆が向かう食堂には行かず、階段を上がって自室へ。


ささっとシャワーを浴びたら、タオルで髪を乾かしつつ、明日の予定を確認。

約束の時間が近いので通話アプリを立ち上げると、机の上の充電スタンドから五センチくらいのカプセル型ドローンカメラがふわりと浮いて、顔の斜め前に来る。


「美宙、杏奈、元気?」

『こんばんは、あーちゃん。こっちは変わりないよ』

『おー! こっちもこっちも! 元気! あーちゃんも元気そうだね! あ、灰星シリーズの帽子買った!』

「ぉおう。お買い上げありがとう」


杏奈が「見て見て」と言うと、杏奈のドローンカメラが周囲をクルリと回って、頭にかぶっている薄めの迷彩柄のキャスケットを映す。


「おー、似合ってる、似合ってる」

『えへへ! ありがとう』


杏奈と美宙が使っているのも、私の顔を映しているのと同じ小型ドローンカメラで、魔法少女用の多機能ドローンから派生した民間モデルだね。これ、映像通話のためにスマホを手で持つ必要ないし、こちらの動きに勝手に追従してくれるから、今みたいに髪を乾かしながらでも映像通話できる優れもの。


この一年くらいで、魔法少女用のルミナ装備が一気に充実してきて、そこから派生した民生品も多い。

中でもドローンカメラは派生品が多く、配信者用のもっと多機能なモデルや、遠隔見守りに特化したものなど、色々なものが発売されている。


『灰星シリーズ、いいよね! 迷彩柄がこう、パステル系が多い魔法少女グッズと、ちょっと違う感がオシャレでさ。私の周りでも結構人気だよ!』

『ヴァイセさんのブルーダー&シュベスターシリーズとも、ちょっと違う層にウケてるみたい。というより、被らないように狙った? あーちゃんも、なかなかあざとくなってきたね』


それは誤解だよ美宙――と言えないんだよなぁ……競合を避けたのは確かだし。


「あざといくらいがちょうどいい! ……ってキルシュが言ってた」

『言いきれないところが、あーちゃんだよね』

『そこで日和るのがあーちゃんっぽい』


親友の理解が深い……!

けどなぁ、なんだよ、灰星シリーズって。何故売れる。

いや、ファン心理は分かる。

認めたくないけど、分かる。

分かるけど、分かりたくないというか……


『それより、あーちゃん。さっき公式から出た告知のフィギュアのシルエット、何? 何?』

『あ、私もちょっと気になった。チェネレントラ・ステラでも、灰星あーちゃんでもないよね?』


分かりたくないシリーズの話来た……


「うーん、あれはね。まだひみつ。しゅひぎむが、あるのです」

『んー、なら仕方ないか』

『私、なんとなくわかっちゃったかも……!』

『え?! 美宙、なになに』

『あーちゃんが困るから、言わない。杏奈も色々予想しながら発表を待つ方が楽しいでしょ?』

『それは確かに!』


美宙が杏奈を手のひらで転がしてる……さすが美宙ママ。

おっと、なんか美宙のジトッとした視線が。最近の美宙、ちょっとエスパー入ってない?


『けど、いろんな魔法少女のフィギュアが出るようになったよね! しかもだんだんサイズが大きくなってきてるし。嬉しいけどお小遣いがもたないよ!』

『フィギュア以外のグッズも、ここ最近、急に増えてきたよね』

「資源供給が改善してきて、生活必需品以外への供給がかなり増えてきたんだって」

『あ! こっちの地理の授業で、ちょうど出てきた話だ。へー、そうなんだ!』


そうなんだよ。

隔獣災害によって起きた物資不足の問題なんかも、国内に限っては急速に解消されつつあるんだよね。

魔法少女が活躍するその裏側で、色々な人たちが、色々な努力をしているのだ。

ただの魔法少女ファンだった頃や、一人でコソコソ活動していた頃には想像もつかなかったことを、円卓の魔法少女を二年近くやって、たくさん知った――


『なんか、あーちゃんが大人っぽいこと言ってる!』

『しみじみと背伸びしたい年頃なんだよ、高校一年生って。中学生の頃とは違う、って』


もう、なんだよ。

ちょっとくらいしんみりとカッコつけてもいいじゃないか!


「もう! 明日は早いから、そろそろ寝るよ!」

『うん、おやすみ。あーちゃん』

『あーちゃん、またね!』


いつも通りの、なんとも締まらないぐだぐだな感じに、ちょっとホッとする。


明日は平日だけど、学校を休んで、首都区近郊の特災庁防災拠点までお出かけだ。

ここ半年くらいずっと調整していた新装備の受領と実戦テスト。


ちょっとだけワクワクしつつ、おやすみなさい――

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