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前世オタクの私が魔法少女は解釈違い!  作者: 天氷岐 久音
まして主人公ポジとか間違いでしょ?!

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第49話 波紋

月曜日の学校は、ヴァイセ負傷の話題でちょっとザワザワしてた。


美宙と杏奈からは、あーちゃんグッジョブ、と言われて一瞬、なんで? となったのは許してほしい。

日曜日がちょっと濃すぎて、土曜日の記憶が遠かったんだよ。


いやー、メイルストローム姉さん、しゅごい。正直、ASMRってそんなにいいものか? とか思っててすみませんでした。

ちょっと囁かれただけで、一発で腰砕けになったよ。

深海でたわわなマーメイドに抱きしめられる光景が見えた。


尊敬のあまり、姉さん、と呼んでしまったが笑って許してくれたので、メイルストローム姉さん呼びになった。

うん、先輩よりも姉さんの方がしっくり来る。


メイルストローム姉さんとの初顔合わせはそんな感じで、和やかなお茶の時間になった。


出身は離島で、魔法少女に覚醒したのも故郷でのこと。その後、全島避難が決まり、首都区の近くに移ったそうだ。

魔法少女歴五年のベテランで、主な魔法は海を前提としたもの。ただ、現在の首都区は海から離れている上、境界層でも海がある区域はどこも遠いため、いまいち力を発揮できていないのが悩みだとか。


キルシュによれば、海ならシャイニースター並みに強いらしい。

最強か。


ポーン級やビースト級隔獣の実体化という事態が、ほぼ起きなくなっている現在、海の近くでの戦いがほとんどない。

沿岸の街でも、境界層に入ると海がなかったりするのだ。原理は謎。


人が住むのは陸という意識が強いから、なんて説もあるけれど、じゃあなんで境界層の風景は荒廃した街や荒野が多いのか、という点の答えにはなってないんだよね。


そんなこんなで、なかなか活躍の機会が巡ってこないので、せめてもと配信活動に力を入れてるそうだ。

ASMRも、セラピー的な効果があるとかで人気らしい。


なんとなく、涼木くんの方を見る。

たわわに抱きしめられるASMRを聞いてるんだろうか? ちょっと見る目が変わりそうなので、勝手な想像をするのはやめておこう、うん。


美宙さん、杏奈さん? そのジトっとした視線は何故。


「別にー」

「あーちゃん、鼻の下伸びてた!」


ええ、そんなことない……はず。

美宙も杏奈も、メイルストローム姉さんを前にしたら、分かると思うよ!?


 ◇


「あーちゃん、あーちゃん、今日予定されてた境界層ライブをほとんどの魔法少女が中止にしてるんだけど、ヴァイセ・ブリューテが負傷したっていうの、関係してるの?」


えーっと、これは答えていいやつなのか?


「中止の告知、理由説明してたりする?」

「あ、見てみる! んー、隔獣の行動変化が観測されたため、対応方針が決まるまで中止します、だって! なるほど、ヴァイセの配信で隔獣が複数同時に出た件だね!」

「うん、そうみたいだね。しばらくはバタバタするんじゃないかなぁ」

「あーちゃんは大丈夫なの?」


美宙が少し心配そうな顔。杏奈は、あーちゃんなら大丈夫でしょ、みたいな感じだね。

うん。


「大丈夫だよ。救援の時も二体、瞬殺したでしょ?」


キルシュの援護があればこそだけど、そこはね。

美宙と杏奈に、変な心配かけたくないし、援護なしでもポーン級ならね。


ビショップ級やルーク級が湧く可能性は常に念頭にあるから、油断はしないけれど。


「そっか。無理はしないでね?」

「無理にならない範囲は心得てる」

「それダメなヤツ!」


ええー、なんで?!


いやさぁ、どう考えても、この状況で今まで通りに対応できるの、セラ様、ルージュ、サニーレイン、ノワ様、あと私くらいだ。


無理をする気はないけれど、駆除対応数はできるだけ増やすつもりだ。

自分の健康を守りつつ、推しの睡眠時間確保のためにも。


「もう、本当に無理しないでよ?」

「大丈夫! 気力、体力充分だしね。もし今、警報が出ても即応バッチリ――」


教室中のスマホがアラートの不協和音を奏でる。


「……あーちゃん」

「あーちゃん、さぁ」


フラグ立てたつもりは無いんだけどな!?


「そんな目で見ないでよ! もう! 行ってきます!!」

「ん、気をつけて」

「あーちゃんファイト!」

「あーさん、気を引き締めてね」


おおう、委員長からも激励をもらってしまった。

廊下ですれ違う山中先生にも、気をつけてな、って言われたよ。


うん、気にかけてもらってる、ってことだよね。

油断せず、サクサク行こう。


魔法少女専用のアプリから特災庁に出撃をポチっとワンタップで報告。


警報が出たということは、特災庁の観測ポイントに隔獣が引っかかったということだ。

早ければ数時間で実体化する強度の隔獣だから、できるだけ迅速に駆除しないとね。

今回は接続点を通り抜ける前から変身して行く。


できるだけ早く避難解除になったほうがいいからね、サクサク行くよ!


 ◇


なんやかんやとバタバタするうちに週末を迎えた。


うん、忙しなかった。

私の住んでる区域での警報は一回だけだったけど、近隣……どころか、かなり離れた区域まで満遍なくカバーしたからね。


この五日で、セラ様、ルージュ、私が五回、サニーレインが四回、ノワ様が三回出撃した。


駆除対応を、複数体のポーン級と同時遭遇しても対処可能な魔法少女のみに制限する要請が、特災庁から各事務所に対して出されたこともあり、この五人以外の出撃は事実上の凍結状態だ。


グレイシャル・ムーンは、自分も対応できると主張したようだけれど、事務所が止めた。

アヴァロン、いろいろ言われてるけれど、ここで変に対抗心を見せて出撃させる事務所じゃないことには安堵した。


もっとも、そのせいで彼女の実力を疑問視する声がネットに上がってるらしい。ムカつく。

単に、単独行動には不向きなだけだ。

余裕があれば配信して、グレイシャル・ムーンがいかにすごい魔法少女なのか、みっちりきっちり語ってやるのに。


さすがに、連日、神経を張り詰めての出撃を繰り返す中で、境界層ライブ以外の配信までしている余裕はなかった。

境界層ライブは、ドローンの配信モードをオンにするだけで開始できるからね。


セラ様は、こんな毎日をずっとやっている上で、雑談配信も定期的にしていただいてたのか……

もう感謝しかないけれど、睡眠時間が心配すぎる。


土曜日の今日は、そのセラ様の要請で招集された円卓の非公式会合だ。

何の話だろう?


チームでのローテーション運用についてなら特災庁が招集するはずだから、今回は違う。

そちらはもう少し時間がかかるみたいだ。大人の世界は大変だな。


何にしろ、セラ様からのお呼び出しなら、万難を排して向かいますとも!


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