表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世オタクの私が魔法少女は解釈違い!  作者: 天氷岐 久音
まして主人公ポジとか間違いでしょ?!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/50

第45話 魔法少女ヴァイセ・ブリューテ

「皆さま、ようこそ。ヴァイセ・ブリューテです。今日も会いに来てくださり、ありがとうございます」


いつもの配信開始の挨拶を、ルミナ式撮影用ドローンに向かって述べ、一礼。


今日は事務所のスタジオではなく、どこか書き割りじみた空虚な街が遠くに見える境界層の広い空き地から。

瘴気の状況は特災庁が確認済で、周囲に空間の歪みもない、比較的安全な場所です。

さらに外周警戒のドローンも複数飛ばしています。特災庁からファーストナイトへ試験供与された新型ドローンですね。


―― きた!

―― 待ってました

―― 雑談枠の予定かと思ったら境界層?

―― 前回のアーカイブ見れないです

―― 今日もカワイイ!


「最初に前回の同時視聴配信についてお知らせです。こちらはアーカイブには残りません。大元の配信が非公開になっているため、それに準じた形となります。当日見られなかった方はごめんなさい」


少し目を伏せてから、カメラに視線を戻します。


正直なところ、残念でしかたありません。初めてできた魔法少女の友達の、初配信、記念に残したかったです。

けれど、まさか変身してない姿で登場するとは予想できませんでした。

ルージュ・エトワールさんのような、中の人が出る雑談配信もありますけれど、ざわつくコメント欄を一切無視して進めるスタイルは、ちょっと真似できそうにないですね。


―― あれは仕方ない

―― 説明ありがとう

―― ひどい…事故だったね…

―― ☒☒☒☒☒☒☒☒☒☒!

―― フィルター仕事した

―― 中の人への言及NG設定かな


「アーカイブ非公開を鑑みて、同時視聴に映ったチェネレントラ・ステラさんへの言及はNG設定しておりますので、気をつけてくださいね」


―― りょ

―― かしこまり

―― 配慮えらい

―― 今日のお品書きは何かしら

―― それよりなぜ境界層?


ドローンカメラに目線をあわせつつ、ARコンタクトに展開されるコメントログ欄とピックアップコメント一覧をチェックします。

ここ最近、とみに勢いを増したコメントログの量にも、ようやく慣れてきました。

その上、事務所のスタッフが適宜ピックアップしてくれるので、そこから今日の予定に沿ったコメントへレスポンスを返すことで、ほどよく盛り上がりつつ、必要以上に脱線せずに済むのです。


私ひとりでやったら、脱線に脱線を重ねて、予定にない方向にどんどん流れてしまいそうだから、とても助かりますね。


「はい。皆さまがすでにお気づきの通り、境界層からお送りしています。といっても駆除活動ではないので、リラックスして見ていただければと思います」


―― あれかな?

―― 同時視聴でやってた感知の件かな

―― 映像分かりやすかった 言ってることはミリもわからんかった


「ではサラッと、本日の予定から行きましょう。メインはこちら、『前回配信の振り返り』『チェネレントラ・ステラ式ルミナ感知を試してみよう』ですね。ルミナ感知は、チェネレントラ・ステラさんが説明されていた基本方式と、いくつか状況に合わせた変化、それから、私なりに考えてみた応用を試していきます」


スマートウォッチで配信画面を操作して本日の内容リストを表示します。

配信予定の打ち合わせに沿って、こういった画像を毎回用意してくれるスタッフさんには、本当に頭が下がりますね。


「ということで、まずは、当日視聴できなかった方へのフォローも兼ねて、今日は前回の同時視聴の振り返りをしていきます」


―― 振り返りたすかる

―― 見逃したからありがたいー

―― 前回見れたけど振り返りで感想聞きたい

―― チェネステについて語りたいだけでは…?

―― 振り返りは口実


「『チェネステについて語りたいだけ』? ええ、その通りですけれど何か?」


みなさんは見逃した内容を押さえられてハッピー、私は友達について語れてハッピー、何か問題でも?


―― ひぇ

―― 聞きたい

―― ハイヨロコンデー!

―― ぜひ語ってください


問題ないですよね。よろしい。


「では私のお友達、チェネレントラ・ステラさんの初配信を振り返っていきましょう。諸般の事情で配信映像はありませんが、トワイライトパレスさんのご好意で、配信に使用されていた映像素材はお借りできました」


―― トワイライトも仕事早い

―― 所属二人だけの小さいとこだよね

―― 正直、ファーストナイトだと思ってた


ですよね?! 私もそう思っていたので少しがっかりしました。ファーストナイトに入所したら、色々と絡む機会が多くなると期待してましたからね! っと、いけません。思考が脱線しそうになりました。


「トワイライトパレスさん、チェネレントラ・ステラさんには、改めてお礼申し上げます。さてさて」


映像素材の一つめを表示。


「まずはこちら。チェネレントラ・ステラさんが行うルミナ感知の原理説明ですね。これの画期的なところは、感知領域を能動的に動かさないため、パッシブ式の感知になるところです。領域の希薄化を十分に行うことで、隔獣がこちらの感知に気付きにくくなるのが大きなメリットですね」


―― なるほどわからん

―― ユサ:ルミナぶつけて反射を拾うのが普通の感知

―― 隔獣の動きを拾うだけだから気付かれないわけか

―― ほー


「そうなんです。こんな感じで感知したい範囲内でルミナを励起することで感知領域を形成するのですが」


しっかりとルミナ操作へ意識を集中してから、周囲五メートルほどに光を帯びた感知領域を展開します。事前に練習を繰り返しましたが、ステラさんの実演ほどスムーズに展開できるようになるには慣れが必要ですね。


「このとき励起するルミナの密度が高いと、当然、隔獣は反応します。視覚的に分かりやすくなるよう強めに励起しましたが、実際は――」


一度、領域を解除し、今度はうんと薄く再展開。


「――これくらいですね。今は見えるように光らせてますが、実際に行う感知では光りません」


―― さっきより断然薄いのな

―― 一度、くっきりしたのを見てるから、かろうじてわかるけど、なるほど

―― わかりやすいです!

―― ユサ:意図的に光らせるのはかなり高度な技術だぞ

―― 強弱あっさりつけてるし、すごい

―― さすがヴァイセさん!


「ありがとうございます。では次の映像です」


―― 同時視聴の時に隠蔽って言ってたヤツ

―― 感知のときより説明がふんわりしてたよね

―― 教室で空気になってる感じとか、俺に刺さる説明やめろください

―― う、あたまが…


「これは、私も少し捉えあぐねたのですが、気配遮断というよりもジャミングと考えると、すんなりいきました」


感知領域のときのように、周囲のルミナを励起して光らせます。次に、じんわりと私の周囲をルミナの“モヤ”で覆っていき、そのままモヤの範囲を広げて見せていきます。


―― あー、なんか居ることはわかるけどはっきり分からない感じ、なのか?

―― 特定させない、だな

―― なるほど?

―― 役に立つ、のか?わからん

―― 気配が掴みにくいだけでかなり違うのでは


「はい。接近戦になったとき、有利を取りやすくなりますね。ルーク級のような遠距離攻撃に対してもある程度有効だと思います。それからこれは応用次第で――」


モヤ状のルミナを整え、意図に合わせて変形させていきます。かなり集中力が要りますが……


―― おお?

―― なんか一瞬姿が見えたあと急に薄く

―― 消えた?え?なんで?

―― 光学迷彩?!

―― ユサ:まーた、この子はアホほど高度なことをあっさり

―― すっご!

―― はえー、なんでかわからんけどすごそう


「ふふ。どうですか? まだ実戦では試していませんが、隔獣からの探知にも有効な可能性があるんですよ。うまく使えれば、先ほどのルミナ感知と合わせることで、隔獣の駆除活動にかなり役立ちそうです」


かなり集中力を要するのと、周囲の確認がルミナ感知頼りになるので、実戦投入にはまだほど遠いのですけれど。

隠密状態のステラさん……スター・ホワイトモードとよぶべきでしょうか? あのルミナ圧を全く感じない状態はどうやっているのでしょうか?

ともあれコメントは盛り上がってますから、デモンストレーションとしては成功でしょうか。


―― 先手とれるようになるのデカいな

―― さすヴァイセ!

―― っぱ、ポッと出のチェネステよりヴァイセさんだよな

―― 円卓入りはヴァイセの方が絶対ふさわしいのに

―― ユサ:あ、バカ

―― おいやめろ


「……」


深呼吸しましょう。こういうときは少し間を置いて――


「どうやら大きな誤解があるようですのでこの機会にきちんとお話をしておきますね。最初に、大前提としまして、私と他の魔法少女を比較してどちらがどう、というのは控えるようにお願いいたします。皆、等しく隔獣駆除を担う仲間です。その上で、隔獣駆除の実績、魔法に対する理解と知識、境界層の特性や隔獣に関する知見と対処においてチェネレントラ・ステラさんは現在の私のはるか先を行っています。そして大切な友人であり、ともに切磋琢磨してゆきたい相手であり、尊敬する魔法少女でもあります。ステラさんの円卓入りは当然のことと受け止めておりますし、何ら疑義を差し挟む余地はありません。友人として誇らしく、また喜ばしいことと思っております。そもそもとして――」


―― ひぇ

―― 煽った人は傾聴しようね

―― あーあ

―― スイッチ入っちゃったヴァイセさんカワイイ

―― 分厚い擁護

―― てぇてぇなぁ

―― ここでしか摂取できない栄養がある

―― しばらく止まらないやつ


「――ですから、私も友人として恥じない魔法少女でありたいと思っておりますし、それにはやはり、隔獣駆除をしっかりこなしていくのが一番の早道で……と、少し長くなってしまいましたね」


いけません、チャットアプリにスタッフからの未読メッセージがたくさんありますね。

切り替えていきましょう。


―― 最長記録更新

―― ヴァイセさんのチェネステ語りよかった!

―― ありがたや

―― ヴァイセカワイイ!

―― 今日もカワイイ


「はい。ということで境界層ですから、実戦を想定したルミナ感知を色々試していきたいと思います」


スタッフからは、予定通りに続けて、と来ていますから問題なしですね。


―― おお、なんかいつにも増して積極的

―― チェネステが刺激になってる?

―― あまり気負わないで


もう一度深呼吸をし、軽くこぶしを握って緩めて程よく力を抜き、ドローンカメラに視線を合わせて微笑みます。

大丈夫です。気負ってなどいません。


チェネレントラ・ステラさんが最初の配信で、ルミナ感知や、境界層でのルミナ隠蔽を題材に選んだ意味はしっかり受け止めていますとも。

友人として、きちんと肩を並べられるように、しっかりと追いかけていきますよ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ