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前世オタクの私が魔法少女は解釈違い!  作者: 天氷岐 久音
だからコソコソがんばります

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25/26

第25話 「灰星さんですね?」

はしたなくも、推しの供給を求めるオタクの声がうっかり天に届いてしまったのか。


彼方から伸びる金色の細い光が、眼前の隔獣の胴体ど真ん中を照らす。


これはセラ様の配信で一度だけ見た。

アストラ・クラウンを、きっちり狙いをつけて撃つ場合の照準線!

才能豊かなセラ様は、多少距離があっても照準をつけるまでもなくアストラ・クラウンを命中させられる。すごい。

なのに、わざわざ照準線の照射。

全力でアストラ・クラウンの射線から距離を取る。


予告ありがとうございます!

今日も推しが最高です!


私が十分に距離を取ったところで、アストラ・クラウンの効力射が隔獣に命中!

隔獣が揺らいだ!

私が装甲に刻んだ亀裂が大きく広がっている。

要所に入れた傷がルミナを受け流させず、あちこちで衝突させる形になり、散らしきれなかった。


よしよし。

攻略の糸口として立てた仮説は正しそうだ。


一度合流しよう、とアストラ・クラウンが飛んできた方向へ向かうと、あちらからも魔法少女反応が二つ近づいてくる。

ルミナによる感知越しにも、ピリッとした圧を感じる方がセラ様だね。

この感じは確かにコソコソ活動時に一度か二度、感知したことがある。セラ様だったのか。

もうひとつは、最近なんだか馴染みの反応になってきたヴァイセ・ブリューテだ。


顔を合わせたら、なんて挨拶しようか。

推しと至近、面と向かっての初遭遇だ。第一印象は大事。とても大事。

最初の発声で、今後のすべてが決まるといっても過言ではない。

過言ではない。


やはり最初は無難に、しかし丁寧に「はじめまして」からだろう。


考えている間にも、セラ様とヴァイセ・ブリューテは目の前に。

ヨシ。

挨拶――


「……『灰星』さん、ですよね?」

「はふぇい??」


はいぼし? 灰星?

灰星ってなんだっけ? どこかで聞いたことあるなー?

セラ様の配信でコメントする時の私のアカウント名っぽいなー。


「え。なん……で?」


ダメだ、考えがまとまらない。思考能力に著しいデバフが!

セラ様が近い。

目の前にいる。麗しい。髪の金色が神々しい。

じゃなくて。


「チェネレントラ・ステラ、灰被りの星という名前。即席の判断力と落ち着いた対応力は、深い分析に裏打ちされたコメントに通ずるものがありますから。あ、いえ。正体を探りたいということではなく」


チェネレントラ・ステラ。

確かに訳せば『灰被りの星』だ。

誰だー! アカウント名に灰星ってつけてそのままにしてたヤツ!

私だ!!

推しに! モロバレ!

そうです、私が灰星です!


「あ、あの、その、セラ様」

「ごめんなさい、混乱させるつもりはなく――」

「あの! スター・ホワイトさん見ませんでしたか!?」

「ふひぇい?!」


見てはいないですねー! ここに鏡は無いので!!


ヴァイセ・ブリューテがセラ様に被せるようにぶっこんできた。

真っすぐストレートの剛速球。

これはどうすれば?? ちょっと混乱してきた。


「あ、はじめまして。ヴァイセ・ブリューテです! よろしくお願いします」

「はひ。お願いします。チェネレントラ・ステラです。ヴァイセ・ブリューテさんの花片魔法、最近コツを掴まれたのか威力、精度、なにより使い方の工夫すごいですね。以前に配信で言ってた尊敬するキルシュ・ツァウバーの黒糸魔法にヒントを得られたのですか? 一見、似て非なる魔法ですが、広域に持続的に展開できる点や同時制御点の多さなどに通じるものがあり――」

「灰星さん、ステイ」

「はい!」


……は!? 私はいったい。


「灰星さんですね? このやり取り、昔の配信でよくやりましたね」

「……はい」


推しがー! 推しが隙のない三手詰め!! 投了!


「ぅゎー。セラ先輩が一瞬で手懐けた」


いやいやいや。

こんな漫才をしている場合ではなく。

――と思ったら、ヴァイセ・ブリューテの花片が時折六角形に集まり、隔獣が放つ黒光の角度を変えて受け流していた。

ぇ、なにそれ、すご。自動防御なの? 天才……? 


「あ、これですか? さっきの質問の答えにもなるんですけれど、スター・ホワイトさんの狙撃魔法が、射撃の都度、威力や貫通力を微調整してたのを見て思いついたんです。だから一度お礼を言いたくて」


?????

スター・ホワイトさん、そんなことしてるの?

マジでスター・ホワイトさん何者?

弾丸にルミナを込めるとき、なけなしの出力でかき集めていたから、連射するとどうしてもブレが出てしまっていただけで、むしろそれが見えて、自分の魔法のアイデアにできるヴァイセが天才なだけでは??


「ええと、先にあの隔獣を何とかしてからということで」

「そうですよね!」

「何か腹案があるのですか?」

「はい! セラ様は一旦、アストラ・クラウンの威力が保てる位置まで後退してください。ヴァイセ・ブリューテさんは、セラ様が攻撃に専念できるよう援護をお願いします。後続の魔法少女は?」

「あと三名、数分で到着するはずです。私たちはチェネレントラ・ステラさんとつなぎをとるために先行してきました」


話がスムーズ! ありがたい! ついでに話も逸れたな!


「なるほど。後続が着いたら合図をお願いします。私はもう少しアイツの相手をします」

「わかりました! セラ先輩、よろしいですか?」

「問題ありません」

「お願いします。では――」

「あ、リンク――」


宙を思い切り蹴って、巨大隔獣の方向へ跳ぶ。

セラ様が何か言いかけていたけれど、伝えることは伝えたから大丈夫なはず!

推しの言葉を放り出すなど、言語道断ではあれど、なんだか留まっていてはマズい気がして――


「あの! スター・ホワイト――」

「その件は後ほど!!」


自分でもびっくりするくらい大きな声で遮ってしまった。

ひー。スター・ホワイトの話、ちっとも逸らされてなかった! あぶな!


ともあれ。


セラ様が来た! アストラ・クラウンの援護もらった! そしてセラ様が見てる!

勝ち筋も見えた!!

よっし、やる気出て来たー!


あっという間に声が届く範囲を飛び出し、みるみる近づいてくる隔獣へ斧槍を前に突き出し、突っ込む。

隔獣もただ漫然と喰らわない、とばかりに首をたわめ、頭部をシャコパンチのように突き出してくる。


インパクト!!


すさまじい衝撃音が響き渡る。

衝撃を流すように斧槍を突き下げれば、隔獣の頭部が良い勢いで地面に叩きつけられる。


私の! 読み勝ち!

推しが来てる、推しが見てる私は、ちょっと無敵だぞ!

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