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前世オタクの私が魔法少女は解釈違い!  作者: 天氷岐 久音
だからコソコソがんばります

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第12話 魔法少女セレスティアル・スター

「ひとりで無理はしないでほしい。はい、この話題ここまでー」


―― かしこまりー

―― セラ様あったかい

―― 実際心配になる

―― 非公認でこんなに、はい、止めます

―― 狙撃そんなにすごいん?


「オタクくんさぁ、ほんと狙撃とかスナイパーとか好きだよねー」


―― 好きです!

―― だいすき

―― ごはん三倍いける

―― いそうでいない狙撃系魔法少女


「それはねー 有識者ー」


―― コメに説明投げたー!

―― 雑ぅ

―― これがトップ魔法少女

―― あれ、識者ニキおらん?

―― さっきまで居た


「ありゃ。珍しー。狙撃はね、理論上可能。実際はコアが不規則に動いてるから無理。便利棒でどーん、もコアにクリーンヒットは滅多にない」


―― 便利棒言うな

―― 天杖呼び設定どこいった

―― コアに当たらなくても一撃なの意味わからん

―― そう聞くと狙撃ヤバみ


「おっと。スタッフの人、アーカイブ公開前に、天杖でアストラ・クラウンを撃っても、に差し替えておいてー」


―― ておくれです

―― 便利棒でどーんです

―― 便利棒

―― どーん


「はいはい。次のメッセージいくよ。『セラ様、いつもお疲れさまです』はい、お疲れ様ですサニーレインさん。続きは読まなくていいですね、これ」


―― なんでですか!?

―― 本人www

―― 本人おって草



コメント欄の空気が元に戻ったことを確認して、次のメッセージを画面に表示し、雑談を続ける。

さっきはちょっとらしく無かった。


締めるところは締めつつ、分け隔てなく雑に絡みながら、配慮は忘れない。

そんな魔法少女セレスティアル・スターらしからぬ言葉選びをしてしまった。


もう一度、気を引き締めて緩める。

親しみやすい、ちょっと雑な魔法少女の顔を固定して雑談を回していく。


どこかモヤモヤしたものがわだかまる。


いつもは程よくコメント欄をかき回してくれる最古参ファンが沈黙しているのも心の片隅にひっかかる。

初回配信にコメントをくれたファンの名前は全部覚えている。


魔法少女として意気揚々とデビュー配信を打った私に突き付けられた数字は五。

視聴者五人。


万単位の視聴者が常になった今では、他の魔法少女にその話をしても信じてもらえない。

セラ様なら最初から千人くらいいたんじゃないですか、なんて言われる。


私のデビューは、所属魔法少女がキルシュ先輩と私だけの、今はもう無い小さな事務所から。

知名度ゼロ、実績ゼロの魔法少女に、むしろ五人も来てくれたことがすごい。

何もわかってなかった私は、配信が集中する時間帯に初配信を入れた。


先輩は配信準備する私を見ていたけれど何も言わなかった。


ただ、配信を終えた後「五人でした。いえ、五人も見てくれたんです」そう言った私に「よかったね」と優しく言ってくれた。

そんなの忘れる訳がない。その五人で、今も配信を見に来てくれるのは灰星さんだけ。

その時の事務所も、最大手のファーストナイトに吸収された。


時計を見て、雑談を締めて終わりの挨拶。


「今日もみんなおつかれー 明日の境界層ライブもいつも通りの時間だよー」


―― 88888

―― 配信ありがとうございました

―― セラ様おつ

―― セラ様やすんで


カメラオフ、よし。

マイクオフ、よし。

配信停止、よし。


配信管理画面、終了を確認。


ふぅ。


モヤモヤするのは、スター・ホワイトが私の大切なファンの名前と、なんとなく被るから。

八つ当たりみたいな感情だ。

分かってはいる。


狙撃の腕前に嫉妬するといったのも本音五割。

灰星さんがコメントで解説してくれた狙撃の難しさを台無しにされた気がしてささくれ立ってるのが五割。


少しファンを煽るような言い方になったのは良くなかったと思ってはいる。

本当にモヤモヤする。


けれど、未公認で活動する魔法少女が心配なのも間違いなく本心。

だから魔法少女事務所に頼って欲しいと言えなかった。

特災庁アプリを強調したのだって、こんな話題性の塊の魔法少女、どの事務所からデビューしても難しいことになる。事務所だって持て余しかねない。いや、持て余す。


それでも、言い方はもっと工夫できたはず。

後からは何とでも言えるけれど。


ピロン、とスマホが鳴る。


『親しみやすいセラ様、今日は大荒れじゃん』


事務所のマネージャーがなんか言ってきたかと思ったら、キルシュ先輩だった。

暇ならちょっと付き合ってもらおうと通話かけたらワンコールせずに繋がる。

待ち構えられてたみたいで釈然としない。


「大荒れなんてしてません」

『うかつな発言連発だったくせにー?』

「ふたつだけです」

『ほーん、どれとどれよ』

「特災庁アプリと、正確かどうかわからない」

『事務所入れないのは正解だろ。「見てないと思う」と「ありゃ。珍しー」は無意識か』

「ぅ」


言われたら確かに。先輩、ほんと観察眼おかしい。

ファンの一人を明確に認識してる発言は確かにうかつだった。


『正確かどうかわからない、なんて小さな嘘ついちゃったから、見ていてほしくないなー』

「先輩、デリカシーって知ってますか?」

『セラ相手には要らない言葉』


ほんと、この先輩は!


『気になって仕方ないんだろ? 心配にもなるよな』

「認めますー! 心配なんですー! 先輩みたいなことにならないか」

『そこかー』

「なんですか。意外ですか」

『スター・ホワイトなー。なー、セラ。灰星ちゃんの解説語録から五件くらい言える?』

「何ですか急に。ちょっと待ってください」


スマホのメモファイルを開き、スピーカーモードにする。


「アストラ・クラウンほどの大技を連射できるのは、ルミナ配分管理がずば抜けてるセラ様だから」

「アストラ・クラウンの特性は減衰率の低さで、これが射程の長さに結び付いてます」

「アストラ・クラウンの命中率の高さは、何らかの要因で隔獣のもつ負のルミナと引き合うから」


……なるほど、先輩の言いたいことが分かった気がする。


「追加詠唱版で貫通力が増すのは、発動遅延でルミナ圧縮率が高くなるから」

『ストップストップ。セラ、射程が長くて、命中率高くて、高貫通』

「スター・ホワイトが灰星さんのアストラ・クラウン解説を参考にしたと言いたいのですか?」

『や、逆でさ。スター・ホワイト、灰星ちゃんぽいなー、て』


何を言ってるのか、この先輩は。

あの理知的な分析コメントはルミナ研究の専門家レベルだ。何が灰星ちゃんだ。

曖昧なものと事実をきっちりわけて書く文章の特徴からも、年上の男性研究者のような人物像がうかがえる。


「え? なんですかそれ。断じて認めません! 灰星さんはかなり年上の人ですよ! あの文体は男性の、それも研究者タイプ」

『お? 言いきるじゃん。賭けようか?』

「受けて立ちます。私が勝ったら、ファーストナイト研修生への講座お願いします」

『スイーツ奢れとか言わないところがセラらしいけど、もっとさー』

「はいはい。もう寝ますから切りますよ、おやすみなさい、先輩」

『あいよ。おやすみ、セラ』


なんとなく、先輩にうまく転がされた気がする。


モヤモヤは、少し晴れたかもしれない。

もし、スター・ホワイトに会えたら、ちゃんと言えるだろうか?


嫌な言い方をしました、ごめんなさい、と。


それから。


あなたの狙撃は、本当にすごい、と。

でも、ひとりで戦い続けるなら怒ります、と……

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