第38話:領主館の緊迫、忠告を踏みにじる監察官
領主館二階、普段は他領の要人や王都からの公使を歓待するために使われる貴賓応接室の空気は、まるで氷河の底に沈められたかのように重く、冷たく張り詰めていた。
黒檀の分厚いテーブルの中央、磨き抜かれた銀の燭台に灯された炎が、微かな隙間風を捉えて細かく揺らめいている。
暖炉には赤々と樫の薪が燃え盛っているというのに、室内の温度は一向に上がらない。テーブルの片側に立つ領主代行ローラン・ド・フォレストの背筋を、氷水のような冷や汗が絶え間なく流れ落ちていた。
その隣には、辺境警備隊長のギルバート・アルノーが、直立不動の姿勢で控え、無言のまま威圧感を放っている。二メートル近いその巨躯は、軍服の上からでも分かるほどに鋼の如く硬直しており、腰の長剣の鞘を握る分厚い手袋の隙間からは、じわりと脂汗が滲み出していた。
宿場町を取り仕切る商人ヴェロニカから、早馬による急報が届いたのはわずか半刻前のことだった。
『王都の主席宮廷魔術師が、直属の軍勢を引き連れて乗り込んできた。目的は山奥のお嬢さんだ』
その報を受けた瞬間、ローランの心臓は凍りつき、治ったはずの胃の奥底が引き絞られるような激痛を訴え始めた。
そして今――その最悪の災厄が、目の前の革張りの長椅子に、尊大極まりない態度で腰を下ろしていた。
「……長々と待たせるではないか、ローラン殿」
足を組み、深紅のビロードの肘掛けに優雅に肘をついたエティエンヌ・ボワイエは、心底から退屈そうに銀縁の眼鏡を指先で押し上げた。
濃紺の魔道ローブに施された金糸の刺繍が、暖炉の光を反射してギラリと鈍く輝く。
テーブルの上には、彼が一口も手をつけなかった、フォレスト領自慢の最高級ハーブティーのカップが冷め切ったまま放置されていた。湯気の消えた水面には、エティエンヌが纏う王都の強い香水の油膜が、虹色の輪を作って浮いている。
「地方の小役人どもは、時間という概念を持ち合わせておらんのか? 我が輩は王都魔法省の主席監察官だ。一分一秒の遅滞が、国家の軍事機密にどれほどの損失を与えるか、その錆びついた頭では理解できんようだな」
唇を歪めて嘲笑を漏らすエティエンヌの態度は、領主代行であるローランを、まるで自らの足元に侍る召使いであるかのように見下していた。
三十一歳という若さで中央の権力を握ったエリート特有の、傲慢と選民思想にまみれた視線。
だが、ローランはその無礼を咎める気にもならなかった。怒りなど疾うに通り越し、目の前の男が犯そうとしている愚行の規模に、ただただ魂が震え上がっていたのだ。
「……ボワイエ殿。突然の御来訪、歓迎の準備も整わず、失礼をお詫びいたします」
ローランは感情を殺した平坦な声で応じ、眼鏡の奥の藍色の瞳を鋭く細めた。
「して……魔法省の主席監察官たる貴殿が、五十名もの重装魔術兵を率いてこの辺境の地に乗り込んでこられた真意を、伺ってもよろしいでしょうか」
「くく……まだ惚けるか」
エティエンヌは喉の奥で下卑た笑い声を漏らすと、懐から一巻の分厚い羊皮紙を取り出した。
広げられた書類の末尾には、王家の最高軍事評議会が押印した、毒々しいまでに鮮やかな紫色の封蝋印が鎮座していた。
バサァンッ!
静寂を裂いて、エティエンヌがその書類を黒檀のテーブルの上に力任せに叩きつけた。
「王国直轄最高監察令――【魔女討伐および魔獣接収】の勅命状である!」
エティエンヌは椅子から立ち上がり、指先で書類の文面をトントンと強く弾いた。
その灰褐色の瞳に、野心と狂気に満ちた光がギラギラと渦巻いている。
「フォレスト辺境伯領、北の山裾。そこに潜む正体不明の不穏分子――古代神獣『霜狼神フェンリル』を違法に使役し、あまつさえ冥界獣や不死鳥までをも手懐けているという謎の魔女を、王国反逆の首謀者として直ちに武力制圧する! そして、その魔女が従えている神話級魔獣のすべてを、王都魔法省の直轄兵器として接収する! ……これが、国王陛下の名の下に下された、絶対の命である!」
部屋の空気が、完全に凍結した。
ギルバートの喉仏が、ゴクリと音を立てて大きく跳ね上がる。
ローランの顔から、急速に血の気が引いていった。
(……やはり、あの平屋のことか……!)
ローランは奥歯を砕けんばかりに噛み締めた。
王都の権力亡者どもが、辺境の異変を聞きつけて嗅ぎ回っているという噂は耳にしていた。だが、まさかこれほど性急に、これほど無知蒙昧な軍勢を送り込んでくるとは。
魔女討伐? 神獣の接収?
言葉の響きだけでも失笑を禁じ得ない。
あそこにいるのは、世界を滅ぼす災厄たちを膝の上で寝かしつけ、スリッカーブラシで毛玉を梳き、手作りの焼き菓子で人々の魂を救済する、至高の調停者なのだ。
その聖域に軍勢を率いて踏み込むことの意味を、この頭でっかちのエリートは、爪の先ほども理解していない。
「……ボワイエ殿、お待ちください」
ローランは両手をテーブルにつき、身を乗り出して必死に声を絞り出した。
声が震えそうになるのを、領主代行としての誇りだけで力づくで抑え込む。
「その勅命状の撤回を要求します。……いえ、お願い申し上げます。今すぐ軍を退いてください。あそこにおわすのは、王国に害をなす魔女などでは断じてございません!」
「ほう?」
エティエンヌは眉を吊り上げ、侮蔑の笑みをさらに深く刻んだ。
「魔女ではない、と? では、フェンリルを使役しているという報告は虚偽だとでも言うのかね? 魔力波長の観測記録は、すでに魔法省の魔導探知網によって幾度も中央へ送られているのだぞ。田舎領主が保身のために嘘をつくのは見苦しいぞ、ローラン殿」
「嘘などついておりません!」
ローランは声を荒らげた。
普段の怜悧な彼からは考えられないほどの、切迫した気迫。
額の汗が眼鏡のレンズの上に滴り落ちるのも構わず、ローランはエティエンヌの顔を真正面から見据えた。
「確かに、あそこには神獣フェンリルがおわします! そればかりか、キマイラも、フェニックスも、同じ屋根の下に息づいております! ……だが、あのお方は彼らを『使役』しているのではありません! ただ、荒ぶる天災たちが、あのお方の深き神徳と慈悲に包まれ、平穏を享受しているにすぎないのです! あそこは、世界の理そのものを調停する、侵してはならぬ聖域なのです!」
「調停? 聖域?」
エティエンヌは肩を揺らして吹き出した。
「ハッハァ! 滑稽だな、実に滑稽だ! 魔獣に魂を売り渡した売国奴が、今度はその怪物を神と崇めて信仰を始めたか! 辺境の民とは、これほどまでに蒙昧で狂信的なものだったとはな!」
「笑い事ではありません!!」
ローランはテーブルを力任せに叩いた。黒檀の天板が激しい音を立てて軋む。
「聞いてください、ボワイエ殿! 手を出せば……あのお方の領域に武器を持って踏み込み、その平穏を脅かせば、神獣たちの怒りによってこの領地はおろか、王国全土が壊滅するのです!! フェンリルの絶対零度が解き放たれれば国土の半分が雪原に沈み、キマイラの猛毒が川を腐らせ、フェニックスの浄火が王都を灰燼に帰す! 貴殿がやろうとしていることは、火薬庫の真ん中で松明を振り回す以上の狂気の沙汰なのです!!」
ローランの叫びは、魂からの絶叫だった。
フォレスト領の民のためだけではない。
この男の背後にある王国そのものが、一瞬の過ちによって地図から消滅するという、現実の終末に対する本気の警告だった。
しかし――。
エティエンヌの冷たい灰褐色の瞳には、その言葉の重みなど、一欠片も届いていなかった。
「……長々と聞いてやれば、くだらん妄言ばかりを」
エティエンヌは冷え切った声で吐き捨て、懐から取り出した絹のハンカチで、ローランの唾が飛んだテーブルの表面をこれ見よがしに拭い去った。
「神獣の怒りだと? 王国全土の壊滅だと? ……田舎暮らしが長すぎて、脳みそまで腐ったか、ローラン殿。魔獣など所詮、魔力と本能で動く獣にすぎん。我が輩が王都から連れてきた五十名の魔術兵は、いずれも中央で最上位の結界術を修めた精鋭だ。さらに我が輩の編み出した最新の魔導拘束具を用いれば、どんな太古の巨獣とて、数分で魔力回路を焼き切られ、ただの無力な肉塊に成り果てるのだ」
エティエンヌは自らの胸元のペンダントを誇らしげに叩いてみせた。
そこにあるのは、魔導理論を盲信するエリート特有の、完全なる全能感。
自分たち人間の編み出した魔法技術こそが世界の頂点であり、神話の存在など、過去の遺物にすぎないという絶対の思い込み。
その傲慢極まりない横顔を見つめ、ローランは血の気が引き、絶望に唇を震わせた。
通じない。
論理も、事実も、危機感も、この男の分厚い自尊心の殻を突き破ることはできない。
その時だった。
ドシン、と。
応接室の床を揺らすような、重々しい足音が響いた。
「――ボワイエ殿」
低く、地を這うような鋼の重低音が、部屋の空気を圧した。
前に進み出たのは、これまで沈黙を保っていた辺境警備隊長、ギルバート・アルノーであった。
二メートルの巨躯が、エティエンヌの頭上を覆うように影を落とす。
百戦錬磨の戦士が纏う、無数の魔獣を屠ってきた本物の殺気。
エティエンヌは反射的に半歩後退し、喉を詰まらせた。
「な、なんだ貴様は……無礼な真似をすれば、反逆罪に……」
「兵を引かれよ」
ギルバートはエティエンヌの脅迫を一蹴し、その瞳を真っ直ぐに見据えた。
その視線には、威圧ではなく――哀れみすら混ざった、真実を知る者だけの圧倒的な重みが宿っていた。
「俺は、王国屈指の武闘派として、この辺境の地で数千の魔獣と刃を交えてきた。大剣一本で竜の首を刎ね、数々の死線をくぐり抜けてきた男だ。……その俺が、命を賭けて断言する」
ギルバートは拳を強く握りしめ、自らの胸板をドンと叩いた。
「貴公らの持ち込んだ魔導槍や最新の結界など、あの庭先では爪楊枝ほどの役にも立たん。……あそこにおわす神獣どもは、人間が束になって敵うような次元の存在ではないのだ。挑めば、ただ無残に消滅するのみだ」
「き、貴様……田舎の筋肉だるま風情が、中央の魔導軍団を愚弄するか……!?」
「愚弄ではない、忠告だ」
ギルバートは眉根を寄せ、切実極まりない声で続けた。
「どうしてもあの山へ向かうというのなら……せめて、兵を連れて行くな。武装を解き、武器をすべて捨て、手ぶらで参られよ」
「……は?」
エティエンヌの口が、間抜けに開いた。
「そして――誠意の贈り物を携えて、たった一人で向かうのだ」
ギルバートは至極真面目な顔で、過去数ヶ月に及ぶ辺境警備隊の「血と胃薬の教訓」を語り始めた。
「木箱いっぱいの新鮮な果物でもいい。上等な牛肉の塊でもいい。あるいは、極上の紅茶葉でもいい。……あのお方は、素朴で心優しいお方だ。武器を持たず、手土産を携えて頭を下げれば、決して命を奪うような真似はなさらん。温かいハーブティーを淹れてくださり、美味い焼き菓子を分けてくださる。神獣どもも、贈り物の美味い肉に免じて、爪を引っ込めて喉を鳴らしてくれるはずだ。……それこそが、あの聖域へ踏み込み、生きて帰るための、唯一絶対の作法なのだ!!」
ギルバートの言葉は、彼自身の魂の叫びであった。
双眼鏡越しに目撃した、屋根の雨漏りを直して手ぬぐいで頭を拭かせ、生姜湯をすする神獣フェンリルの姿。
そして、手作りのスコーンで胃の痛みを完治させ、肌をツヤツヤにして帰ってきた令嬢レオノールの姿。
あそこは、武力で制圧する場所ではない。
美味しいご飯と、丁寧な暮らしと、素朴な善意によってのみ、荒ぶる神々の平穏が保たれている奇跡の庭なのだ。
贈り物を届けて機嫌を取る。それだけが、この領地が生き残るための唯一の正道であった。
しかし――。
そのあまりにも真摯な忠告を聞いた瞬間。
「…………ぷっ」
エティエンヌの口元が、小刻みに震え始めた。
眼鏡の奥の瞳が、侮蔑と嘲笑に歪み、やがて――。
「――ブハッ! ハハハハハハッ!! アハハハハハハハハッ!!」
貴賓応接室の静寂を切り裂いて、狂ったような爆笑が轟き渡った。
エティエンヌは腹を抱え、大袈裟に身をよじらせながら、涙が出るほど笑い転げた。
「手ぶらで向かえだと!? くだもの!? ぎゅうにく!? お茶菓子を貰って帰ってこいだと!? ハハハハッ、傑作だ! 最高に笑える喜劇だな!!」
エティエンヌは笑い涙を指先で乱暴に拭うと、ギルバートを指差して冷酷に言い放った。
「辺境の警備隊長ともあろう者が、小娘一人に怯え、魔獣の餌付けで生き延びていたとはな! 貢ぎ物で媚び諂い、ご機嫌取りで首を繋ぐなど、王国騎士の風上にも置けん腰抜け共め! 恥という言葉を知らんのか、無能どもが!!」
エティエンヌの言葉の棘が、ギルバートの胸を鋭く抉った。
ギルバートの太い眉がピクリと跳ね、奥歯がギリリと音を立てる。
だが、ギルバートは拳を握りしめたまま、それ以上何も言わなかった。
怒りではない。
目の前で笑い転げるこの哀れな男が、これから辿るであろう悲惨な末路を思い、ただ底知れぬ寒気が背筋を駆け抜けていたからだ。
「もうよい。貴様らのような腰抜けの田舎者の戯言に、これ以上付き合っている暇はない」
エティエンヌは笑いを収めると、冷徹な表情でテーブルの上の勅令状を乱暴に巻き取った。
そして、濃紺の魔道ローブの裾をバサリと翻し、大股で応接室の扉へと向かう。
「中央の魔導軍団の力、その目に焼き付けるがいい。我が輩が自ら、あの魔女の首に魔導の枷を嵌め、神獣どもを檻に引きずり込んでみせる。……精々、領主館の窓から指をくわえて眺めているがいい!」
ドォンッ!
エティエンヌが放った突風の魔法によって、応接室の重厚な扉が激しく開け放たれた。
廊下に控えていた五十名の魔術兵たちが、ガシャンと一斉に槍の石突を床に打ち鳴らし、整列する音が響く。
冷たい風が吹き抜け、燭台の炎を吹き消した。
エティエンヌ率いる軍勢の、重々しい足音が遠ざかっていく。
やがて、館の中庭から、出撃を告げる物々しい進軍喇叭の音が、晩秋の山裾の空へと高く鳴り響いた。
***
静まり返った応接室。
消えた蝋燭から立ち上る一本の細い煙を見つめながら、ローランは力なく長椅子へと崩れ落ちた。
「……止められなかった」
ローランは両手で顔を覆った。
指の隙間から漏れ出た声は、絶望に震えていた。
「行ってしまった……。あいつらは、武器を持って……あの庭へ踏み込む気だ……」
ローランの脳裏に浮かぶのは、マノンの穏やかな笑顔ではない。
その背後で、静かに牙を研ぐ神獣たちの姿だ。
主の平穏な日常を汚された時、あの天災たちがどれほどの暴虐を解き放つか。
エティエンヌたち王都兵の命など、どうでもよかった。自業自得だ。
だが、神獣たちの逆鱗に触れた余波で、このフォレスト領が、そして愛する妹レオノールが暮らすこの街が、一瞬にして消し炭になることだけは、絶対に避けねばならなかった。
「……ローラン様」
暗がりの中から、静かな声が響いた。
部屋の隅、影の中から進み出てきたのは、副隊長のセリア・クローデルであった。
その手には、先ほどまで握りしめられていた軍務用の手帳と、救護班への緊急指示書が握られていた。
セリアの表情は、驚くほど冷静だった。
かつて胃薬を手放せなかった彼女の瞳には、幾度もの現場を生き延びてきた者特有の、腹の据わった覚悟が宿っていた。
「セリア……」ローランが顔を上げる。「救護班の編成はどうなっている」
「すでに完了しております」
セリアは淡々と、けれど淀みない口調で報告した。
「ギルバート隊長と協議し、担架を三十台、清潔な包帯と止血帯、そして火傷と凍傷の専門治療薬を荷馬車三台分、山林の手前に待機させております。……全軍を動かすことは禁じ手ですが、後方での『敗残兵の回収』であれば、あのお方の逆鱗に触れることはありますまい」
「……回収、か」
ローランは自嘲気味に呟いた。
「あいつらは……全滅すると思うか」
「死にはしないでしょう」
セリアは静かに首を横に振った。
「あのマノン様が、自らの庭先で無駄な殺生をお許しになるはずがございません。……あのお方は、いつだって傷ついた者に温かいお茶と手当てを下さる、慈悲深き調停者様です。神獣たちも、主の前で血肉を散らすような真似は避けるはずです」
セリアは窓の外――進軍していく金ぴかの馬車と魔術兵たちの隊列を見下ろした。
その眼差しには、敵への憎しみではなく、これから神話の理不尽に叩き潰される哀れな道化たちへの、深い同情が浮かんでいた。
「ただ……人としての誇りと、魔術師としての尊厳は、跡形もなく木っ端微塵になるでしょうね」
セリアの呟きに、ギルバートが深く頷いた。
大男は腰の大剣を静かに抜き身から外し、鞘ごと床へと置いた。
「俺たちにできるのは、あのお方の庭が血で汚されぬよう、吹き飛ばされた馬鹿どもを素早く拾い集めることだけだ。……行くぞ、セリア。後方支援の陣を敷く」
「はっ」
二人の騎士が、静かに応接室を辞していく。
残されたローランは、冷え切った自らの手を見つめ、次いで北の山並みへと視線を向けた。
雨上がりの青空の下、紅葉に染まる山裾。
そこへ向かって、破滅への進軍ラッパが、嘲笑うかのように鳴り響き続けていた。
「……マノン様」
ローランは胸の前で手を組み、祈るように呟いた。
「どうか……どうか、あの愚か者どもの無礼を、お許しください……。そして、この領地に……慈悲を……」
若き領主代行の祈りを乗せて、秋の冷たい風が、山奥の不可侵聖域へと向けて吹き抜けていくのだった。




