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時間は、23時まであと少しのところに迫っていた。
近代的な超高層ビルが林立し、駅のツインタワーや大名古屋ビルヂングの除く名古屋駅近辺。
ハロウィンと、今回の『月に棍棒を投げる会』騒動のこともあり、いつもに増して人で賑わっていた。
そんな中を、
「お、おい化け物、本当に碇賀たちが近くにいるんだな!」
「もう、時間もそろそろ23時ですよ! ――わっ! 人が多ぉ!」
と綾羅木定祐、上市理可は慌てて走ろうとしているが、人ごみに阻まれて思うように進めない。
「まったく。やかましいぞ、低級動物ども。そう急かすことばかり言うな」
妖狐・神楽坂文が人間コンビに嫌そうな顔をする。
そう――、今まさに、妖力で碇賀たちをピンポイントで探り当て、三人は急いで向かっているところであった。
そして、雑踏の先、
「――あっ!」
「うむ――!」
と、定祐と上市の二人は“見た”。
仮装姿と、そうではない姿が半々の人ごみの中、昭和の高校生のごとき学生服に、ヘソ出しスタイルに開けたエロ・セーラー服の仮装をした男女の姿――
しかし、先日見た“その顔”は忘れることはなかった。
すなわち、碇賀元と賽賀忍の姿であり、彼らもこちらに気がついていた。
「いっ、碇賀ァ!」
「おっほぉ~! よっく見っけたなぁ! おっさんと姉ちゃん。それに、……狐か」
名前を叫んだ定祐に、碇賀はおどけながらも静かに戦闘モードの表情へと変わる。
「あらん? ほんと、よく見つけたね」
隣の賽賀が感心したように言いながら、人ごみを挟んで碇賀と定祐は睨みあう……
すると、
「まっ! とりあえず、俺たちゃ、ちょっくら棍棒投げてくっからさ! おっさん、姉ちゃん、また今度相手してくれな!」
「じゃあね♪ 狐さんたち♪」
碇賀と賽賀はクルリと背を向け、走り出した。
「お、おい!! ま、待て!! ――おぅ!?」
「い、碇賀さん!! ちょっ――!?」
とっさに定祐と上市も走って後を追いかけようとするも、案の定の人ごみであり、簡単に阻まれてしまう。
さらに見ると、野次馬たちはスタジアムで使うようなバンバン棒を手にし、
「ウォー!!!」
「ハッピーハロウィィィン!!!」
「早く棍棒を投げてくれよ!!!」
「ムーンにショットォ!!!」
などと、月夜に向けて棍棒を掲げながら騒いでいた。
その様は、まるで『スタンボロバン』の物語の終盤、スタンの100人の子息たちがドラゴンに向けてナイフを掲げていたように――
「――ちょっ! と、通してください!!」
「そ、そうだ! 私らを通してくれ!!」
二人は群衆に向かって叫ぶも虚しく、先に進みようがなかった。
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いっぽう、松本清水子たち怪奇調査機関のメンツも名古屋入りしていた。
とはいっても空から、――すなわち、ヘリコプターに乗ってであるが。
「――狐たち、ガーのヤツを補足したようね」
そう言ったのは、室長の松本清水子であった。
妖狐たちと連携しながら碇賀たちを追跡しており、たった今、その場所を捕捉できたとのことであった。
「おそらく、投げるとしたらこの近辺のビルの屋上っすね」
零泉円子が、名古屋駅周辺のマップを見ていった。
その零泉はウェアラブルデバイスを身に着けており、地上の妖狐たちや警察、他の怪調エージェントたちとリアルタイムの連携を行っていた。
そのように、空と地上から碇賀元と賽賀忍の二人を追い込もうとしていた矢先――、予想外のことが起こる。
「ま、松本室長、……あ、あれは」
操縦していたエージェントが、“何か”に気がつき、
「うん……? もしかして、ドローンか……」
松本清水子も“それら”を確認し、確信した。
そうである……
目の前の夜空には大量のドローンの姿があり、まるで戦車の大隊の進軍を阻むトラップのように空中に広がって滞空していた。
「な、何だ、このドローンは?」
「ちっ! 退避だわ! これ以上行けば接触して墜落させてしまうか、こちらも危ない!」
松本が操縦士に指示した。
下は人口が密集する市街地、繁華街であり、ドローンを落とすわけにもいかない。
また、そもそも松本が言ったように、墜落させれれるのはこちらの可能性もあるのだ。
さらに、
「し、室長、電子攻撃を受けてます!!」
零泉がウェアラブルデバイスから、機体コンピュータに仕掛けられた電子攻撃を察知した。
「ま、円子、対処できない!?」
「や、やってますけど、い、一旦離れた方がいいす!!」
「い、一旦離れます!!」
──続く




