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ここで、調査の一幕を。
何だかんだで、『月に棍棒を投げる会』の実態はともかく、投げ手たちに関しての追跡は進んでいた。
まず一か所め、新宿は歌舞伎町のビルの屋上にて――
そこにいたのは、魔人たちであった。
いわゆるクトゥルフ神話であったり、RPGに出てくるような異形の魔人であり、しかも彼らはやたらとファッショナブルなブランド服を着ていた。グッチやらプラダ、ヘルメスやらと。
そんなところへ、
「――すみませーん! ちょっと、いいですか?」
との声とともに、何やら刑事の聞き込み調査のように人間二人が乗り込んできたものであるから、当然、
「おわっ!?」
「あ”ん? あ”んだぁ!? 人間ども」
などと魔人たちも驚きながらも、ぞろぞろと迎え出る。
そんな彼らの前にいたのは、怪奇調査機関の黒桐廉太郎と零泉円子の二人であった。
「その、ですね……、魔人はんたち、貴方たちが棍棒を持ってはるとの情報がありまして」
「おいおい、アンタたちは何の立場でここに来てんだって?」
「先に名乗るもんだろがっ! こういう時はよぅ?」
要件を説明しようとした零泉に、魔人たちは声を荒げる。
ここで、黒桐が代わって名乗る。
「――えっと、……、すみません、私たちはこういうもの、 “怪奇調査機関”です」
「怪奇調査機関だって?」
「ああ”?」
「げっ!? あの、“怪調”か――」
ざわめく魔人たち。
「すみませんが、調査に協力してくれませんでしょうか?」
「とにかく、その棍棒をウチらに渡してくれはったら、何もしまへん」
黒桐と零泉は交渉しようとした。
ただ、そうは問屋が卸してくれないものか、魔人の一人が敵対的な態度とともに、魔術を発動させながら襲い掛かってくるも、
「ああ”、バカ言っでん――!? ぐげっ!?」
と、瞬間――、振り下ろした刀をかわすがごとく! 黒桐はいつの間にか魔人の横をとっており、そのまま魔法陣を発動させるとともに魔人を転倒させ、さらには具現化した鎖で身動きを封じる。
また、同じ魔法陣は他の魔人たちの足元にも発動しており、
「どうしやす? まだ、これでも、やりはるなら、やりましょか?」
「ぐっ……!」
零泉は具現化した鎖とともに、魔人たちに牽制してみせる。
「とにかく、調査に協力していただけるなら、こちらから何もすることはありません」
「わ、わった! わぁ”ったよ! わりに合わねえから棍棒投げなんざ、やめとくよ!」
魔人はそう言いながら観念し、持っていた棍棒を黒桐たちに渡した。
*****
いっぽう、都内湾岸にて――
綾羅木定祐と上市理可の二人は警察と連携し、半グレグループを追跡していた。
廃墟の一角のアジトにて、
「――お、おい、アンタたち……!」
「――!?」
「ああ”?」
と、若干ビビり気味な声とともに、定祐と上市の二人が男たちの前に姿を見せた。
「な”っ!? 何だてめぇらは!!」
「アンタら、……先日、宇都宮市内で青年から棍棒を奪ったそうだな?」
「警察と協力して、調べは、つ、ついてます……!」
怒声を上げるガタイの良い半グレの男に、定祐と上市は緊張を抑えながらも話すが、
「ああ”? 知らねぇよ! 棍棒なんざ!」
「――てかさぁ、オッサンと姉ちゃんよう? ちとっ、遊んでやろうか?」
と、男たちはその間にも二人を囲う。
そのまま、まず返り討ちにし、言葉どおり非道にも二人をオモチャにして痛めつけようとした。その時、
――ボコンッ!! ボコッ!!
と、あろうことか廃墟のコンクリ床から、まるで大地から生えてくるように、大きく奇妙な植物が姿を現した。
それらは“魔界植物”であり、妖狐・神楽坂文が定祐たちに貸した妖具より召喚されたのである。
3メートル以上の背丈はありそうな、某マリオのパックンフラワーを巨大化させた本体に、またその葉っぱは大きな羽を広げたような、巨大なオジギソウのようでもあった。なお、某ハンターハンターで有名な漫画家の作品にも出てくる妖狐が、魔界のオジギソウを使っていたりもするが……
「う、うぉぉぉっ!?」
「な、何だコイツは!? この化け物は!?」
案の定、男たちは驚愕し、恐怖しながら後ずさるも、魔界植物は逃すことなく、その葉っぱが彼らに襲い掛かる。
「ぐっ!? ぐわぁあああ!!!」
「ひっ!? た、助けてくれぇ!!!」
殺される恐怖に叫びながら、魔界植物に捕まった男二人が叫ぶ。まあ、殺すことはなく、捕縛して無力化しているだけであるが。
そのいっぽう、
「くっ、くそぉっ!! このオヤジがっ!? 脳天ブチ割ったろかぁ!!!」
残った男の一人が鉄棒を手に、定祐に向かって振り下ろす。
「――!」
定祐は一撃をかわし、そのまま流れるようにして男に背負い投げを見舞う。
「ふんぬっ!!」
「ぐっ!? ぐわぁーっ!!!」
地に伏せられた男から叫び声が上がり、同時に素早く後ろ手を拘束して反撃能力を奪った。
「た、ったく! 誰がオヤジじゃい!」
定祐が言った。
ビビりではあるものの、仕事上、妖狐の妖具を用いてではあるが対魔、対怪人戦闘も経験しており、戦闘能力はそこまで低くはない。
また続いて、今度は最後に残った一人がナイフを持って上市に襲いかかる。
「ちょっ!? ちょっち!? ちょっち!?」
テンパりながら後ずさる上市。
「おらぁ!」
男はこのまま、上市を人質にしてやろうと掴みかかろうとするも、
「ちょっ!? ま、待って!! 待って!!」
「おら、大人しくしろや! こむすっ――!? ふごっ!!」
と、酔拳のごとくか、ビビりながら後ずさってもがく上市の足払いが上手いこと決まり、男は前に転倒する形で倒れた。
「せ、先生! は、はやっ、早く!!」
「わ、分かたって……!」
定祐は即座に、先の男と同様、この男の後ろ手を拘束して無力化する。
「ちょっ、大人しくしてくれて」
「くっ、くそがっ!! こんなヘンテコなヤツらに!!」
拘束され、男は屈辱に叫んだ。
続けて、奥の方からドカドカと足音が重なって来たかと思うと、
「警察だ!!」
「――うむ!? こ、これは?」
と、警察たち、捜査員たちがなだれ込んできた。
「おーい! とりあえず、何とか捕縛してある。早く、あとは頼むっちゃ!」
「こ、棍棒も確保してます!」
「あ、ああ!」
定祐たちに現場陣頭指揮の男が頷いた。
そのまま、半グレの男たちは逮捕され、無事に棍棒も警察によって確保された。
「――やれやれ、チカれたわい。もっと早く来てくれんかね……」
定祐は草臥れながら言った。
「ああ、すまなかったな」
刑事は詫びた。
また、別の若手の刑事が言った。
「――まあしかし、この連中が棍棒を奪ったおかげか、被害者の青年が投げ手にならずに済んだのは、思わぬ不幸中の幸いでしたね」
「ああ。月に棍棒を投げて賞金とか、バカげたことを考えるもんじゃないさ……」
そうして話す刑事たち。
まったくの余談だが、被害者の青年は妻子の元に戻り、再びまっとうに働くことにしたとのことである。
──続く




