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18

   ■■ 18 ■■ 



 翌日、ハロウィンまで残すところ、あと一日。

    

 東京は神楽坂怪奇調査コンサルタント事務所の書斎兼事務室の洋間にて、怪調の松本清水子も合わせた四人で話をしていた。


「――さて、推察したとおりの棍棒だったな。これで、今回のが若干クソヤバ案件なのが確定したわけだ」


 今回は割烹着でも着物でもなく、白い療養着に身を包んだ妖狐・神楽坂文がそう話を切り出した。


 なお、その妖狐の顔の目元には大きなヒビが走っており、わざとらしく療養着を着ているわけでなく、本当に妖力の消耗が大きいのだということが見てとれる。


「ちっ、何だよ、若干のクソヤバ案件て」


 松本は若干イラっとしながらも、「――まあ、とは言え、お前のデータのおかげで怪調の決断が早くなり、調査・捜査は進んでいるからな。今のところ、棍棒の投げ手が数人捕まったらしいし」と、いちおうは妖狐に感謝をした。


 また松本は続けて、


「ただ、残りの投げ手がどうなのか? 魔人がいる可能性もそうだけど、やっかいなのが、はぁ……、碇賀のヤツがいることだわ」


 と、失踪したエージェントの碇賀元がまさかの棍棒の投げ手になっていたことに、勘弁してくれよと肩を落とした。


 忍びの末裔にして、腐っても怪奇調査機関エージェント、……いや、むしろ、やる気や適当な性格はともかく、この碇賀元はかなり実力のあるエージェントであった。


 例えば10人以上の特殊部隊や、並みのエージェント数人を以ってしても敵わないほどであり、室長の松本清水子にも引けをとらない能力を持っていた。


「しかし、動機は分からんな。あの碇賀は、どうして棍棒の投げ手などやってるのかね? そんなことをしなければならない理由など、ないだろうに」


「……」


 しっくりこないように定祐が言うのを、隣の上市は無言で噤(つぐ)んでいた。


 まあ、動機を知ったところで何か調査に変わるところがあるかというとそうでないが、ある意味、最も知りたいところである。恐らく、下世話な好奇心というものも交じりながらであろうが。


「……さあね。それが分かったら苦労ないわよ。もしかすると、アイツのことだから、『あ、やってみますわ』程度でやってんじゃないのか?」


「おいおい、軽すぎんかい? そりゃ」 


「そ、そんな理由で……!」


 定祐、上市がガクッとなってつっこみたくなるも、


「……まあ、でも、そんなニュアンスのこと言ってたしな」


「確かに、そっすよね……」


 と、先日の碇賀と対峙した時のことを思い出し、いちおう納得いった。


 まさに、“特に理由がない”、――“何となく”というヤツである。




「――とりま、動機は分かんないけど、調査は進めるしかないわ。投げる会がどうやって投げ手を選出しているか知らんけどさ……」


「しかし、更年期、今まで怪調の人間が今回のように敵方につくことはあったのか?」


 ここで、妖狐も松本に聞いた。


「まあなぁ……、寝返りやスパイがいたこともあるにはあるけど、……初めてのパターンかもね」


「ふむ。碇賀元だけに、初めてってやつか」


「「「ごめん。全然面白くない」」」


 オヤジ並みのギャグを滑らす妖狐に、定祐、松本、上市の三人は冷静かつドライにつっこんだ。


 気を取り直し、


「――まあ、とりま、少しピッチを上げて調査を進めるか。ガーのヤツの追跡もそうだけど、他の投げ手たちも捕まえないといけないし」


「ああ。清水子、アンタんとこも、頼むわ」


「うい」


 松本は定祐とそのように交わして、事務所を出て行った。




──続く

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