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   ■■ 11 ■■ 



 同じころ、怪調こと怪奇調査機関ではひと騒動が起きていた。


「――は? ガーのヤツと連絡が取れないって?」


 思わず声を荒げそうになったのは、室長の松本清水子だった。


 何が起きたのか簡単にいうと、機関のエージェントが失踪したのである。


 そのエージェントというのは横溝調査室に所属する碇賀元という男であり、休暇をとって地元に数日帰省していたのであるが、今回の棍棒を投げる会の件で急遽招集をかけたところ、連絡がとれなくなっていた、すなわち失踪した可能性があるのである。


「まった、何でこんな時に……」


 バックレたのか? いや、ブラック企業じゃあるまいに。そもそも、ガーのヤツもダレたテンションで仕事をしているヤツとはいえ、そんな人間ではない。今までもそのようなこともなかったし……


 松本は苛立ちながらも考えた。調査室こそ違えど長く面識のあるエージェントであり、その実力や実績、それから人格も知っているには知っている。


「本当に、碇賀さんどうしたんですかね?」


 黒桐廉太郎も碇賀のことを心配していた。


「ガーさん、あのローテーション具合と適当さと、あと、ヘビースモーカーに定評があったのに……」


「知らん、そんな定評」


 零泉が思い出して身を案じるのを松本はバッサリ切り捨てつつ、「ともかく、どうしてこのタイミングで……」と頭を抱えた。


「まさか、何か事件に巻き込まれたとかですか……」


「まあ、ウチら――“怪調の人間だからこそ”の、その可能性は無きにしもあらずだけどな。ただ、アイツもそれなりに実力のあるエージェントなのは間違いないわけで、その可能性は低いと思うけど……」


 黒桐と松本は、できたら口にしたくない懸念をしながら少し気が重くなる。


「うーん……」


 松本は無言になる。


 若干の、嫌な予感……


 そうして、気がつくと松本は綾羅木定祐に電話していた。


 数コール待つと、定祐は電話に出た。


「ねえ定祐、――」 


『何かね? 今こっちも電話しようと思ってたとこだ。ダメだった、というよりも棍棒を何者かが入れ替えた形跡があってな――、とりあえず、今あの化け狐がルーマニアに行っている』


「それは分かった。それより、アンタたち今どこにいるの? もう戻ろうとしてる?」


 定祐の話はあまり聞かずに、松本は急かすように尋ねる。


『ん? ああ、もうちょいで駅だ。レンタカー返して、そっから名古屋まで出ようと思ってな』


「そしたらさ、そのままそっちにいてよ。レンタカーは借りたままで」


『うむ? ……どうしてかね?』


 定祐が一瞬間を置いて聞き返した。電話越しでも、怪訝な顔をしているのが分かるように。


「ウチのエージェントに、碇賀っていたじゃん?」

 

『ん? ああ、まあ、確かにいたような。それがどうしたんかね?』


「その碇賀のヤツがさ、失踪したのよ」


『はぃぃ? 何だって――?』


 定祐の声は、電話越しからでも顔をしかめているのが分かる声であった。




──続く

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