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コンロボと黄金の朝  作者: 佐々木勇二


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3/26

第三話 翌朝の足取りは、だいたい怪しい

昨日よりも少しだけ、学校へ行く足取りが妙だった。

 理由は自分でもわかっていた。

 副部長と帰ったからだ。

 しかも最後に、

「これ、好き」

 と言われた。

 写真の話だとわかっていても、頭のどこかで変に反芻してしまう。

 そういう自分が少し面倒くさい。

 そして、そういう時に限って、例のロボがいる。

「おはようございます。竹内様」

「……おはよう」

「本日は表情筋活動量が通常比一・四倍です」

「朝からやめろ」

「昨日の帰路において良質な社会的交流があったと推定します」

「お前、どこまでログ取ってるんだよ」

「倫理規定により最低限です」

「最低限でそれなら十分怖いんだよ」

 コンロボ型は胸ランプを一度明滅させた。

「副部長様との距離は昨日より――」

「ストップ!」

「承知しました」

 承知してない顔だった。

 教室に入る。

 いつものざわめき。

 いつもの朝。

 ……のはずだった。

 僕が席についた瞬間、妙な視線を感じた。

 横。

 窓際。

 今村さん。

 見ている。

 いや、気のせいか。

 でもまた目が合った。

 今村さんはすっと視線を外し、窓の外へ向き直る。

 僕は絵島の方へ身を寄せた。

「……見られてる気がする」

 絵島は露骨にため息をついた。

「またその話か」

「いや、だって」

「お前、何かしたのか」

「してない」

「じゃあ気にするな」

「それができたら苦労してない」

 そこへ、ナールが静かに教室へ入ってきた。

「おはようございます」

 いつもの完璧に整った制服。

 いつも通り完璧な眼鏡位置。

 無駄に落ち着いた声。

 こいつを見ると、逆に自分の落ち着きのなさが目立つ。

 ホームルーム前。

 僕はついに副部長へ相談しに行った。

 写真部の部室。

 朝練前。

 先輩は机にアルバムを広げていた。

「……それで」

 副部長が言う。

「今村さんが見てる、と」

「はい」

「怒ってる感じ?」

「……わかんないです」

「見られてる時、お前何してるの」

「え」

「何してるのって聞いてるの」

「……外、見てること多いです」

 副部長はぴたりと手を止めた。

 眼鏡の奥の目が、じっとこちらを見る。

「……それよ」

「え?」

「それ」

「何がです?」

「あんたが外の景色見てるの、邪魔してるからよ」

「そうなの!?」

 思わず声が裏返った。

 副部長は呆れたように息を吐いた。

「窓際の席って、景色見る人には結構大事なのよ」

「いやでも」

「でも?」

「見てる感じが、なんかこう……」

「人を見る感じ?」

「……はい」

 副部長は口元を緩めた。

「それ、半分は当たってるかもね」

「え?」

「景色の向こうにあんたがいるんでしょ」

「……」

 僕は数秒、言葉を失った。

「何ですかその言い方」

「冗談」

 でも冗談に聞こえない。

 そこへ、後ろからナールの声。

「竹内さんは鈍いですから」

「うわ、いたのか」

「いました」

 ナールは窓際の椅子に腰かけるように立ち、夕方みたいな顔で外を見た。

 朝なのに。

「視線解析上、今村さんの注視割合は窓外四、竹内さん六です」

「またそれ!」

「統計的事実です」

「いやそれ朝から心臓に悪いんだよ」

 副部長がにやっとした。

「へえ」

「いやその“へえ”やめてください」

「何よ」

「何か企んでる顔です」

「失礼ね」

 失礼ではないと思う。

 その日の三時間目。


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