第二十三話 黄金の鳩は、たいてい人類より冷静
翌日の昼休み。
写真部の部室に、珍しく全員が揃っていた。
副部長。
今村さん。
七瀬。
ナール。
コンロボ型はなぜか窓際のコンセント付近で充電している。
胸ランプがまだ少し弱い。
そして。
机の上には、写真が並んでいた。
黄金の鳩。
銀色の小型UFO。
駅前。
公園。
校庭。
川沿い。
撮影した場所も日時も違う。
でも。
「……同じ」
今村さんが小さく言った。
「何が」
僕が覗き込む。
副部長が写真を指さした。
「見て」
黄金の鳩が写っている写真。
その背景。
必ずどこかにある。
雑草。
放置された花壇脇。
排水溝の詰まり。
街路樹の根元のゴミ。
そして。
銀色の小型UFOが写る写真。
その後の同じ場所。
全部、綺麗になっている。
「……あ」
ナールが静かに言う。
「都市環境維持行動」
「やっぱりそうなのか」
七瀬が腕を組む。
「観測対象は人間ではない」
「……え?」
僕が顔を上げる。
「街」
「街そのもの」
部室が少し静かになる。
副部長が写真を並べ替える。
「鳩は先行観測」
「UFOが実作業」
「……それ」
僕は少し考える。
「宇宙人っていうより」
一拍。
「清掃業者?」
沈黙。
副部長が吹き出した。
「ロマンがない」
「でも合ってる気がします」
ナールが淡々と言う。
「かなり」
コンロボ型が充電ケーブルをつけたまま胸ランプを光らせる。
「親和性を確認しました!」
「何との」
「都市維持ネットワーク!」
「……お前、知ってたのか?」
コンロボ型が少し止まる。
「……部分的に」
七瀬がすぐに反応する。
「説明」
コンロボ型は珍しく、少しだけ声のトーンを落とした。
「私のインフラ管理プロトコルの一部に」
一拍。
「外部支援システムとの同期項目があります」
僕は思わず言った。
「……それ、宇宙人?」
「不明です!」
「何だよそれ」
妙に筋は通っていた。
街で起きる異常。
黄金の鳩。
小型UFO。
全部が、壊れた場所や汚れた場所に集中している。
副部長がふと窓の外を見る。
「……学校」
「え?」
「昨日の校庭」
「……あ」
確かに。
あの七機は、花壇を避けて雑草だけを除去していた。
精度が高すぎる。
今村さんが静かに言う。
「……見られてる」
その言葉に、空気が少し変わる。
僕は思わず聞いた。
「誰に」
今村さんは窓の外の金色の鳩を見る。
「……街が」
ナールが補足する。
「人類ではなく都市環境の観測」
副部長が小さく笑う。
「じゃあ、私たちは背景ね」
「いや」
僕は写真を見る。
コンロボ型。
校庭。
排水ライン。
雨の日。
昨日の写真。
そのどれにも。
僕たちが写っている。
「……たぶん」
一拍。
「背景じゃない」
全員がこちらを見る。
「街を見てる僕たちも、見られてる」
部室が静かになる。
ナールが珍しく少しだけ間を置いて言った。
「鋭いですね」
「……珍しく褒めたな」
「事実です」
その時。
窓の外に影。
一羽。
黄金の鳩が、部室の窓枠に降りた。
全員がそちらを見る。
鳩は、こちらを見ていた。
いや。
僕を見ていた。
首を小さくかしげる。
それから。
窓の外へ飛び立った。
その先。
旧校舎裏の方へ向かう。
「……ついて来いってことか?」
副部長が笑う。
「いかにもそれっぽいわね」
七瀬はもう立ち上がっている。
「行く」
今村さんも静かに立つ。
ナールは当然のようについてくる。
コンロボ型はケーブルを自分で外した。
「機能向上の機会です!」
「お前は少し休め」
でも。
たぶん、ここから何かが少しだけ見える。
そんな気がした。




