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コンロボと黄金の朝  作者: 佐々木勇二


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第二十話 学校に七つ降りる日

月曜日の朝。

 校門をくぐった瞬間、空気が違った。

 ざわつき。

 いつもより多い教師。

 スマホを見上げる生徒たち。

 校庭の上空を指さす声。

「……また?」

 僕も思わず空を見る。

 銀色の点。

 一つ、二つ――

 七つ。

 いや。

 今日はもっと低い。

 明らかに学校の上空だ。

「うわ……」

 校舎の窓からも、何人も顔を出している。

 金色の鳩まで、校門の桜に五羽止まっていた。

 さすがに今日は、ちょっと異常だ。

 そこへ、横から声。

「竹内様!」

「うわっ」

 コンロボ型。

 朝からいる。

 しかも今日は、なぜか胸ランプが黄色で高速点滅している。

「警戒レベル上昇です!」

「お前が一番うるさいよ」

「学校施設安全支援に移行します!」

「インフラの仕事してる時だけちょっと頼もしいな」

 その時。

 銀色の点が一機、校庭へゆっくり降りてきた。

 全校生徒がざわつく。

「宇宙人だ」

「ついに来た」

「終わった」

 僕の後ろから、いつもの冷静な声。

「終わっていません」

 ナールだった。

 今日も眼鏡の角度が完璧すぎる。

「ナール」

「はい」

「今日ばっかりは俺もちょっと怖い」

「大丈夫です」

「何で言い切れるんだよ」

「雑草除去ルートです」

「……もうそこまで読めるのか」

 教室へ入る。

 窓際の今村さんが、今日は本当に空を見ていた。

 副部長もすでに来ている。

 珍しく、朝から部室じゃなく教室にいる。

 七瀬も、すでに立っていた。

 完全に警戒モード。

 そして。

 チャイムが鳴る直前。

 空の銀色の点が、一斉に動いた。

 七機同時に。

 校庭へ降下。

 教室が騒然となる。

 先生の声もかき消える。

「全員、席に――」

 言い終わる前に。

 窓の外で、何かが始まった。

 銀色の小型機たちが、校庭の隅へ整列する。

 全員が見ている。

 息をのむ。

 その瞬間。

 七機が一斉に地面へ向き直った。

「……来る」

 誰かが言った。

 でも次の瞬間。

 ぶわっと、土が舞う。

「……え?」

 校庭の端の雑草エリアを、一斉に除去し始めた。

 しかも。

 ものすごく綺麗に。

 一直線。

 花壇は避ける。

 通路も避ける。

 完璧な精度。

 教室が一瞬静まり返って。

 それから。

 誰かが吹き出した。

「……またそれかよ」

 僕も思わず笑ってしまった。

 副部長が小さく息を吐く。

「この町、ほんと何なの」

 今村さんが、窓の外を見ながら小さく言う。

「……ちゃんとしてる」

 ナールが即答する。

「合理的です」

 でも。

 異常はそれだけじゃなかった。

 次の瞬間。

 校舎裏の方から、どん、と大きな音。

「……え?」

 今度は本当に空気が変わった。

 七瀬が即座に立ち上がる。

「行く」

 副部長も立つ。

「竹内」

「はい」

「来て」

「え、何で僕」

「部長でしょ」

 それはそうだ。

 でも写真部だぞ。

 何で現場に向かう流れなんだ。

 校舎裏。

 そこには。

 コンロボ型がひっくり返っていた。

「……お前かよ!」

 一気に緊張が抜けた。宇宙人でも設備事故でもなく、結局こいつだった。

 しかも隣には、散乱した排水管パーツ。

「インフラ調査中に段差誤認識!」

「また壊したのか!」

「一部破損です!」

「お前がだよ!」

 副部長が吹き出した。

 七瀬は無表情のまま、壊れた配管を見る。

「……これはまずい」

 その声だけ、少し低い。

「何が」

「今日、午後から雨」

 僕は空を見る。

 確かに曇っている。

「排水経路が死ぬ」

 ナールが静かに言う。

「校舎一階、浸水リスク上昇」

「いや、ちょっと待て」

 ここで初めて、本当に事件っぽくなってきた。

 その中心にいるのがコンロボ型という時点で、緊張感が微妙に保てない。

「……すみません」

 コンロボ型が珍しくしょんぼりしている。

 胸ランプも弱い。

 僕は思わず言った。

「……まあ、直せばいいだろ」

 七瀬がこちらを見る。

 副部長も。

 今村さんも。

 ナールだけが小さく言った。

「竹内さんらしいですね」

 別に大したことを言ったつもりはなかった。でもなぜか、四人が同時にこちらを見た。その視線の重みが、少しだけ残った。

 たぶん。

 ここから、本当に少しだけ大きな話になる。

 そんな気がした。


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