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守る義務、壊す責任  作者: アル治


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3/5

第3話  歪みこ理由

いつも読んでいただきありがとうございます。

夜が、街の上に静かに落ちていた。

昼と変わらない灯り。

変わらない人の流れ。

だが、その下にあるものだけが少しずつ歪んでいる。

アオイは、街の外れにいた。

戦いの後でもない。

呼ばれたわけでもない。

ただ、ここに来なければいけない気がした。

「ここは、立ち入り区域外です」

背後から声。

振り返ると、管理者の男が立っていた。

「知っています」

アオイは短く答える。

男はため息をつくように言った。

「最近、外敵の活動が増えています。無断行動は危険です」

外敵。

その単語に、アオイの視線がわずかに動く。

「……あれは、何なんですか」

男は一瞬だけ黙った。

そして、静かに言う。

「“失敗した存在”です」

失敗。

アオイは、その言葉を反芻する。

「ヴァンパイアの、ですか」

男は頷かない。

代わりに、少しだけ視線を逸らした。

「正確には、“人間としての形を保てなくなったもの”です」

風が通り過ぎる。

「彼らは、かつてこちら側でした」

アオイの呼吸が、ほんの少しだけ乱れる。

「……戻れないんですか」

答えはすぐには返ってこなかった。

「戻る必要はありません」

その一言は、冷たかった。

「彼らは役目を終えた存在です。

今はただ、外に残っているだけです」

役目。

アオイは拳を握る。

「じゃあ、あれは何のために“来ている”んですか」

男は少しだけ目を細めた。

「本能です」

短い言葉。

「記憶も理性も壊れた結果、ただ“進む”ことだけが残った」

アオイの脳裏に、あの戦闘がよぎる。

止まらない動き。

壊れても進む体。

「……それでも、止めるんですよね」

男は少しだけ間を置いて答えた。

「止めます。

それが、ヴァンパイアの役目ですから」

役目。

その言葉が、やけに重く響いた。

アオイはふと、街の中心の方を見る。

そこには“装置”がある。

「……あれも、役目ですか」

男は答えなかった。

代わりに、別の言葉を置いた。

「あなた方は、守るために作られました」

守るために。

「この街を。人間を。そして――外側から来るものを」

アオイはゆっくりと視線を戻す。

「それなのに、なぜ削られているんですか」

沈黙。

男の表情が、ほんのわずかに揺れた。

「……維持のためです」

その一言が、全てだった。

風が強くなる。

アオイの中で、何かがひとつずつ繋がっていく。

戦場。

止まらない敵。

削られる記憶。

そして――

「……守ってるんじゃない」

小さく、呟く。

男は何も言わない。

アオイは一歩後ろへ下がる。

「……守られてる側が、守ってる側を削ってる」

その言葉に、誰も返事はしなかった。

夜の風だけが、街の境界を撫でていく。

そしてその外では、また何かがゆっくりと動き始めていた。

今後もよろしくお願い致します。

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