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光る石像がいなくなって、フレイヴはあごに手を当てて考えていた。あれの言っていたこと――。
【名なしはすべて教えなくとも、魔王ならば教えてくれるはずですよ】
そこは逆ではないのか。自分にとっての最大の敵だからこそ、自身がクラッシャーであるからこそ教える気なんてあるはずないのに。もしも、魔王と同じ立場であるならば、絶対に教えないのに。石像は何を知っているというのだろうか。そもそも、だ。あれは他にも言っていた。石像の本音として、フレイヴが魔王を慰めろと言うのだ。何の冗談だろうか。ジョークにしては笑えない。敵同士だというのにキツイ話だ。なんて考え事をしていると、オルチェが「どうするんだ?」と訊ねてきた。
「真実を教えるとか言っておきながら、魔王を慰めろだなんて。そんなこと……つーか、する?」
「わからないです。もしも、魔王がぼくの知りたいことを教えてくれるならって考えましたけど、嘘をつくのは嫌ですね。会ったところで、慰めるだなんて。逆にカムラを返せって言いますよ」
もっともな話だな、とオルチェは思ったところで――いや、ちょっと待てよ。光る石像の言い分だと、名なし――すなわちカムラはこの世の真実を知っていると言っているようだった。だが、もう一度待って欲しい。彼女は何も知らないのだ。この時代の状況を。彼女は過去から来たのだ。クラッシャーに殺されて。
――あいつは知っていた? だとするなら「知らない」とかありえないだろ。
どうもこの手の話だと矛盾が出てしまう。どちらが? 誰が正しいことを言っているのだろうか。
――俺にとって知らなかったことを向こうは知っていた? 俺、囮役なのに知らないことはないはずだってのに? つーか、あれは全部教えたって? 俺が理解しきれてねぇのか? ええぃ、考えるのは面倒だ。あーあ、こういうとき、おじさんがいてくれたらな。何かしらのヒントまで辿りつけただろうに。
「オルチェさん」
オルチェも考え事をしていると、不意にフレイヴに呼びかけられた。思わずちょっとだけ変な声を出してしまったのはここだけの話。
「なんだ」
「魔王は国境の狭間のどこにいるんですか?」
「ああ、それは――」
これは覚えている。昔、石像に会ったときにヒントをもらっていたのだから。今の魔王は「光から遠ざかって、闇の心を抱えています」だなんて当時は訳のわからないことを言われたが――。
光る石像が言いたいのは、魔王は光を避けているということだ。光が入らない場所――国境沿いにある忘れられた森であることは間違いない。それに、光――日の光がもっとも入らない場所と言えば北側。ということは、忘れられた森の北側に魔王はいるということだ。
薄暗い森、そこを北の方角に向かって突き進んでいくと――二人の目の前に巨大な樹木が佇んでいた。大きいよりも、もっと大きい。以前に通りすがりの町で遭遇したナズーよりも大きいだろう。上を見上げるのがつらいほど。遠くから見たら、見えるだろうが――なんせ、ここは緑だらけ。そこまでにおいて、この森は鬱蒼としている証拠にもなる。
「おそらくだが、ここに魔王がいるのは間違いないと思う」
「行きましょう」
だとしても臆するな。これもカムラを助けるためなのだから。魔王がいない世界を望むためなのだから。




