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知れば知るほど疑問は増えていく。時たま、訳がわからなくなる。フレイヴは光る石像の話を聞いて困惑していた。先ほどまでオルチェに対して嫌悪感があったというのに、こちらの方に意識が大きく傾いているではないか。
「あいつと魔王は別人だって? じゃあ、魔王って……?」
「なぜ、彼らが同等の存在であるのか。彼らには共通点があります。それは、二人がこの世に存在し始めたのは過去の時代からです」
「過去の時代?」
「私は過去の時代で彼らを見て、対話をしました。そして、魔王には忠告をしましたが……結果として、このような世界になってしまったんです」
それはすなわち、この光る石像はこういう風にしてナズーがいない世界にするために、魔王を止めようとしたのだが――結果として止められなかった、ということだろうか。そんな憶測が思い浮かぶフレイヴは「止めきれなかったんですか?」と怪訝そうに訊ねた。
「魔王に忠告したって……あなたはこんな未来になると知っていたから、魔王に教えたんですよね? 未来を」
「ええ、そうです」
それなのに、魔王はこんな世界を望んだ。おかしな話ではないか。段々怒りを露わにするフレイヴにオルチェが「今更怒ってもしょうがないぜ」と溜め息をつくばかり。
「こいつ、俺にすべて話したって理解しがたい、わかりにくい言葉で伝えているもんだからよ」
後ろ頭を掻くと、石像に「これだけは絶対にわかるようにして答えろ」と言った。
「話を聞くからに、あんたは未来が見えているってか?」
「この時代において、未来が視えるという人間はもう存在しません。それは魔王が大幅に世界を変えてしまったから。大規模に世界を変えようとすると、これまで視えていた内容すらも変わってしまうでしょう。だからこそ、未来透視者は存在しなくなります。いえ、人間は始めから未来を視る、ということはできませんよね。できるとするならば、誰かが望んでその誰かの存在を創り上げるくらいでしょうか」
光る石像はそう言うのだった。結局、遠回し的なことしか言わない。そうだとしても、この言葉の中にはヒントがあった。明らかに自分は未来が視えていますと、言わんばかりである。これで確信が持てた。この光る石像は過去、現在、未来が視えている人間ではない何かであることだ。気になるから訊いた。フレイヴが。あなたは何者なんですか、と。その質問にそれは優しい口調で答えてくれた。
「あなたが思う存在であると思ってください」
「プトレア教のジンガシャマロっていう神様ですか?」
「あなたがそう思うのであれば、そうなんでしょう」
非常に曖昧な答え。石像はそういう答えしか言ってくれなかった。そんなことに少しばかり途方に暮れていると、それはフレイヴの心を読み取ったのだろうか。「詳しくは」と口を開いてくる。
「詳しいことを知りたいならば、話は名なしと魔王がよく知っているはずですよ。この世界の仕組み、世界改変した理由。彼らに訊いてみるといいでしょう」
「魔王やあの女が話してくれるとでも?」
オルチェは絶対にありえない、と心の底から思っているらしい。だが、石像は「ええ」と肯定する。
「名なしはすべて教えなくとも、魔王ならば教えてくれるはずですよ。なぜって、魔王は嘘つきで、優しくて、素直じゃなくて、人を殺せそうにない存在なのだから。だからこそ、あなたみたな嘘つきじゃなくて、優しくなくて、素直で、人を殺せる存在にすべてを打ち明けてくれるはずです」
石像はフレイヴを見た。
「いいですか、私は魔王に人の想いの裏返しはゼロであり、何もかもなくなると言いました。私の言葉の真意を知ったとき、彼はすべてに気付けずに……遅かったんです」
「そうならないように、ぼくは気をつけろってことですか?」
「建前は。本意としては、あなたが魔王の慰めになってくれたならば……」
光る石像はそれだけ言うと、地中へと帰ってしまった。その場にはしん、とした静けさだけが残るだけである。その言葉の意味。明らかに魔王は――。




