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国の国境に存在する森――忘れられた森。そこには光る石像がいる。それは口が利けるらしい。フレイヴとオルチェの眼前にはまさしくその石像が突然現れて、悠然といた。
「ぼくたちとお話がしたいって。知りたいことを教えてくれたりは……?」
「ええ、もちろんですとも。魔王があなたをクラッシャーとして指名したとならば、なおさらです。あなたはこの世の真実を知るべき存在なのですから」
どうやら光る石像はフレイヴが知りたいことを教えてくれるらしい。それならば、聞かずして先にカムラを助けに行くなんてできるはずがない。彼女を助けるも重要であるが、魔王が生み出したナズーがいない世界――すなわち、この世に魔王が存在しない世界を創るためにも、訊くべきことがあるだろう。
「それじゃあ、魔王って何者なのか教えて欲しいんです。前はクラッシャーを倒した英雄なんですよね? なぜ、こうした世界にしたのでしょうか?」
「もしかして、彼の言行を許せないと?」
それは当たり前だ。こんな世界だからこそ、自分はこうしてろくでもない人生を歩んでいるようなものなのだから。だから許せるはずもないし、寛容する気もない。ただ、魔王がしたことを恨むだけ。憎むだけ。大切な人を奪った最低野郎に同情の余地なし。
「もちろんです。ぼくは魔王のせいでつらい思いをしているんだから」
「それは彼も同様である、と私が言えば、あなたは考え直しますか?」
石像の言葉にフレイヴは小さな反応を見せた。代わりにオルチェが「どういう意味だ?」と片眉を上げる。
「そっちの言う意味として、あんたは魔王の味方だってのか?」
どう考えても、この石像の発言は魔王を擁護しているようだった。これは、魔王はフレイヴと同じくしてつらい思いをしているというのか。それだからこそ、本来の世界を書き変えて、このような世界へとしてしまったというのか。だとするならば、フレイヴはとばっちり。もっと最悪ではないか。
オルチェの設問に光る石像は「いいえ」と否定した。これに二人は疑心が増えていく。
「魔王はフレイヴと同じ状況なんだって言いたいんだろ? 魔王のしていることを許せって言いたいんだろ? だったら、否定するのはおかしな話じゃねぇか」
そもそも、囮役はすべてを知らなければならないって言ったのはそっちだぞ、と口を尖らせる。こうして話していても、オルチェにとっても知らないことがあるようだ。この石像が話したとされることはすべてではなかったというのか。文句を言う彼に対して、石像は「私は嘘を言っていません」と言う。
「あなたには、クラッシャーの囮役にはこの世のすべてを話したつもりです。それだから、こうしてこの時代におけるクラッシャーをここへ連れてきたのでしょう? クラッシャーに私の言葉を話したのでしょう? クラッシャーと魔王を会わせるつもりでいたのでしょう?」
「俺が狙っているのは魔王と名なしが同時にくたばる瞬間よ」
「オルチェさん……」
「あんたは言っていたよな? 俺の存在意義はクラッシャーがいて、初めて成立するって。俺の敵は名なしだと」
「ええ、言いました」
「もちろん、魔王は名なしと同等の存在だとも言った」
光る石像は当然だ、と大きく頷く。それに伴い、オルチェは「それじゃあ」とそれをじっと見た。
「あのカムラ……名なしこそが魔王だよな?」
――同等の存在ならば、の話でな。
石像の返答を待つオルチェ。傍らで話を聞いているだけのフレイヴは彼の心内を聞いて、あまりいい顔をしていなかった。なぜって、カムラが死ぬことを望んでいるような発言だから。自分は彼女が死んで欲しくないと思っている。友達を失いたくない、そんな気持ちがあるのだから。オルチェに何か言おうとしたとき、そんな彼に光る石像が中に割って入ってくるのだった。
「確かに名なしと魔王は同等の存在です」
何度も何度も聞いた事実。それに付け加えるようにして「が」と言葉を続けた。
「それらは同等であるだけであって、同じ『名なし』として存在しているわけではありません」
「はあ?」
「名なしと魔王は別人であると言えば理解していただけますか?」
石像は淡々と事実を告げるだけである。




