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魔王は国境の狭間にいる、とは聞いた。だが、実際にはどこにいるのかはわからなかった。それだからこそ、唯一見た場所である忘れられた森へと赴いてみなければならなかった。オルチェ自身は魔王に会ったことがない。だが、あの森にいた光る石像ならば二人とも会ったことがあるし、なんならば、魔王とも知り合いの様子で対話をしていたようにも見えていた。
光る石像は魔王を知っている。それにすがるようにして、フレイヴとオルチェは忘れられた森へとやって来た。
「オルチェさんは、あの光っている石の人とお話をしたことがあるんでしたっけ?」
「ああ、そうだよ。そこで俺はクラッシャーの囮役だということを知ったんだ」
「その人はそれ以外に何を言っていましたか?」
フレイヴがそう訊ねると、オルチェはしばし考えた後――「なかった」と答えた。何もないとなると、他にも情報が欲しいところ。彼は知らないのだ。それを責めたてることはない、と考えていたフレイヴは先を行こうとするのだが、オルチェが「でもよ」と話を続けた。
「あの石は、知っている割にはいかにも自分は何も関わっていませんよって言いたげだった」
「そうですか? ぼく、その人に魔王から助けてもらったんですけれども」
その後の石像がどうなったかはわからない。魔王が世界を変えるとするならば、ああして余計なことを話す存在を消そうとするだろう。もしも、そうであるならば、貴重な情報提供者がいないとなる。これは単純に困る話だ。
「それって、助けてもらったからクラッシャーって言われたのか? それともクラッシャーって言われたから助けてもらったのか?」
「へっ? あっと、言われたから助けてもらったのかな?」
「……ちょっとおかしくないか? クラッシャーは世界にとって悪役であるはずだというのに、あいつに助けてもらうって」
「そうなんですか?」
魔王やあの石の像は何かを知っているはずとしか思えなかった。だが、その何かとなると、全く想像がつかない。それよりも、カムラはどうなのだろうか。彼女はどこまで知っているのか。疑問がオルチェの頭の中に埋まっていく中、考え事をしながら森の中を歩いていると――。
「私を呼びましたか?」
いつの間にか眼前には見覚えのある光った存在――光る石像がいた。その唐突止めてくれないかな。心臓に悪いから。
「び、びっくりした……」
「ちょうどよかったです。私もあなたたちとお話がしたかったので。気配を感知し、なおかつ私の話をしていただいてもらっていたので急いで駆けつけました」
それはちょっと怖い気がする。ただでさえ、不気味な存在だというのに。そう思っているオルチェは口にすることはなく、心の中でそう思うしかなかったのだった。




