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真っ黒な存在が唯一人間らしい左目でカムラを見ていた。ほぼ毎日と言っていいほどこちらを見に来る。その目が向けてくるのは全くわからない感情。怒っているのか、悲しんでいるのか、面白がっているのか――何もわからない。だから、訊く。
「そんなにあたしをじろじろ見てヒマなの?」
誰彼構わず挑発発言をするカムラ。魔王をばかにしたようではあるが、彼は「ヒマではない」と律儀に答えてくれた。
「やることすることで精いっぱいだ」
「じゃあ、そっちやればいいじゃん」
こっちなんか見に来なくても。第一、こちらが訊きたい質問に答えてくれないくせに。憶測では合っているだろう。実際に魔王はカムラと同じクラッシャーを倒す『名なし』なのかは不明。本人は肯定も否定もしなかったから、曖昧。光る石像も『名なし』はクラッシャーを倒した、とは言わなかった。
――ああ、じれったい。イライラする。
それだからこそ、カムラは若干苛立ち気味に「あのさぁ」と訊く。
「いい加減に教えてくれない? あたし、あんたが知っている記憶を持っていないの。知らないの。あのときの記憶以降は」
「全部を話さなかったお前に言われたくない」
――全部を話さなかった? 今、こうして色々と話しているでしょうが。というか、あたしが訊きたいのは今の世の中の真実! 魔王がヒマだとか忙しいだとか、心底どうでもいい。ていうか、聞いたところで同情する余地もなし。するだけ無駄だ。した自分がばかだった、って後悔するだけだから。
カムラが雰囲気だけで不満をぶつけていると、魔王は「嘘つきには教えたくない」と言い出した。
――はあ!? 何こいつ! 自分(?)なのにすげぇ腹立つ! 間に鉄格子がなければ、こいつを殴っていたところ! まあ、殴ったところであの黒い鎧が痛そうだからやりたくないけど! つーか、脱げ! 顔だけ脱げ! そしたら殴れるから脱げ!
カムラが歯噛みをしていると、魔王が「大体」と鼻でため息をついた。
「お前は俺よりも嘘つきだろ。多分、あのもう一人に何も教えていない」
「フレイヴのことだったら、教えてるし。あたしの使命もクラッシャーという存在も神様の日記も」
「この世の仕組み」
「それはあんたが一番詳しいでしょうに」
その言葉を聞いた魔王は視線を逸らすと、無言でこの場から立ち去ってしまった。結果的に考えると、それは肯定の意味で捉えてもいいのだろうか。いや、そういう意味で捉えても問題はないだろう。なぜって、この世の中を作ったのは魔王であることは間違いなのだから。カムラはこの世界を知っていたとしても、この世の中の仕組みを知っているわけではない。
「なんなの、あいつは……」




