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フレイヴとオルチェは逃げる場所がなかった。いや、行くべき場所はあるにしても、二人にとってカムラを取り戻しに行くのは危険と言うべきだった。ケレントの屋敷を奇襲した日以来、独立の国では完全な指名手配犯として追われていたからだ。元より二人は新王国出身。それを彼は知っている。だからなのだろう、現在の両国は戦争を始めようとしていた。もう協力という言葉を捨てて、互いを敵と見なすのだ。それはまるで相手国民がナズーであると非道宣言するかのように。
戦争の火種となるきっかけを作った犯人は逃走中。未だ見つからず。両国ともフレイヴたちを捕まえようとしているのである。独立の国は首都に奇襲を仕掛けたテロリストとして。新王国は処刑にするために捜索に乗り出していた。一刻も早く、二人を見つけて自分たちの国で裁いてやる。そんな雰囲気の中、彼らはというと――捨てられた都市、苦悩の都市へと逃げていた。
フレイヴは雨空を見上げていた。一応は全く使われていない建物の中に入って、窓越しに空を見ているのだ。そこから少し離れた場所にはオルチェがただ静かに動くときを待っている。
カムラを取り戻したい。その思いがあっても、魔王がいる国境の方へと行ったとしよう。今の両国は冷戦状態。下手に自分たちの動きが二つの国に知れ渡ってしまえば、必ず捕まえに来るだろう。そして、その自分たちの所有権について争いが起きるだろう。どう足掻いても、戦争は止められないところまで彼らは突いてしまったらしい。
「どうしたらいいんですかね」
フレイヴは何も二つの国が戦争を始めようとしていることに不安を感じているのではない。彼らが国境で向かい合って睨み合っていることが心配なのである。そうしているならば、カムラを助けに行きたくても捕まってしまう可能性があるから。彼は戦争というものに興味を持っていなかった。もちろん、そのことをオルチェは理解していた。どうすれば、という質問に「フレイヴ様のお好きなように」と従者らしい発言をする。
「新王国と独立の国の争いごとき、フレイヴ様の行く道に何の妨げもありません」
「オルチェさん、その言い方は……」
好きではないから止めてくれ、とフレイヴが言おうとしたが、遮られた。オルチェは立ち上がると「いいえ」そう首を横に振るのだが――。
「これはフレイヴ様が決める選択肢でございます。私のような下の者は決定権を持っておりません」
オルチェは一体どうしたというのだろうか。突然こんな風に話し出すなんて。そんな彼にどこか戸惑いながらも、フレイヴが片眉を上げていると、話を続けた。
「それに戦争に関しては、新王国は前々から考えていた、と私がお伝えするならば、話は変わってくると思いますよ」
「それって……」
――単刀直入に申し上げます。
「新王国はフレイヴ様の行動を利用して戦争をしようとしています」




