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もうためらいは一切ない。そう言うのはフレイヴであり、彼はたった今がしたウルバとケレントの孫に止めを刺した。
――ねえ、目の前で大切な人を殺された気持ちってどんな気持ち? ぼくは知っている。あの日の夜、父さんと母さんはナズーになってしまったから。わかるよね、この気持ち。だから、カムラを奪われたぼくの気持ちは痛すぎるほどわかるはず。
フレイヴはその場で茫然と膝を折っているケレントを見下した。
「答えてください」
――返答次第ではお前を殺す。
「カムラはどこにいますか」
「…………」
答える気はないようだ。オルチェがすっと射撃砲を向けた。異臭が辺り一帯を漂わせているから不愉快だとわかる。
「答えろ、バックヴォーン。お前は逃げられない」
最後の足掻きでもする気なのか。ケレントはすべてを覚ったようにしてその場に座り込んだ。そして、二人に対して「終わりだ」とため息をつく。
「私を殺せばどうなることやら」
「あなたが、ケレント・バックヴォーンが死んだ。そんな世の中になります」
「もっともなことを言うんだね。私が死ねばあんたらは生きにくい世の中になるだろうに」
すっとフレイヴはカムラの剣先を彼に向けると「それは残念です」と反応した。
「ぼくはナズーがいない世界にすることを目的としています。そうなるためにはどんな手を使ってでも、やり遂げますよ」
こちらを見てくる濃い青色の目。その意思はとても強いと見た。そんな固い意思を持ったフレイヴであるからこそ、ケレントは失笑をする。先ほどの言葉がおかしかったらしい。どこがおかしいとでも言うのだ。
「だったら、そうなるなら任せようかね。あの本女は神様の日記を持ったやつのところにいる。そこまで言えばわかるだろう」
「魔王のところ!?」
思わず動揺するフレイヴ。それを気にすることもなくケレントは彼の持っている剣の刃を握った。
「……どうせなら、私を殺した世の中にしてみないかね。ナズーのいない世界にしたいんだろう?」
ケレントの目的は魔王と同等だったということか。彼らが互いに利害一致していたせいでカムラは連れ去られてしまった。そう考えるだけでも無性に腹が立って仕方がないフレイヴは「言われなくてもっ」と自身が持つ刃を――。
これでケレントがいない世の中になった。実感は沸かないが、着実に世界は変わろうとしているのはわかる。平和な世界。誰もが安心して過ごせる世の中。ようやくと言っていいほど自分たちが望んだ世界へとなるだろう。フレイヴは血濡れたカムラの剣を真っ赤な空に掲げる。傍らでオルチェも空を見上げた。
「あとは国境の狭間に行くだけ」
オルチェがそう呟いたときだった。彼の直感が告げる。今すぐにこの屋敷の敷地内――一番街――入り組んだ都市から逃げるべきだ、と。直感がやって来た方向に足を進めた。ここは高台にある土地のようで、下の方からは独立の国の軍隊が押し寄せてきているではないか。理由は明確。ここは一番街。国の首都――しかも国の重鎮たちが住まう場所でもあり、どの街よりも重要なところだ。こんな道を埋め尽くすような大軍を寄こしてくるのは当然の結果か。きっと、フレイヴは捕まりたくないに違いない。いや、自分だって捕まりたくない。だからこそ、逃げなければ。
二人は身の安全を確保するために、この入り組んだ都市から逃げ出した。彼らが逃げ出す際、厄介なことに自分たちの顔を見られてしまっていたのだろうか。姿を見られた瞬間に「いたぞ」と増援が来てしまったのだ。いや、最初から知られていたのかもしれない。元よりフレイヴは島自治区での不法侵入者として知られているということもあるのだから。




